オッさんの謎 『裸一貫より成功せる成金の生立蒼竜窟主人 著 三盟舎 大正八(一九一九)年』で、明治時代に金を払わず商品を仕入れ、格安で売って富豪になったオッさんが紹介されている。ちょっと意味が分からないと思うので要約してみよう。 平岡浩太郎は国家主義団体の玄洋社を資金面で支え続けた男である。彼が若かりし頃「ひとつ海賊になったつもりで、第二のよき屋になり、玄洋社の活動を援助しよう」と決心したことがあるそうだ。その「よき屋」の創業者が野村久一郎である。平岡ほどの男が範としよういうのだから、その偉大さは言うまでもないことである。 関西の小間物王として名高い野村久一郎は三年で数十万を稼ぎ出した男であるが、かっては一人の若者に過ぎなかった。商売道具も天秤棒くらいのもので、毎日のように福岡市の仲間町で化粧品や小間物を売り歩いていた。そんな彼が二七歳の頃に人生観を大きく変える出来事があった。 いつものよ