糸井重里の名前をいつどのようなきっかけで知ったのかを、いまとなっては思い出すことができない。しかし、初めて買った本なら覚えている。「私は嘘が嫌いだ」というタイトルで、内容はすべてが嘘の話であった。面白かった。買ったのは1982年の春、旭川のマルカツデパートの中の冨貴堂書店でだったと思う。 当時はソフトカバーのユーモラスなエッセイのようなものが流行っていて、椎名誠、嵐山光三郎、南伸坊、村松友視などのものが出ていたと思う。話の特集から出版されていた「私は嘘が嫌いだ」も、そういうののうちの一冊だったような気がする。糸井重里のことはこの頃にはもう、沢田研二の「TOKIO」を作詞した人だということは知っていて、この少し前から雑誌「ビックリハウス」を読みはじめていたので、人気連載「ヘンタイよいこ新聞」の人だということも知っていたはずである。 それ以前にベストセラーになった矢沢永吉の「成りあがり」や、宮