全国の酒場でジョークを飛ばし、客を笑わせ、旅する男がいる。その男はスタンダップコメディアンのナオユキ氏。破天荒なまでに自由な働き方で生き抜いている彼の秘密に迫った。 2016年5月11日の夜、島根県隠岐郡海士町(あまちょう)の居酒屋「紺屋」の店内には、大勢の客の笑い声が響き渡っていた。 日本海にポツポツ浮かぶ隠岐諸島は、島根半島から約60 km。中ノ島全域を占める海士町は、人口2300人ほど。近年、Uターン、Iターンの増加で注目されているが、本土からフェリーで約2時間半の辺地である。ちなみに、承久(じょうきゅう)の乱で鎌倉幕府に破れた後鳥羽上皇が、配流された土地としても知られている。 そんな島の、店の片隅にあるステージで、黒いハットを被ったホロ酔いの中年男が、グラス片手にマイクスタンドに寄りかかり、ささやくように言葉を紡ぎ続けている。その姿は、さながらギターを持たないブルースミュージシャン