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麻布競馬場の検索結果1 - 18 件 / 18件

  • 滲み出る書き手の“主観”に高ぶる。武田砂鉄×麻布競馬場が語る、ノンフィクション | ブルータス| BRUTUS.jp

    武田砂鉄 今はノンフィクションとフィクションの境界も曖昧になっている気がします。それこそ麻布競馬場さんもご自身の小説について「どこまで本当?」と聞かれませんか? 麻布競馬場 そうですね。あらゆる作品の根底にリアリティがあるのは間違いないので、フィクションを書くうえでも取材は必要になります。フィルターを通して物語にしているから一概に言えないですけれど。 武田 取材対象のすべてを捉えることはできないですしね。話を聞かせてください、とマイクを向けた瞬間に、聞き手の意思があるわけだし。 麻布 そういう断片から、時代の空気が保存できる本にしたいなというのはありました。生まれたときから「失われたN年」が始まって、ずっと閉塞感のなかで生きてきたので。 武田 きている事象や空気を捉えていることもあるんじゃないかと。だから定義づけは時に乱暴です。 綿密な取材から気づかされる、 見えていなかった現実 麻布 …

      滲み出る書き手の“主観”に高ぶる。武田砂鉄×麻布競馬場が語る、ノンフィクション | ブルータス| BRUTUS.jp
    • 真面目な真也くんの話|麻布競馬場

      真也くんは真面目な人だった。 大学の同期で、ゼミが一緒だった。三田祭論文のテーマが近かったから、ゼミではよく一緒の日に発表したし、よく比較されたし、何となく対抗意識じみたものを僕は明確に持っていたように思う。 真也くんは熊本だか宮崎だかの出身で、実家は農家で、ピーマンを作っていた。夏になると親御さんから規格外のピーマンが送られてくるらしく、僕は彼からもらった袋いっぱいのピーマンを1つ刻んで塩昆布で和えて、当時お気に入りだった「のどごし生」のつまみにして、残りは袋に入ったまま全部ゴミ箱に捨てた。僕はピーマンが苦手だった。苦手だと彼にあらかじめ言っていた。彼はニコニコと袋いっぱいのピーマンを渡してきた。ピーマンの形をしたその善意はやけに軽かった。ピーマンの中身は空洞だからだ。真也くんみたいだなと思った。 論文の発表は、たいてい僕が先で、彼が後だった。なぜなら僕の発表はすぐ終わるが、彼の発表はな

        真面目な真也くんの話|麻布競馬場
      • 【対談こぼれ話編】麻布競馬場と稲田俊輔、「自警団」にならない行きつけの店との距離感を語る|マンションプラス MANSION+

        ▲麻布競馬場さん、稲田俊輔さんは、麻布台マンションの低層階にあるフランス料理店「レストラン パトゥ」で、ランチを味わいながら食トークに花を咲かせた。麻布台の街の魅力や、麻布競馬場さんが愛する「マンション1階レストラン」について語った記事前編はこちら ――稲田さんはさまざまなジャンルの飲食店に携わっておられますが、個人的に好きだったり、よく足を運ぶのはどんなお店ですか? 稲田:前回の話にも通じますが、やはり「世界観」がハッキリしているお店には惹かれます。もちろん飲食店は商売ですから、お客さんのニーズがあるものを提供するのが基本です。ただ、多くの人が求め、なおかつ利益を生みやすい料理やサービス……僕はそれを「サイテキカイ」と呼んだりするのですが、個人的にサイテキカイは画一的でつまらないと思っていて。

          【対談こぼれ話編】麻布競馬場と稲田俊輔、「自警団」にならない行きつけの店との距離感を語る|マンションプラス MANSION+
        • 特別座談会 これからの最良の「働く」とは|麻布競馬場×岩崎由夏×福田恵里×堀越耀介×宮下晃樹 | Forbes JAPAN 公式サイト(フォーブス ジャパン)

          Forbes JAPAN 2024年5月号は、「『最愛の仕事』の見つけ方」特集。この数年で「働きやすさ」や「働く選択肢」が大きく広がった一方、価値観の多様化や不透明な未来といった因子が複雑に絡まり合い、自らの働く意味や理想のあり方とは何なのかと悩んでいる人は少なくない。自律的なキャリア形成へと世の流れが移る今、画一的なロールモデルは存在しない。各分野の第一線で活躍する人物・識者たちへの総力取材を通じて、自分だけの答えを見つける手がかりを提示する。 今回、東京で働く若者たちの苦悩を描いてきた覆面作家の麻布競馬場、キャリアSNSを手がけるYOUTRUSTの岩崎由夏、女性向けキャリアスクールを運営するSHEの福田恵里、哲学者の堀越耀介、キャンピングカーを通じた新しいライフスタイルを提供するCarstayの宮下晃樹が集結。独自のキャリアを切り開いた体現者でありながら、異なる分野で働き方やキャリアと

            特別座談会 これからの最良の「働く」とは|麻布競馬場×岩崎由夏×福田恵里×堀越耀介×宮下晃樹 | Forbes JAPAN 公式サイト(フォーブス ジャパン)
          • 名店は「マンションの1階にあり」。麻布競馬場×稲田俊輔が語る麻布台|マンションプラス MANSION+

            ▲ワインで乾杯する麻布競馬場さん(右)、稲田俊輔さん(左)。麻布台マンションの低層階にあるフランス料理店「レストラン パトゥ(神戸で20年に渡って愛されていたフレンチの名店。2020年に麻布台へ移転。)」で、ランチを味わいながら語っていただいた。お二人の料理についての感想と食トークは記事後編で ――麻布競馬場さん(以下、アザケイ)は過去に麻布十番にお住まいだったそうですね。 アザケイ:新卒の頃から8年間、麻布十番のマンションに住んでいました。当時、よく遊んでいたのは麻布十番と六本木ですが、麻布台まで足を運ぶこともありましたね。この界隈って、エリアごとに街の色が少しずつ違っていて、グラデーションがあるんです。 まず、六本木は完全に飲食と商業の街。そこから麻布十番の方へ向かうにつれて少しずつマンションが増えてきて、麻布台や元麻布まで行くとほとんど住宅ばかりになる。六本木で飲んだあと、そのグラデ

              名店は「マンションの1階にあり」。麻布競馬場×稲田俊輔が語る麻布台|マンションプラス MANSION+
            • 【期間限定・無料公開中】麻布競馬場『令和元年の人生ゲーム』第2話|WEB別冊文藝春秋

              TOPページへ 〈タワマン文学〉の旗手・麻布競馬場待望の第2作『令和元年の人生ゲーム』が2月21日についに刊行されました! 発売直後から「他人ごととは思えない!」とすでに悲鳴のような反響が続々と…… この興奮をぜひ皆さんと共有できればと、全4話の短篇のうちもっとも「ザワつき度」の高い第2話〈大手町のキラキラメガベンチャー・新入社員篇〉を期間限定で全文無料公開いたします! 『令和元年の人生ゲーム』 第2話 平成31年無気力な同期、転職していく親友、新入社員にも容赦のない上司。 大手町で”圧倒的成長”を遂げるはずだった私は…… 2019年4月、私は早稲田わせだ大学政治経済学部を卒業して、大手町おおてまちにある人材系最大手企業、パーソンズエージェントに新卒入社した。 就活生の間で「パーソンズ」の人気は非常に高かった。「実力主義が徹底していて年次に関係なくマネージャーや子会社社長に抜擢ばつてきされ

                【期間限定・無料公開中】麻布競馬場『令和元年の人生ゲーム』第2話|WEB別冊文藝春秋
              • 東京で一番インターナショナルな街。麻布競馬場と市川紗椰が語る広尾の魅力とは?|マンションプラス MANSION+

                ▲麻布競馬場さん(右)は、1991年生まれの覆面作家。街やマンション、美食に通じ、本企画も「マンションの1階にいい店がある街は良い街だ」という氏の名言からスタートした。広尾駅から徒歩10分、麻布競馬場さん行きつけのマンション1階バー「アリビアール」にて収録。X:麻布競馬場 ──麻布競馬場さん(以下、アザケイ)は、広尾という街にどんなイメージをお持ちですか? アザケイ:学生時代は東急東横線の新丸子に住んでいたんですけど、当時の東横線は日比谷線直通だったので、週1ぐらいで六本木の美術館とか映画館に通っていたんです。だから広尾を通過してはいましたが、降りることはなかったですね。敷居が高いイメージがあって、行けるお店はマックとスタバしかないかな、と。 ──就職して、麻布十番に住まわれたと聞いています。 アザケイ:そうなんです。その後、白金高輪に住むようになって、ここ(広尾)から徒歩20分ぐらいです

                  東京で一番インターナショナルな街。麻布競馬場と市川紗椰が語る広尾の魅力とは?|マンションプラス MANSION+
                • 「SNSは本当に罪深い」 「タワマン文学」覆面作家・麻布競馬場さんが描く令和の幸福論

                  著書を手にする覆面作家の麻布競馬場さん。「小説を書いていることは親も知らないんです」と話す東京都心部のタワーマンションなどを舞台に、いわゆる「勝ち組」にも分類される中流層が直面する残酷な格差、さらには内面に巣くう鬱屈や嫉妬心をも赤裸々に描く。ツイッター(現X)への投稿を起源とするそんな小説群は「タワマン文学」と呼ばれ、近年話題になっている。ムーブメントの一翼を担う覆面作家、麻布競馬場(あさぶけいばじょう)さんの新刊『令和元年の人生ゲーム』(文芸春秋)は、現代を生きる「意識高い系」の若者たちの群像をつづった連作集。「SNSは本当に罪深いと思います」。インタビューの最中、SNS上で人気を博した著者から、こんな言葉も飛び出した。その真意は? 「暇つぶし」で書き始めたら…麻布競馬場さんは1991(平成3)年生まれ。慶応大卒業後に新卒で入った会社で今も働いている。令和3年からツイッターに小説の投稿を

                    「SNSは本当に罪深い」 「タワマン文学」覆面作家・麻布競馬場さんが描く令和の幸福論
                  • #ハッシュタグストーリー(1/4)/麻布競馬場,柿原朋哉,カツセマサヒコ,木爾チレン:試し読み|双葉社文芸総合サイトCOLORFUL

                    SNSの総フォロワー数200万人超! 新時代の人気小説家が終結した豪華アンソロジー『#ハッシュタグストーリー』が発売されました。本作は「SNSのいい話」をテーマに4名の著者が短編を創作。タイムラインに疲れてしまったあなたの心をいやす物語が必ずあるはずです。各作品の冒頭部分をお楽しみください。 『#ハッシュタグストーリー』の発売を記念して、全4篇の冒頭を公開。初回は木爾チレンさん『#ファインダー越しの私の世界』をお楽しみください。カツセマサヒコさん、柿原朋哉さん、麻布競馬場の作品も順次公開していきます。 『#ファインダー越しの私の世界』は切なくていい話。育児に疲れ果てた主人公が大学時代の淡い恋を思い出します。夢中になったインスタグラムの投稿や元カレとの思い出。誰しもが経験する青春の1ページと大人になった「今」を切り取った恋愛小説は心に沁みます。 #ファインダー越しの私の世界 深い海の底のよう

                      #ハッシュタグストーリー(1/4)/麻布競馬場,柿原朋哉,カツセマサヒコ,木爾チレン:試し読み|双葉社文芸総合サイトCOLORFUL
                    • 大バズり覆面作家・麻布競馬場インタビュー「それでもやっぱり新しい世代の価値観が絶対的に正しい」

                      2021年10月、突如としてTwitter(現X)に現れ、毎週のように“バズ”を巻き起こし続けてきた覆面小説家の麻布競馬場。格差や嫉妬心に疲弊しながらも東京に生きることをアイデンティティーにする人々を描き出す “タワマン文学”の旗手であり、堀江貴文氏や佐藤優氏、田村淳氏などが絶賛する、話題の人物でもある。待望の最新作『令和元年の人生ゲーム』(文藝春秋刊)に注目が集まるいま、執筆の舞台裏を語ってもらった。 「読んだ人からは、『だいぶ芸風変わったね』って言われます(笑い)。前作の『この部屋から東京タワーは永遠に見えない』はサクサクっと1時間くらいでTwitterに“一発書き”したショートストーリーを本にしたものですが、今作は2か月に一度出る文芸誌への連載。1篇が長くなった分、登場人物も増え、一人ひとりの描写も深くなりました。また、締め切りまで時間があったから、毎晩読み返しては良かったところだけ

                        大バズり覆面作家・麻布競馬場インタビュー「それでもやっぱり新しい世代の価値観が絶対的に正しい」
                      • [第5話] 「希望」 - 原作:麻布競馬場 漫画:川野倫 | となりのヤングジャンプ

                        この部屋から東京タワーは永遠に見えない 原作:麻布競馬場 漫画:川野倫 SNSで話題の"タワマン文学"初のコミカライズ。 同名の"虚無と諦念のショートストーリー集"を原作に、東京に暮らす人びとを描く。 手に入れるはずの幸せを見失い、もう戻れない諦めの先に、それぞれが見るものはーー。

                          [第5話] 「希望」 - 原作:麻布競馬場 漫画:川野倫 | となりのヤングジャンプ
                        • MOROHA論②|麻布競馬場

                          新宿に向かう丸ノ内線の中で、僕はどう変わっただろうか?とふと考えた。どう変わったというのは、2022年2月のMOROHAのライブから今日のMOROHAのライブまでの一年半ほどの間に、僕がどう変わったかということだった。 あの頃の僕は、少し前からツイッターで短編小説を書き始め、書くたび拡散されていた。最初はコロナ自粛の暇つぶしのためにやっていたが、そのあまりの反響の大きさに「これは本になるな」と内心卑しい期待を持っていた。事実、その翌月末には「卒業式で早稲田卒の先生がみっともない過去を生徒に滔々と語る」という筋の短編がかつてないほどにバズり、そのタイミングで集英社の稲葉くんから「ぜひ本にしましょう」と連絡を受けることになった。そこから半年で新たに書いたり、過去に書いたものを調整したりして、僕は無事に「作家先生」になることができた。今も文芸誌で連載を持たせてもらって、印税や原稿料のおかげで以前

                            MOROHA論②|麻布競馬場
                          • 麻布競馬場らがSNS世代の心臓を直撃! 平成初期生まれに刺さりまくるアンソロジー小説『#ハッシュタグストーリー』

                            麻布競馬場らがSNS世代の心臓を直撃! 平成初期生まれに刺さりまくるアンソロジー小説『#ハッシュタグストーリー』 いやー、もういい加減にしてくれよ! と言いたくなった。いい加減にしてくれ。わかったわかった、お願いだから、これ以上私の心臓の、いちばん引っ掻かれたくない部分を、ぐさぐさと刺さないでくれ! と。 『#ハッシュタグストーリー』(双葉社)の破壊力、すごいですよ。けっこうなもんです。少なくとも、1992年生まれの、SNSとともに思春期を過ごした私には、大ダメージだった。「うごぉぉ……」と、謎の悲鳴を上げながら全4話を読み終えたのが、ついさっき。はあはあ。なんだかまだ心臓の底のあたりが、どこどこと踊っている感じがする。 『#ハッシュタグストーリー』は、その名のとおり、SNSにまつわるアンソロジーだ。麻布競馬場さん、柿原朋哉さん、カツセマサヒコさん、木爾チレンさん――4人の小説家が、それぞ

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                            • 麻布競馬場「この部屋から東京タワーは永遠に見えない」 他人の転落が最大の娯楽に|好書好日

                              タワマン、港区女子、東カレデートアプリ、オンラインサロンなどの新しいキーワードが使われたショートストーリーズ。 「30まで独身だったら結婚しよ」という短編は、かつて曖昧(あいまい)な関係だった男性とその奥さんが住むマンションに向かう女性の話。彼は、大学の文化祭実行委員時代の仲間だった。服装はダサい。「首元に変な切り込みと紐(ひも)が付いた黒いTシャツ」。互いに馬は合ったし、愛せるダサさだったが、彼女が見下していたことがバレて関係は切れた。彼のダサいTシャツの写真を裏アカウントのつもりで表アカに誤爆した。 その後、30歳になった主人公が、結婚した彼の新居を訪ねる。場所は、千葉県の流山おおたかの森のマンションだ。主人公は、住人を「二子玉マダム」の「ジェネリック品」だなと感じている。ネットで調べると、価格は彼女が都内の清澄白河に買った2LDKの半値くらい。見下す材料は複数見つかる。 住む場所、出

                                麻布競馬場「この部屋から東京タワーは永遠に見えない」 他人の転落が最大の娯楽に|好書好日
                              • 作家・麻布競馬場の人生を変えた本、野地秩嘉『キャンティ物語』

                                数多ある音楽、本、映画、漫画。選ぶのが難しいからこそ、カルチャーの目利きに最上級の1作品を厳選して語ってもらった。今回紹介するのは、作家の麻布競馬場。【特集 最上級主義2024】 「登場人物の『キャンティ』への愛、著者や編集者の本への愛を感じる」 「飯倉にあるイタリアン『キャンティ』を知ったのは僕が麻布十番で暮らし始めた2014年。20代の僕には敷居が高く、入る勇気が持てないレストランでした。六本木駅の上にあったあおい書店で『キャンティ物語』を手に入れてくり返し読み、想像を膨らませていました。 最初はキャンティならではの文化に憧れ、子供の心を持った大人たちと大人の心を持った子供たちの店に集う人たちがうらやましかった。ここで多くの人が粋な振る舞いや遊び方を身につけていったんだな、と。 物語性も強く感じました。実話と思えないほどにドラマチック。お店の華やかな時代と、創業オーナーの川添浩史・梶子

                                  作家・麻布競馬場の人生を変えた本、野地秩嘉『キャンティ物語』
                                • “都会コンプレックス”はいかにして生まれるのか? 「“文化資本がないから東京出身の金持ち育ちに勝てない”というのは、行動しない地方出身者の免罪符」〈児玉雨子×麻布競馬場〉 | 集英社オンライン | ニュースを本気で噛み砕け

                                  神も仏も滑稽に。江戸文学のポップな懐の深さ 麻布競馬場(以下、麻布) 児玉さんの『江戸POP道中文字栗毛』(以下、江戸POP)は「よみタイ」で連載されているころから読んでいたんです。 児玉雨子(以下、児玉) わぁ、ありがとうございます! 麻布 僕は受験勉強の申し子なので、教科書で取り上げられるような古典の名作は一通り読んでいたんです。でも、江戸POPで取り上げられている作品のことはほとんど知らなくて。 おそらく、受験生が読むような古典は、ある種のフィルターを通ったものなんですよね。「品性のフィルター」というか。濾過する前の江戸文芸作品には、こんなにポップな作品があったのか、ということにびっくりしました。 その中でも特にすごかったのは、千手観音の手を貸し出す話。 ——1785年の黄表紙(※1)『大悲千禄本(だいひのせんろっぽん)』(芝全校作・北尾政演画)ですね。商売人が千手観音にお願いし、腕

                                    “都会コンプレックス”はいかにして生まれるのか? 「“文化資本がないから東京出身の金持ち育ちに勝てない”というのは、行動しない地方出身者の免罪符」〈児玉雨子×麻布競馬場〉 | 集英社オンライン | ニュースを本気で噛み砕け
                                  • 書評:令和元年の人生ゲーム (麻布競馬場)|窓際三等兵

                                    「次は別冊文藝春秋で連載やるんですよねー、連作短編でまとめる感じで」 今から振り返ること1年と少し前。麻布十番の寿司屋で、目の前の男が炙った海苔をつまみにお猪口を傾けながらこう話すのを聞きながら、意外だなと思った。同時に少し安堵したことをうっすら覚えている。 「そうか、こいつも結局、『作家先生』になりたい、『こっち側』の人間だったのか」 薄汚れた感情とともに呑み込む純米大吟醸の酔鯨は旨かった。 当時、目の前に座る麻布競馬場という存在はTwitterという枠を飛び越えつつあった。デビュー作『この部屋から東京タワーは永遠に見えない』は重版を重ね、どこの書店でも平積みに。ホリエモンや峯岸みなみといったテレビ画面の向こう側の人々との対談を繰り返し、彼の代名詞ともなった「タワマン文学」とともにネット上のミームでは片付けられなくなっていた。 そんな彼を出版社が放っておく訳が無く、日本を代表する大手出版

                                      書評:令和元年の人生ゲーム (麻布競馬場)|窓際三等兵
                                    • 今週の本棚:佐藤優・評 『令和元年の人生ゲーム』=麻布競馬場・著 | 毎日新聞

                                      (文藝春秋・1650円) Z世代の黒い怒りと怨念がにじむ 最近、30代の官僚やサラリーパーソンと話をすると「どうも最近の新人が何を考えているかよくわからない」という悩みをよく聞く。いわゆるZ世代の内在的論理を見事に対象化した作品として評者はこの小説を薦めている。 メインとなる沼田さんなる人物が慶應義塾大学に在学していた2016(平成28)年から、卒業してベンチャー系企業に入り、さまざまな出来事に巻き込まれ、23(令和5)年には隠遁(いんとん)者のようになってしまう過程を描いている。大学時代、沼田さんはビジネスコンテスト(ビジコン)運営サークルに入るが、物事を斜めに見る癖がすでについている。<「色々と綺麗(きれい)ごとを言ったところで、資本主義社会において最優先されるのって、結局は利益追求じゃないですかぁ」/つまり沼田さんは、ソーシャルグッド系ベンチャーなんてものは所詮、困っている人たちをダ

                                        今週の本棚:佐藤優・評 『令和元年の人生ゲーム』=麻布競馬場・著 | 毎日新聞
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