――国民統合のために使ったら、さらに第二次大戦の記憶が強化されて、今の動員への忌避に繋がったんでしょうか。 小泉 プーチンも自分が呼び起こした記憶によって、またあれやりますとは言えない。たぶん今のプーチンの路線としては、第二次大戦でナチスを倒した、人類悪を倒した我々は正しいという記憶と、今のウクライナはナチスだから倒すっていう話を重ね合わせたいし、ある程度そういうストーリーがメディア空間を圧倒しているので、そんなもんかと思ってる人たちは結構いると思います。 あと、プーチンの恐らく裏テーマというか、「俺の代でウクライナをロシアに回収する」といった民族主義的野望もあって、それを心から支持してる人もいると思うんですよ。 だけど、じゃあ皆さん家庭や仕事を捨てて軍隊に行ってください、ウクライナと戦ってくださいって時に熱狂的にそれに応じる人や、夫や息子を軍隊に送り出すことに同意する家族がどのぐらいいる
ロシアにとって“第二次大戦の記憶”が重い理由 ――安直に例に引きたくはないですが、ヒトラーも国民に第一次大戦の記憶(ドイツ国内で深刻な飢餓が発生した)を呼び起こす総動員は戦争後半まで避けてましたね。それと同じように、国民に負担を強いる動員は、ロシアにとってもトラウマなんでしょうか? 小泉 独ソ戦で2000万人死んでいますからね。モビルザーツィア(動員)という言葉が持っている、社会や生活全体を飲み込んでいく恐怖感というのはすごくあると思います。 プーチンも実際に戦勝記念日の演説で「この戦争で誰も犠牲者を出さなかった家庭はありませんでした」と言ったことがありますが、みんな戦争に行ったり、軍事工場で働いたり、空襲を受けたり、まさにアレクシエーヴィチ(ソ連邦内ウクライナで生まれ、現在ベラルーシ国籍の作家・ジャーナリスト。2015年ノーベル文学賞受賞)の『戦争は女の顔をしていない』の世界です。 スヴ
東京大学先端科学技術研究センター専任講師の小泉悠氏。ロシアによるウクライナ侵略からしばらくの間、テレビを始めとするメディアで見ない日はなかったといっても過言ではない、ロシアを専門とする安全保障研究者だ。 ウクライナ侵略に踏み切ったプーチン政権に対して厳しい目を向ける氏ではあるが、自身の経験をもとに、市井のロシア人の生活から、国家観、社会を紹介する『ロシア点描』(PHP研究所)を上梓するなど、軍事以外の面での理解の必要性も訴えている。 前編では、戦争が膠着状態にあること、それを打開するためロシアには動員という術があるが、プーチンは動員に踏み切れていないと小泉氏は指摘した。それはなぜか――。(全3回の2回目/#1、#3を読む) ◆◆◆ 動員は政治的賭け 小泉悠さん(以下、小泉) 核と違って人類滅亡の危険は無いから、ロシアは動員をかけてもいいはずなのにしていない。多くのロシア研究者が言っているの
「白人が死んで初めて惨劇として認識する」 ――先ほど、市民への攻撃に触れましたね。先日、読売新聞に『銃・病原菌・鉄』の著者ジャレド・ダイアモンドが「西側諸国とウクライナはロシアが攻撃目標を軍隊から市民に切り替えるとは予想だにしなかった」と書いていて、「そうか?」と思ったんです。 というのも、小泉さんは著書『現代ロシアの軍事戦略』(ちくま新書)で、ロシア軍が意図的にシリアで市民を攻撃したことについて、その軍事的な思惑をガレオッティ(英王立防衛安全保障研究所上級研究員)の「残虐性の価値」という概念で説明していたからです。 ウクライナでも同様のことが起きたわけですが、市民への攻撃について、ロシア軍のドクトリン(運用思想)に組み込まれていたり、議論されてきたんでしょうか? 小泉 ロシアの空爆理論を私はそんなに読んでいませんが、彼らの航空宇宙作戦に関する関心の多くは、西側の軍隊と真正面から戦う時のド
小泉 ロシア軍の標的戦略が、我々の知っているものとだいぶ違う感じがします。恐らく民間施設を狙うのは、国民の士気をくじこうという、古典的な戦略爆撃理論です。ただ、それがドゥーエ(イタリアの軍事思想家。戦略爆撃理論の提唱者)やミッチェル(米軍人。米空軍建軍の父とされる)が夢見たような、敵国の生産能力そのものを破壊するものでなく、日本の南京爆撃とか、アメリカの東京空襲の後半のような、民間人そのものを標的にして、国民の意思をくじく事をロシアは目指している気がするんです。 それを東京やドレスデンのように街を丸ごと焼き払うような空襲ではなく、散発的にウクライナ各地の生活空間にミサイルを撃ち込んで、「どこにも安全なところがないぞ」というような、民間人に対するターゲティングの思想が、どちらかというとテロに近いんですよね。 ロシア軍の大陸間弾道ミサイル しかし、4ヶ月半それをやって、ウクライナ市民の抗戦意思
◆◆◆ 一進一退の戦場 ――まず、ウクライナの直近の戦況について、小泉さんの見解は?(※インタビューは7月15日) 小泉悠さん(以下、小泉) 一進一退と思います。どちらも大勝ちできる状況にない。ロシア軍は火力が非常に強力で、要するに大砲やロケット砲の数というか、分厚さが半端ない。今は東部のドンバスを中心に真っ平らな地形で戦っているから、遠距離からロシア軍に一方的にやられてウクライナ軍は勝てていない。 ところが、ウクライナ軍はもともと軍隊が約20万人でその他の治安部隊は10万人、計30万人くらいの軍事力だったのが、今は動員で100万人に膨らんでいる。数の上ではものすごく大きな軍隊を持っているので、簡単には負けない。 ただ、ロシア軍に勝てないし、遠距離で戦うと圧倒的にロシア軍の方が強い。一方、ロシア軍は大砲で叩けるけど、占領する兵隊がいない。陸軍種の最大の機能は土地を占領することですが、ロシア
いつもご利用いただき誠にありがとうございます。 LinksMateサービス事務局です。 この度LinksMate紹介パートナー施策において、掲載された動画の中で一部誤った情報が発信されていることを確認いたしました。 LinksMateをご利用のお客さまにご迷惑をおかけしましたことを深くお詫び申し上げます。 今回、対象の動画内で紹介されたクーポンコードを使用してお申し込みをしたお客様につきましてお申し込みのキャンセルを受付いたします。 お申し込みのキャンセルを希望する方はリンクスメイトのお問い合わせチャットやLinksMateお客さまセンターへお電話にてご連絡ください。 ◆対象申し込みキャンセル受付期限: 2022年8月19日(金)10:00 ~ 2022年8月22日(月)18:00まで ◆対象クーポンコード: 2020AFWCTQ35X ※現在対象のクーポンコードは利用停止しております 今
安倍晋三元首相の国葬についての議論は収まる気配はない。岸田文雄首相が早々に閣議決定で通したのは、いわゆる「法律顧問」である内閣法制局のお墨付きを得たからだった。 どうやら過去の国葬でも、この内閣法制局が重要な役割を果たしているらしい。近現代の国葬について研究し、九州大で博士号も取得している上智福岡中高教諭の前田修輔氏にオンライン取材し、過去の事例と比較してみた。 史学雑誌に掲載された前田氏の論文「戦後日本の公葬ー国葬の変容を中心として」は、インターネット上で読むことができ、同誌の7月アクセスランキングトップを記録している。 ●佐藤内閣、国会の議論を推奨した法務府の意見をスルー 日本で国葬が行われるのは戦後では1967年の吉田茂元首相以来だ。当時は現職の佐藤栄作首相が強く希望したといわれている。 この時根拠にされたのが、やはり内閣法制局の解釈だった。 ①内閣法制局の部長が公式制度連絡調査会議
コンビニ本部と加盟店との関係は改善に向かいつつあるとはいえ、課題はまだ残る。その本丸とも言えるのが、加盟店が本部に対して支払うロイヤルティー比率の引き下げだ。 コンビニチェーンでは一般的に、店舗の売上高から商品などの仕入れに伴う売上原価を差し引いた売上総利益をコンビニ本部と加盟店で分け合う。売上総利益に一定割合を乗じたロイヤルティーを加盟店は本部に支払う。 セブン本部に支払うロイヤルティー比率はもっとも一般的な契約タイプで約60%と、競合他社と比べ高い水準だ。さらに売上総利益が増えるほど、累進課税のようにロイヤルティー比率は上がっていく。 加盟店オーナーを45年間続けたという首都圏の男性は「長く続けた店舗であればロイヤルティーの減額があるため利益も出た。2店舗のうち、古いほうの店を閉店したことでロイヤルティーの金額が上がって、人件費を抑えないと利益が出なくなった。最後はずっと赤字だった」と
今回の戦争でロシア人の友人を多数失った 小泉 ロシアの軍事理論家の書くものをよく読むんですけど、彼らも2014年以降に本当にすっかり変わりました。 それまでもアメリカの覇権に対する反感はあったし、「戦争に見えない戦争」といった議論もあったけど、それが公然と「アメリカがロシアを弱体化させるためにやっている戦争」という前提で彼らも書くようになってきているので、もう我々と根本的な世界認識からして話が通じなくなっている感じで、中国もそっくりなこと言ってるわけです。 ユーラシアの強力な大国が根本的に我々と違う世界観を持っている時代で、どう関係を築いたらいいのか、途方に暮れてしまいます。僕は今回の戦争でかなりロシア人の友人を失ったんですけど、本当に話が通じないんですよ。アメリカが挑発した戦争なんだみたいなことを言うわけで、「本当にそう思う?」と聞くんですが、彼らは本当にそうだろうって言うわけですよ。
――2人の自分の間で揺れ動いたという話ですが、それが「これは戦争になるんじゃないか」と傾いた瞬間はありましたか? 小泉 2月の頭ぐらいに国境付近のロシア軍が基地から出始めて、完全に野外展開して攻撃準備態勢に入ったあたりからです。あの辺はやばいなと思いました。あと、輸血体制を拡充している話が流れてきて、これも演習ではありえないなと。 もう1個は、去年の秋ぐらいにロシアが国家規格で遺体の緊急埋葬手順を改訂してて、その発効が2月だったんです。2月に大量の遺体が出るような何かをやるのか、という観測もあって、一応テイクノートと思ってメルマガに書いたんですけど、結果的にドンピシャだったんですよね。 プーチン大統領 ©文藝春秋 ただ、直前にプーチンがドイツのショルツ首相とかと会ったりして、最後にもう一回外交に戻るのかなと、ちょっと揺らぎました。これは第2次ミンスク合意を飲ませるための壮大なブラフだったの
自分で書いたメルマガのバックナンバーを見返すと、ワシントンポストの記事が出る確かちょっと前に、ウクライナ危ないんじゃないかみたいな記事を書いてるんですよ。もちろん、「わかりませんけど」という前提ですけど、あの時には僕はなんか変なことしているなという感じを持っていたと思います。 もう一つは、メドヴェージェフ前大統領です。プーチンがその前の7月に「ウクライナとロシアは一体だ」って論文を書いて、そんな民族主義丸出しのウクライナを見下した話をよく大統領府のサイトに掲載するもんだと思ったんですけど、10月にはメドヴェージェフがコメルサント紙にものすごく汚い言葉でウクライナを脅しつける文章を書いて、「元大統領が言うか」と本当に異常だと思ってました。 メドベージェフ前大統領 ©文藝春秋 ラヴロフ外相も同じ10月に第二次ミンスク合意を履行させるように圧力かけてくれっていう書簡をドイツ、フランスの外相に送っ
東京大学先端科学技術研究センター専任講師の小泉悠氏。ロシアによるウクライナ侵略からしばらくの間、テレビを始めとするメディアで見ない日はなかったといっても過言ではない、ロシア軍を専門とする安全保障研究者だ。 ウクライナ侵略に踏み切ったプーチン政権に対して厳しい目を向ける氏ではあるが、自身の経験をもとに、市井のロシア人の生活から、国家観、社会を紹介する『ロシア点描』(PHP研究所)を上梓するなど、軍事以外の面での理解の必要性も訴えている。 ここでは、今回のウクライナ侵略に対する自身の見解や、研究者としての心境について伺った。(全3回の3回目/#1、#2を読む) ◆◆◆ この戦争は「ハイブリッド戦争」ではない ――話を戦争に戻します。今回の戦争は多様な主体や手段を用いるハイブリッド戦争であるか否か、識者の間でも分かれていますが、どう思われますか? 小泉悠さん(以下、小泉) ハイブリッド戦争をど
パブリッシャーのDANGEN Entertainmentは8月18日、『OneShot: World Machine Edition』を9月22日に発売すると発表した。対応プラットフォームはPlayStation 4/Xbox One/Nintendo Switchで、価格は税込1650円。日本語字幕に対応しており、Xbox One/Nintendo Switch版の予約が8月18日から開始される。 『OneShot: World Machine Edition』は、Future Catが手がけたPC向けメタ2DADV『OneShot』のコンソール向け移植版である。本作の舞台では、数年前まで太陽があり、塔の天辺から光が大地へと降り注いでいた。しかし、ある時唐突に光が消えてしまい、世界が暗闇に覆われてしまう。世界が滅びへと向かっていく中、新たな太陽を携えた救世主の存在が唯一の希望だった。本作
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