この世界は驚きに満ちている。日本が他の先進諸国の潮流に逆行して移民を受け入れる方向に進むとは、一体誰が想像しただろうか。だが安倍晋三首相率いる自由民主党が高齢化社会と労働力不足に対処するために推し進めている政策は、まさにそういうことだ。
外国人労働者の受け入れを拡大するための出入国管理法改正案が審議入りした。 政府は、来年度から5年間の受け入れを最大約34万5千人とし、初年度は最大約4万8千人とする見込みを示した。業種別では介護が累計最大6万人などと説明した。 だが、こうした数字は現時点での「入り口」の目安を示したにすぎない。5年ごとに次の5年の見込み数を提示するというのでは、将来的に何人受け入れることになるのかが分からない。 しかも、安倍晋三首相は人手不足が解消された場合について「すでに在住する外国人の在留をただちに打ち切り、帰国させることは考えていない」とも述べた。 人手が足りないという理由で入国を認めるのに「該当する仕事」がなくなっても日本に住み続けることになる。日本で別の仕事に就くことを認めるのならば、制度の趣旨そのものが根底から覆る。 そもそも何を基準に人手不足やその解消を判断するのか。産業の盛衰は世の常だ。人口
1955年、東京都に生まれる。東京大学理学部数学科・経済学部経済学科卒業。博士(政策研究)。1980年、大蔵省入省。理財局資金企画室長、プリンストン大学客員研究員、内閣府参事官(経済財政諮問会議特命室)、総務大臣補佐官などを歴任したあと、2006年から内閣参事官(官邸・総理補佐官補)。2008年退官。金融庁顧問。2009年政策工房を設立し会長。2010年嘉悦大学教授。主要著書に『財投改革の経済学』(東洋経済新報社)、『さらば財務省』(講談社)など。 高橋洋一の俗論を撃つ! 元財務官僚の経済学者・高橋洋一が、世にはびこるもっともらしい「俗論」の過ちをズバリ解説。 バックナンバー一覧 今国会で焦点になっているのが、出入国管理法改正案である。これまで専門的・技術的分野に限っていた在留資格に新たな分野を設け、外国人労働者の受け入れを拡大しようとするものだ。 だが、今回の入管法改正は多くの問題点を抱
法務省は11日、外国人労働者の受け入れ拡大に向け、新たな在留資格「特定技能」を2種類設けることを柱とする入管難民法などの改正案骨子を明らかにした。一定の経験や技能を必要とする「特定技能1号」と、熟練技能を要する「特定技能2号」を新設する。1号は在留期限が通算5年で家族帯同を認めない。一方、2号は更新すれば永住できる可能性があり、配偶者と子どもの帯同も可能とする方針だ。政府は来年4月導入を目指し、骨子は12日の関係閣僚会議で示し、24日召集予定の臨時国会に改正案を提出する。 骨子によると、特定技能は人手不足が深刻な分野に限定し、農業や介護など十数業種が対象となる。分野を所管する省庁が定めた試験を受け、日常生活に支障がない日本語能力があれば資格が与えられる。技能実習を修了した外国人は試験が免除される。 1号、2号とも同じ分野であれば転職でき、引っ越しも可能だ。2号の資格を取るためには、より難し
国の障害者雇用の水増しが中央省庁の約8割に広がっていた。算入できる範囲の解釈が違ったなどの弁明が相次いだが、法令を無視していたような実態も明らかになった。障害者雇用の牽引(けんいん)役となるべき国の機関で、「数合わせ」が横行していた背景には何があったのか。 障害者雇用促進法は、省庁や企業が雇用率に算入できる障害者の範囲を厳密に定め、障害者手帳などで確認するよう求めている。28日の政府の再調査結果を受けて、担当大臣ら各省庁トップからは「解釈の仕方の違い」(麻生太郎財務相)などと、対象範囲の勘違いが原因だったとの弁明が相次いだ。 しかし、水増ししていた省庁の具体的な説明から浮かびあがったのは、こうした法令上のルールを長年にわたって事実上「無視」していた実態だ。 約150人のうち、7割にあたる約100人を水増ししていた経済産業省。秘書課によると、少なくとも10年以上前から、歴代の人事担当者が「障
中央省庁の多くで障害者雇用の水増しが明らかになった28日、障害者や雇用を進める民間企業からは非難が相次いだ。先導すべき国の機関でなぜ、問題が起きたのか。徹底調査とともに、誰もが働きやすい共生社会に向けた議論を求める声が上がる。 「こんなに水増しされていたのかという思い。障害者雇用が正しく進められてきたのか疑問だ」 28日午後、野党各党が国会内で開いた合同ヒアリングで、日本盲人会連合の工藤正一・総合相談室長は、目の前に並んだ国の担当者らに強く訴えた。その後も、障害者団体の幹部らからは「残念でならない」「障害を持った人を採用するのはうっとうしいという感じが見えてならない」と怒りの声が相次いだ。 国家公務員になる目標がかなわなかった障害者も憤りを隠さない。関西に住む20代男性は「違法な状態で競争させられていたということになる。採用プロセスの正当性に疑問を感じる」と話した。 数年前、国家公務員の総
加藤厚生労働大臣は、中央省庁全体で合わせて3460人に上る障害者雇用の水増しがあったことを陳謝し、できるだけ年内に法定雇用率を満たすよう、各省庁に求めていく考えを示しました。 また、水増しが故意に行われた可能性については、「糖尿病のような、本来対象になりえないものが含まれていたことは確認しているが、故意か誤解かの把握は困難で、今後、弁護士を含めた検証チームの調査に委ねたい」と述べました。 そのうえで、「それぞれの機関で必要な雇用率をことし中に達成してほしい。難しいようであれば計画を作ってもらい、次の1年をかけて取り組んでもらう」と述べ、できるだけ年内に法定雇用率を満たすよう各省庁に求めていく考えを示しました。 一方で、障害者として水増しされていた職員は、引き続き雇用する考えを示しました。 国税庁では、障害者雇用で水増しされた人数が1022人と最も多く、2.47%と報告していた雇用率は実際に
複数の中央省庁が、障害者の雇用率を長年水増ししてきた疑いが浮上している。障害者雇用促進法は1976年の改正で、従業員の一定割合以上の障害者を雇用することを義務化した。国や地方自治体には民間企業よりも高い雇用率が設定されている。しかし、国は対象外の職員を算入して、雇用率を達成していたかのように、虚偽の数字を発表していたのだ。 水増しの疑いは省庁にとどまらない。地方自治体も次々と水増しを認める異常事態に発展している。障害者の法定雇用率は2018年4月から、国と地方自治体は2.3%から2.5%に、民間企業は2.0%から2.2%に引き上げられたばかりだ。 中央省庁は厚生労働省の指針に定められた障害者手帳や医師の診断書などによる確認を怠り、対象外の人を算入していた可能性がある(写真提供:ゲッティイメージズ) 障害者雇用の現場で、一体何が起きているのか。自身も脳性麻痺(まひ)の子どもを持ち、著書『新版
「外国人技能実習生問題弁護士連絡会」(実習生弁連)は7月14日には都内で、設立10周年記念シンポジウムを開催した。シンポジウムでは、実習生弁連の共同代表、指宿昭一氏と共に、移住労働者と連携する全国ネットワーク(移住連)の代表理事を務める鳥井一平氏が「技能実習制度について」というテーマで基調講演を行った。この中で、鳥井氏は、制度そのものが持つ建て前と現実の乖離という「ゆがみ」が結果的に技能実習生への深刻な人権侵害を生み出していることを指摘している。 ◆度重なる国際社会からの批判 鳥井氏は日本における外国人・移住者の権利保護運動の草分けだ。1992年に外国人労働者の権利保護に向けて「全統一労働組合外国人労働者分会」を結成し、翌93年3月には初めての「外国人春闘」を実施した。 当時から日本社会では、人手不足にあえぐ中小企業を中心に外国人労働者が欠かせない存在となっていた。一方、バブル経済の崩壊を
日本各地の弁護士が、労働組合など他の支援者と連携し、外国人技能実習生の権利保護に向けた活動を積極的に展開している。様々な問題から外部に相談することが難しい技能実習生。そんな中、法律の専門家をはじめとする市民社会の側から、未払い残業代や強制帰国、セクハラといった問題に直面した技能実習生を具体的に実効力ある形で支援する動きが続いている。 ◆搾取される女性研修生との出会いが弁護士を動かした実習生弁連の共同代表を務める小野寺信勝弁護士、筆者撮影 技能実習生を法律面から支援してきたのが、「外国人技能実習生問題弁護士連絡会」(実習生弁連)だ。 実習生弁連は2008年6月に「外国人研修生問題弁護士連絡会」の名称で発足し、その後、2010年に出入国管理及び難民認定法改定によって研修・技能実習生制度が技能実習に事実上、一本化されたことを受け、現在の実習生弁連に改称した。 実習生弁連発足のきっかけの一つは、熊
<今月15日に閣議決定された外国人労働者の受け入れ拡大には、わざわざ「移民政策とは異なる」という文言が。2つのテーマがあたかも無関係であるような考えこそが、問題を悪化させる...> 政府は今後、50万人以上の外国人労働者を受け入れる方針を固めた。移民政策ではないと説明しているが、外国人労働者の受け入れと移民を切り離して考えることは不可能である。日本は事実上、移民政策へ舵を切ったと認識すべきだろう。 企業の現場では外国人がいないと業務が回らない 日本はこれまで、外国人労働者の受け入れについては「高度な専門知識を持つ人材に限る」としてきた。だが、これは建前に過ぎず、企業の最前線では単純労働に従事する外国人がいないと業務が回らないというのが現実である。実際、日本での就労を希望する外国人の多くが単純労働者といってよい。 政府は矛盾した状況に対応するため、技能実習という制度を設け、あくまでも実習とい
政府が最重要法案と位置付ける「働き方改革関連法案」が6月4日に参議院本会議で審議入りした。「働き方改革」の責を担う加藤勝信厚生労働相は、ITmedia ビジネスオンラインの単独インタビューに応じ、高収入の一部専門職を労働時間規制から外す「高度プロフェッショナル制度」(高プロ)について、「今後も年収要件の引き下げや対象業務の拡大をするつもりはない」との考えを明らかにした。 高プロについては、国民から「長時間労働を助長し、過労死が増えるのでは」「対象業務の拡大や年収要件の引き下げが行われるのでは」との懸念が噴出している。 政府は「高プロ」のほか、「残業時間の上限規制」「同一労働同一賃金」を働き方改革の3本の柱に位置付けている。加藤厚労相は、望ましい改革の在り方をどう考えているのか。今後の「働き方改革」の方向性を聞いた。 ――日本が国を挙げて働き方改革に取り組まねばならない理由について、改めて加
労働組合が嫌う「高プロ」 安倍晋三内閣が今国会の最重要法案と位置付けてきた「働き方改革関連法案」が成立する見通しとなった。自民・公明両党と日本維新の会など一部野党が協議の結果、法案の修正で合意。5月24日にも衆議院を通過する見通しとなった。 立憲民主党や国民民主党、共産党などは裁決に反対しているが、6月20日の会期末までには参議院でも可決され、成立することになりそうだ。 法案の柱は大きく分けて2つ。 残業時間の上限を原則「月45時間」、繁忙期の例外でも「月100時間未満」とし、それを超えた場合、罰則を科す。長時間労働の是正に向けた規制強化がひとつ。 もうひとつは年収1075万円以上の専門職社員に限って労働時間規制から外せるようにする「高度プロフェッショナル(高プロ)」制度の新設である。 連合など労働組合は前者の規制強化については賛成しているが、高プロの導入には強く抵抗している。これを受けて
国会審議拒否と働き方改革と 連休が終わり、やっと国会が動き出した。一部野党議員は、国会審議拒否によって18連休と、サラリーマンもうらやむほどの「休養」をとったが、皮肉にも国会では「働き方改革」の関連法案が話題になっている。 雇用といえば、筆者のような大学関係者には、今春の大卒就職率が98%と、3年連続最高になったのは喜ばしいニュースだった。 もっとも、これは想定内の話だ。アベノミクスについて評価はいろいろなされているが、筆者は肯定的である。そもそもマクロ経済政策では、1に雇用の確保、2に給与アップを達成することが重要である。実は、雇用の確保をすれば人手不足の状況が生まれるので、給料は自ずと上がってくる。この意味で、やはり一番に目指すべきは雇用増ということになる。 雇用は、失業率や就業者数等で測れるが、どちらをとっても、安倍政権の実績はいい。バブル崩壊以降では、最もいいといってもいいだろう。
来年度から、外国人労働者向けに新しい「在留資格」ができると報じられている。日本経済新聞によると、技能実習を終了した外国人に対して、国は、さらに最長5年間就労できる資格をあたえるという。 そのあとも、試験に合格すれば、家族を呼び寄せたり、もっと長く国内で働いたりできる資格に移行できるようだ。現行の技能実習制度は、最長5年間の実習期間が過ぎれば、実習生は帰国することになる。就労資格で残すことで、深刻になりつつある人手不足に対応するかたちだ。 技能実習より待遇がよくなるため、移行を希望する外国人が多いのではないかという期待もあるが、一方で、現在の技能制度をめぐって、実習生たちに過酷な労働環境をしいているという指摘もある。技能実習制度を批判してきた指宿昭一弁護士は「新制度でも人権侵害がなくなると思えない」と話す。指宿弁護士に聞いた。 ●「短期間の労働者や留学生の受け入れも、移住者としてとらえるべき
弁護士ドットコム 労働 裁量労働制、労働者にメリットはないのか? 「定額働かせ放題」「働き方全体を見据えた議論を」弁護士たちの意見 裁量労働制が、現在、社会を賑わせました。現政権が、裁量労働制の対象者を拡大しようとしているのに対して、野党側が、政権側の提示したデータの不備などを指摘し、国会の議論が紛糾。政権側が裁量労働制の拡大を今国会の法案から外す決断をしました。 裁量労働制は、実際の労働時間とは関係なく、労使であらかじめ定めた時間を働いたものとみなす制度として1987年の労働基準法改正に盛り込まれました。現在「専門業務型」「企画業務型」が主な対象となっています。 今回は、弁護士ドットコムに登録している弁護士に、そもそもの労働者サイドからみた裁量労働制のメリット・デメリットを聞きました。 ●「労働者にはデメリット」の考えが多数派 以下の3つの選択肢から回答を求めたところ、22人の弁護士から
富山市と東京に本社がある大手工作機械メーカー、「不二越」の会長が7月、記者会見で「富山で生まれた人は極力採らない」などと発言したことに関連して、富山労働局は出身地で採用を決めることは、公正な採用選考が損なわれるおそれがあり不適切だとして、各企業に出身地で区別しないよう注意を呼びかけています。 「不二越」の本間博夫会長は5日、富山市で開いた記者会見で本社機能を東京に一本化すると発表し、今後は、ロボット事業に力を入れソフトウエアに詳しい人材を全国や世界から広く採用したいと述べました。 その上で、採用について「富山で生まれた人は極力採らない」とか、「富山で生まれた人は優秀な人が多いが、閉鎖的な考え方が強い」などと発言しました。 この発言に関連して富山労働局は本人に責任のない出身地が採用で考慮されることは就職差別につながり、憲法で保障された職業選択の自由が損なわれるおそれがあるとして、本間会
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