もう十年よりももっと前のことになるのだな、と、思い出したこと。 当時、私は大阪の小さな製薬会社の管理薬剤師として勤務していた。非常に機嫌よく、ぜひとも長く勤めたいものだと思いながら、品質管理や製造管理や衛生管理や薬事関係の仕事を、地味にわくわくとこなしていた。ところが、本来ならば転勤などない部門や職種で働いている夫の勤務先(わりと大きめの会社)が、各種事情により統廃合や編成の見直しを行うことになり、夫の勤務地が大阪からけっこう離れた九州に変更になった。大阪から九州はあんまり近くない。少なくとも毎日通勤できる距離ではない。私はそのときの勤務先での仕事を続けたいのは富士山よりも高いレベルで相当山々ではあった。けれども、夫の転勤先である熊本に引っ越して、夫とともに同じ場所で生活することを選び、私はその小さな製薬会社を退職することに決めた。 しかし、管理薬剤師一名以外に薬剤師のいない状態の零細企業