残念ながら我々にはテレパシーは使えず、それ故意思の伝達を図る際には発信者は言語なりジェスチャーなりといった何らかのプロトコルに変換し、受信者はそれを解読しなければならない。 変換する際にも解読する際にも必ず漏れや過誤が出るから、真に正確な意思の伝達は不可能で、合意形成は実に困難である。 にもかかわらず、見ず知らずの他人との間で会話が成立するという奇跡のようなことが、何故日常的に起こり得るのか。 それは、テンプレートがあるからである。 テンプレートとは、既に形成された合意である。どういう表現をすると、相手がそれをどのように受け取るかという経験の集積である。 少し古いが「ウケる技術」という若干すべり気味のタイトルのこの本は、まさに他人を少し笑顔にさせるためのテンプレート集に他ならない。 誰かを笑わせたい。これはつまり、「親しみ」の意思表示だ。 日常会話の大部分は「親しみ」の意思表示のために費や