「西洋料理十二ヶ月」(大正一年)は上野精養軒の元料理長、田中勝蔵氏が仕事の合間に書き留めた料理日記を、世の細君たちのために抜粋したものだそうだ。料理日記という名の通り、365日分の本格的な西洋料理とそのレシピが紹介されている。日本の季節に合わせた旬の食材を使った料理も多く紹介されているし、デザートや焼き菓子類の紹介も豊富で面白い。 今回はこの本の四月二日の項から「管麺赤茄子被汁(マカロニトマトソース)」を作ってみた。 ただ茹でたマカロニにトマトソースをかけたものではない。マカロニを玉葱と丁子の入った湯で茹がいたら、たっぷりのチーズで作ったソースで和え、さらにトマトソースを添えたものである。この食べ方、現代ではありそうでない食べ方じゃなかろうか。 マカロニを和えるソースも生クリームとチーズのみで作る。この二つのまこと簡素なる乳製品を鍋に入れて温めていると、チーズがどろりととろけて何とも美味し