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柄谷行人 書籍の検索結果1 - 40 件 / 55件

  • 特別公開:坂本龍一さん3万字インタビュー前編「音楽の大きなテーマは、亡くなった者を悼むということ」|じんぶん堂

    記事:平凡社 坂本龍一さん(2013年5月撮影) 撮影:榎本佳嗣 書籍情報はこちら バッハの「マタイ受難曲」を聴くと、まさに「音楽に救われる」という感じがする ――東日本大震災と原発事故はだれしもにとってたいへんショッキングなできごとだったと思います。坂本さんはどうお過ごしでしたか。 坂本龍一:うーん……、直後はやっぱり、音楽を聴く気になれませんでした。 ――音楽家の方でも、音楽が聴けなくなるんですか。 坂本:ええ、(音楽家には)きっとそういう人は多いと思いますよ。それで、ずいぶんと経ってから……、ひと月ほど経ってからかな、やっと聴いてみようかなと思ったのは。 ――そのときに、慰めや励ましになったもの、あらためて立ちかえったものってありますか。 坂本:それは、やっぱりどうしてもバッハの「マタイ受難曲」です。僕のまわりの音楽好きでも同じようにいう人は多いけれど、やっぱり特別な曲ですね。「また

      特別公開:坂本龍一さん3万字インタビュー前編「音楽の大きなテーマは、亡くなった者を悼むということ」|じんぶん堂
    • お金を払ってコンテンツを消費すること - やしお

      このエントリは、『はてなブログ×codoc連携サービスのプロモーションのため、はてなからの依頼を受けて投稿しています』。 はてなブログで「ここから有料」やサブスクの機能が利用可能になるとのこと。依頼を受けておきながら、記事有料化にあまりピンときていない。その「ピンとこなさ」のことをあれこれ考えてたメモ。自分がインターネットやブログをどう思ってるんだ、みたいな話にどうしてもなってしまう。 お金を払うもの 普段自分が何にお金を払ってコンテンツを消費しているのかを改めて見てみれば、翻ってピンとこなさがどの辺にあるのか見えてくるかもしれない。 「お金を払ってコンテンツを消費する」のは「そのコンテンツがお金を払う価値がある」と自分が信じているからだと思えそうだけれど、必ずしもそれだけでもない。それにお金を払う習慣がある、払うのが当然だと思っているなど、金銭を支払うのに心理的な障壁や抵抗が少ないかどう

        お金を払ってコンテンツを消費すること - やしお
      • まず読みたい100冊

        I. <まず読みたい図書> 1)全学生向きの図書 著作名 著者・編者名 *シリーズ名な ど 出版社 西暦発行年 現在書店で 入手が可能 か(○または ×) 筑波大学図書館 での所蔵の有無、 ある場合は配架番 号 *その他の情報 紹介コメント(80字以内) 三四郎 夏目漱石 岩波文庫 岩波書店 ◯ 081-I95-G10-6 漱石が明治時代の大学生を描いた名作です。自分と比べて見るのも一 興。 地獄変・偸盗 芥川龍之介 新潮文庫 新潮社 ◯ 無 各作品は図書館所蔵 の他の版で読むこと ができる。 何百もの小説を残した芥川。「羅生門」だけじゃ物足りない。 万葉集と日本人:読み継がれる 千二百年の歴史 小川靖彦 角川選書 KADOKAWA 2014 〇 911.12-O24 古典と呼ばれる作品が現代までどのように読み継がれてきたのか、そして それは書物(モノ)としてどのように伝えられてきたのか。

        • 「僕は楽しいからそうする」。大学の外で研究する「在野研究者」たち

          「なにかおもしろいことが生まれる可能性はアカデミアのなかにもあるだろうけど、在野や世間にだって同じくらいある。その区別も今となってはどうでもいい。僕はどっちにも存在している。学びはどこでもできる。何度でも始めなおせばいい。僕は楽しいからそうする」 (『在野研究ビギナーズ』逆卷しとね 「第一二章 彷徨うコレクティブ」より) 「大学に属してませんけど、なにか?」 そんな帯文の本が話題です。「在野研究ビギナーズーー勝手にはじめる研究生活」(明石書店)。 研究者といえば、大学などの所属が前提。そんな「常識」から自由になった研究者たちは、自らを「在野研究者」と名乗り、それぞれのスタイルで研究に打ち込んでいます。 「読むこと、調べること、話すこと、書くこと、話し合うこと、これらは決して特別な資格が必要な行為ではない。自由にやればいい」 この本の編著者で、自身も在野研究者の荒木優太さんはそう言います。

            「僕は楽しいからそうする」。大学の外で研究する「在野研究者」たち
          • 人生を振り返ることについて:私の謎 柄谷行人回想録①|じんぶん堂

            記事:じんぶん堂企画室 批評家・思想家の柄谷行人さんは、多摩丘陵の自然のなかで暮らしている 書籍情報はこちら ――常々「忘れっぽい」「書いたら忘れる」と公言されている柄谷さんに、生まれてから現在までのこと、まだ書いていないことをお聞きしておきたいということで、連続インタビューをお願いしました。実は、『世界史の構造』(岩波書店)が2010年に刊行された後、朝日新聞から同じようなお話を頼んだときは、結局お断りになったと聞いています。 柄谷 最初はやってもいいかなと思ったんですよ。でも、回顧には関心がないし、まだこれからやろうとしているのにと、考えが変わった。『世界史の構造』を書いてすぐは、「これで終わり」という感じもあった。だけど、違ってたね(笑) ――まだ自分の仕事は終わらない、半生を振り返るのはまだ早いという気持ちになったわけですね。 柄谷 そうです。そういう意味では、今も難しい。だけど、

              人生を振り返ることについて:私の謎 柄谷行人回想録①|じんぶん堂
            • 「僕は楽しいからそうする」。大学の外で研究する「在野研究者」たち|Torus (トーラス)by ABEJA

              「なにかおもしろいことが生まれる可能性はアカデミアのなかにもあるだろうけど、在野や世間にだって同じくらいある。その区別も今となってはどうでもいい。僕はどっちにも存在している。学びはどこでもできる。何度でも始めなおせばいい。僕は楽しいからそうする」 (『在野研究ビギナーズ』逆卷しとね 「第一二章 彷徨うコレクティブ」より) 「大学に属してませんけど、なにか?」 そんな帯文の本が話題です。「在野研究ビギナーズーー勝手にはじめる研究生活」(明石書店)。 研究者といえば、大学などの所属が前提。そんな「常識」から自由になった研究者たちは、自らを「在野研究者」と名乗り、それぞれのスタイルで研究に打ち込んでいます。 「読むこと、調べること、話すこと、書くこと、話し合うこと、これらは決して特別な資格が必要な行為ではない。自由にやればいい」 この本の編著者で、自身も在野研究者の荒木優太さんはそう言います。

                「僕は楽しいからそうする」。大学の外で研究する「在野研究者」たち|Torus (トーラス)by ABEJA
              • 萱野稔人・御田寺圭『リベラリズムの終わり』トークイベントまとめ

                世界中で嫌われている(らしい)リベラリズムの限界と未来について、萱野稔人さんと御田寺圭さんが考察するというトークイベントがあったので聴いてきた。 トピックハイライト 顔で選ぶと差別だが、頭で選ぶのは差別ではない 男女平等が大事なら、激務で過労死寸前の職場に女性を送り込むの? と聞くと、「そんなことは議論していない」 SNSで偉そうな教授はCiNiiで検索される リベラリズムでは財の再配分ができない理由 ≒ 仲間意識の限界 ←ここがリベラリズムの限界 多様性を重視するなら「リベラルを拒絶する人」をリベラルは受け入れるべきだが、リベラルを拒絶する人が子どもをたくさん産んでいる(ex.フランスのイスラム教徒) 日本は一夫一婦制ではなく、非同期型一夫多妻制 リベラリストとは「リベラルを共有できる社会を守りたいだけの集団」になってしまう リベラリストへの信頼が失墜しても、リベラルを捨てないために今で

                  萱野稔人・御田寺圭『リベラリズムの終わり』トークイベントまとめ
                • 著者と読む『ニック・ランドと新反動主義』読書会|江永泉

                  闇の自己啓発会は、8月4日に都内某所で木澤佐登志『ニック・ランドと新反動主義』読書会を行いました。 トーマス・ラッポルト『ピーター・ティール 世界を手にした「反逆の起業家」の野望』と二本立ての予定でしたが、気がつけば、木澤さんの新書の内容で話がほぼ持ちきりに…。 今回は役所さんがおやすみだったのですが、編集者の不在もあってか話は暴走状態に。話の配分が前回以上にバランスのくるった分量になりましたが、ともかく読書会の模様をお伝えしていきます。 【注意】本記事では新海誠監督のアニメ映画『天気の子』(2019年7月)の内容、結末をとりあげています。※これまでの活動については、こちらをご覧ください![第3回は編集中] 第1回記事「品川の中心で不平等を語る 『不平等との闘い ルソーからピケティまで』読書会記録」(『ひでシスのめもちょ』2019年1月29日) http://hidesys.hatenab

                    著者と読む『ニック・ランドと新反動主義』読書会|江永泉
                  • 落選がもたらした中上健次との出会い:私の謎 柄谷行人回想録⑦|じんぶん堂

                    記事:じんぶん堂企画室 近所の公園を散策する柄谷行人さん=篠田英美撮影 書籍情報はこちら ――1967年3月に東大大学院の修士課程を修了して、最初は国学院大学の非常勤講師として英語を教えていたそうですね。 柄谷 当時は、英文科を出てまず英語の教師になるというのは、よくあるパターンでした。いきなり英文学を教えるというのはなかなか難しいから。実は最初に、ある東大の教授から、ある大学の専任講師の職があるということで、面接に行ったんだよ。ほぼ内定していたらしいんだけどね。週3日授業を持ってくれと言われたので、忙しいから週2日にしてほしい、といった。そしたら、その場でもう「さようなら」ということになってしまった。それを斡旋してくれた教授は、僕のことを怒っていたらしい。 ――メンツ丸つぶれだったんでしょうね。それは、指導教官だった大橋健三郎さんではないんですか? 柄谷 別の人です。大橋さんは僕のことが

                      落選がもたらした中上健次との出会い:私の謎 柄谷行人回想録⑦|じんぶん堂
                    • 第2回 制約と諦めのススメ - 苦しみの執筆論 千葉雅也×山内朋樹×読書猿×瀬下翔太:アウトライナー座談会 | ジセダイ

                      思考を階層的に整理することによって、「書くこと」と「考えること」の強力な武器となるツール、「アウトライナー」。普段からアウトライナーを利用して執筆をおこなっている、哲学者・千葉雅也さん、美学者・山内朋樹さん、読書家・読書猿さん、編集者/ディレクター・瀬下翔太さんの4名に集まっていただき、執筆論や思考術などなど、縦横無尽に議論を交わしていただきました。(全3回) この対談が書籍化されました! ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー 『ライティングの哲学 書けない悩みのための執筆論』 著/千葉雅也、山内朋樹、読書猿、瀬下翔太 カバー装画/あらゐけいいち 定価:1100円(税別) 
レーベル:星海社新書 ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー 文章は飛躍していい! 千葉 Twitterの140字って、本当にちょうどいいですよね。絶妙な長さだと思います。 瀬下 連投もおもし

                        第2回 制約と諦めのススメ - 苦しみの執筆論 千葉雅也×山内朋樹×読書猿×瀬下翔太:アウトライナー座談会 | ジセダイ
                      • 大衆と群衆の違いと類似の8つの特徴一応まとめ 〜具体的な人間ではなく社会的現象かつ概念であり、集団であることから個々人へと影響し個人を失わせる - 日々是〆〆吟味

                        大衆と群衆の違いはどのあたりにあるのだろうか 〜似てるようで違うような… 1.具体的な人間を指すものではない。 【柄谷行人『探究』】 2.社会的な現象である。 【デュルケーム『社会学的方法の基準』】 3.社会的な現象を規定する概念である。 【ドゥルーズ/ガタリ『哲学とは何か』】 4.集団的な人間存在の在り方によって現れてくる。 【ホーマンズ『ヒューマン・グループ』】 5.集団から個々人へと影響を与える。 【ミード『精神・自我・社会』】 6.群衆は我を忘れさせ、相互感染し暗示にかかった状態になる。 【ル・ボン『群衆心理』】 7.大衆は人間類型的であり、経済システムの変化により都市へと大移動したことにより現れた。 【オルテガ『大衆の反逆』】 【神島二郎『近代日本の精神構造』】 8.大衆も群衆も人間精神を退化させる。 【レヴィ・ブリュル『未開社会の思惟』】 前回のお話 https://www.w

                        • 大江健三郎詳細年譜 - jun-jun1965の日記

                          1850年 曾祖父・八三郎生まれる。 1855年(安政2)内ノ子騒動 1866年(慶應2)奥福騒動 1894年(明治27)父・好太郎生まれる。祖母はフデ。 1902年(明治35)母・小石生まれる。 1914年(大正3)20歳の父と12歳の母が結婚。 1919年(大正8)祖父この頃死ぬ。数え五十歳。 1923年( 12) 姉・一生まれる。 1924年4月24日、好太郎、明智新六らと大瀬革進会を結成、総選挙で窪田文三を応援と決定する。(史料愛媛労働運動史4巻、124p、愛媛新報) 1929年(昭和4)長兄・昭太郎生まれる。 ? 次兄・清信生まれる。 1933年、姉・重子が生まれる。 5月15日、伊丹十三(池内義弘)生まれる。 1935年1月31日 愛媛県喜多郡大瀬村に生まれる。父は大江好太郎、母は小石。長兄・昭太郎(燃料商、歌人)、次兄・清信。姉二人、弟・征四郎、妹一人。父は製紙原料商で、ミツ

                            大江健三郎詳細年譜 - jun-jun1965の日記
                          • 【時評】あいちトリエンナーレ「表現の不自由展・その後」の成功を祝して - 批評集団「大失敗」

                            森林の木々/そのような個性体/森林の日々/そのような事業体/考えたりはせずに/編み出しはせずに/ラジオのような/体になって/I LOVE YOU(P-MODEL - "PERSONAL PULSE") 写真は機械で作られる近代的な表現であるにもかかわらず、逆説的なことに、写真は絵画、彫刻などよりももっと呪物化しやすい表現である(多木浩二『天皇の肖像』*1) 近代の「思想」は常に「美学」の前に敗北してきたと言えます。そして、日本においても、それは例外ではない(絓秀実『「超」言葉狩り宣言』*2) 個人的なことから述べさせてもらえば、電話をかけたり、かけられたりすることほど面倒くさいことはない。とりわけ事務的なものともなればその面倒くささは格が違ってくる。あの事務的なやりとりの質感は一個の恐怖でさえある。 たとえば自分が買った商品に不具合があったとしても、よっぽど高価なものでもない限り、面倒くさ

                              【時評】あいちトリエンナーレ「表現の不自由展・その後」の成功を祝して - 批評集団「大失敗」
                            • 蓮實重彦が大江健三郎について書いた文章を読んでふざけんじゃねぇと思ったので、蓮實の原罪を断罪することにした

                              東京創元社に対する告発文の更新が滞っていますが、純粋に私自身が忙しかったというだけのことであって、それ以外の理由はありません。全体として長篇小説に相当する程度の分量にはなるため、引き続き少しずつ更新を続けていきます。 ただ、今回は、どうしてもこれだけは書いておかなければならないということがあったため、そちらの方を優先してアップします。……とはいえ、大きい文脈の中では、日本の出版業界・文芸業界の腐敗という点で関連してくることでもあります。 少し前のことだが、蓮實重彦が大江健三郎について書いた文章を読み、そのあまりにも大江に対して不当である悪辣な仕打ちについて、心の底から憤激するということがあった。 一応断っておくと、問題の文章は、大江が亡くなる以前に執筆され、公表されたものだ。ただし、大江が亡くなった後に公表された蓮實による追悼文を一読しても同じ論旨があったため、「蓮實重彦による大江健三郎に

                                蓮實重彦が大江健三郎について書いた文章を読んでふざけんじゃねぇと思ったので、蓮實の原罪を断罪することにした
                              • 「文學界」編集長・丹羽健介が語る、実験場としての雑誌 「文芸誌は絶えず変わっていく文学の最前線」

                                文藝春秋が発行する純文学の文芸誌「文學界」は、2021年2月号で創刊一〇〇〇号を迎えた。後に芥川賞を受賞した又吉直樹『火花』を掲載した2015年2月号が初の増刷となって以後、最近では「JAZZ×文学」特集の2020年11月号、哲学者の國分功一郎とお笑い芸人の若林正恭(オードリー)の対談を掲載した最新の2021年3月号などが増刷となるなど、たびたび注目を浴びている。また、名物コーナーといえる新人小説月評は、率直な寸評が書かれることで知られ、最近も話題になっている。2019年7月より編集長を務める丹羽健介氏に同誌について聞いた。(2月10日収録/円堂都司昭) “あらゆるものの中に文学がある”という教え ――文藝春秋に入社されたのは1994年。最初から出版社志望だったんですか。 丹羽:漠然とマスコミ志望でしたが、本が一番好きだったので。音楽も好きでしたからレコード会社も考えなくはなかったのですが

                                  「文學界」編集長・丹羽健介が語る、実験場としての雑誌 「文芸誌は絶えず変わっていく文学の最前線」
                                • 柄谷行人さん『力と交換様式』インタビュー 絶望の先にある「希望」|じんぶん堂

                                  記事:じんぶん堂企画室 柄谷行人さん 書籍情報はこちら 「これ以上ないところまで書いた」 柄谷さんは、四半世紀にわたって、〈交換〉から社会の歴史を見る仕事に取り組んできた。今作は、その〈交換様式〉がもたらす〈観念的な力〉に着目した到達点といえる一冊だ。 「私は、これ以上ないというところまで書きました。だから、今後どうすればいいんですか、なんてことを聞かないでもらいたい(笑)」 その仕事に取りかかったきっかけの一つは1991年のソビエト連邦崩壊だった。 「やはり、すごく大きな事件だったんですね。このとき、〈歴史の終焉〉ということが大々的に言われましたが、私は反対でした。なぜなら、何も終わっていなかったからです」 当時、米国の政治学者フランシス・フクヤマが、イデオロギーの対立は自由・民主主義の勝利に終わったという仮説を示して注目を集めた。根本的な革命はもう起こらないとも言われた。しかし、柄谷さ

                                    柄谷行人さん『力と交換様式』インタビュー 絶望の先にある「希望」|じんぶん堂
                                  • 作家の写真を読む② - 昼の軍隊

                                    以前、ブログで「作家の写真を読む」という記事を書いたことがある。作家を被写体にした写真集の紹介だ。今回はそれの続きを書こうと思う。俺がどういう写真を好んでいるかということについては、前回の記事を参考にしてほしい。 相田昭 『作家の周辺』 相田昭は著書に付されたプロフィールによれば、 1946年、長崎生まれ。法政大学在学中はアラスカ・キングピーク峰に遠征するなどアルピニストとして活躍。卒業後もTBS報道局でアルバイトをしながら登山を続け、山岳写真を手がけるようになる。1974年、写真家として独立。雑誌の仕事で作家や画家のポートレイトを撮り始め、人物写真に傾倒する。1983年、小川国夫氏の著作『彼の故郷』に感銘をうけ、小川氏を被写体に写真展「彼の故郷」を開く。以来、今日まで数多くの作家や詩人、画家などと交流、その人間像に迫る写真を撮り続けている。 本書には相田による、作家との出会いについて書い

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                                    • 辞書を丸ごと読んだら楽しかった『MD現代文・小論文』

                                      きっかけは『独学大全』だ。 語彙力を底上げするならこれだぞーとお薦めされたのと、どうせなら丸ごと読んでやれと思い、93日かけて踏破した。継続は力というのは本当で、読むことそのものより、続けることに注力した。 この記事の前半は、その続け方のコツを紹介し、後半では、『MD現代文・小論文』の魅力と問題点について語ろう。 まず、700ページを超える辞書をどうやって読んだか? もちろん、一日に数ページずつ読んでいくことを積み重ねていけばできる。700ページをノルマで割れば、何日かかるか、計算上は予測できる。 だが、それってかなり大変だ。単調だし、飽きるかも。「ノルマ」なんて決めて、それを守れるのか? 三日坊主にならないか? 「そもそも何でやってるんだろう?」 と我に返る可能性だってある。 習慣を作る だから、毎日読む習慣を作った。 具体的には、読むタイミングを決めた。PCを立ち上げる前、昼食後、寝る

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                                      • リベラルからラジカルへ──コロナ時代に政治的自由は可能なのか(1)|外山恒一+東浩紀

                                        2020年5月25日、コロナウィルスの流行にともなう緊急事態宣言が全国で解除されました。東京では街にひとの姿が戻り「自粛明け」ムードが強くなる一方、本日6月2日には都内で30人を超える新たな感染者が確認され、小池百合子都知事による「東京アラート」の発動が検討されています。 そうした日々流動する情勢のなかで、人々の自由はどのように担保されるのでしょうか。ゲンロンカフェでは5月10日、革命家の外山恒一氏をお招きし、東浩紀との対談を放送しました。ほとんど同世代でありながら、これまで「パラレルワールド」を生きるように交わらなかったという外山氏と東。そのふたりの対談が実現したのは、コロナ禍における監視社会の進行に対して、共通して強い危機感を抱いていたからでした。なぜ「リベラル」は、自由をみずから放棄する行動を取ってしまったのか。そしてコロナ禍以降、言論人のあり方はどのように変わるべきなのか。人間にと

                                          リベラルからラジカルへ──コロナ時代に政治的自由は可能なのか(1)|外山恒一+東浩紀
                                        • 【推薦書リスト】世界史独学のための100冊|みんなの世界史

                                          世界史を独学するにはどうすればいいか? ネオ高等遊民さん(note@kotoyumin)の記事を拝見して、「みんなの世界史」でもシリーズ本や全集を含め、100冊ほどの書籍をピックアップしてみることにしました。「なんとなくでOK」「受験のため」というのではなくて、ゆくゆくは専門的な書籍も読んでみたいというまじめな方向けの、まじめな選書でありつつ、高校生にも薦めることができそうな本を中心に選んでいます。 *** 選書の方針 世界史のカバーする範囲は、とてつもなく広い。個々のプロパーは別として、初学者向けの体系的な概説書を挙げようとしても、経済学や哲学にあるような、誰しもが挙げるような「定番」があるわけでもない。 では、どんな書籍を選びとっていくべきか。 ひとまず、注目したいのは「発行年」だ。 19世紀以降、歴史学者たちがとりくんできたのは、どうすれば過去の世界をできるかぎり正確にとらえることが

                                            【推薦書リスト】世界史独学のための100冊|みんなの世界史
                                          • ド・マン、デリダと語り合った日々:私の謎 柄谷行人回想録⑪|じんぶん堂

                                            記事:じんぶん堂企画室 ポール・ド・マン(左端)と柄谷さん(右)。中央は、作家の冥王まさ子さん。イェール大学近くのカフェの前で。「78年だと思う。同席していたデリダが撮影したんじゃないか」と柄谷さん=パトリシア・ド・マンさん提供 書籍情報はこちら ――ポール・ド・マン(1919~83)との関わりについて、もう少し聞かせてください。ド・マンは、フランスの哲学者ジャック・デリダ(1930~2004)の“脱構築”を文学批評に展開してイェール学派の中心人物としてアメリカの文学界で大きな影響力を持つようになりますが、柄谷さんが渡米した1975年時点の実感としては、どうでしたか。 柄谷 まだイェールでも知る人ぞ知る存在ですよ。アメリカ国内で知られるようになっていくのは、80年前後じゃないですかね。僕は名前も知らなかった。だから、ド・マンに認められてうれしかったというのも、彼が有名だからとか何とかいうよ

                                              ド・マン、デリダと語り合った日々:私の謎 柄谷行人回想録⑪|じんぶん堂
                                            • 「奇妙な」子ども時代 左翼だった父が無言で託したものと繰り返し読んだ本:私の謎 柄谷行人回想録②|じんぶん堂

                                              記事:じんぶん堂企画室 幼少期の柄谷行人さん(柄谷行人さん提供) 書籍情報はこちら ――柄谷さんは1941年8月6日、兵庫県尼崎市のお生まれですね。 柄谷 当時は、川辺郡園田村ですよ。そして、その中の森という地域です。代々の地主で農家ですね。先祖は江戸時代に菜の花油で材をなした豪商だったらしい。いまも残っている実家の建物は築150年くらい。蔵はもっと古い。代々「善右衛門」と名乗っていて、近所では「ゼオンさん」と呼ばれていましたね。祖父は善治郎、父は善之祐。それで僕は善男(よしお)。20代でペンネームとして行人を名乗ったから、もう書類上の名前だけだけどね。 森地区には、園田村全体の村長もやっていた中村という家と、柄谷の家と二つが古くからあった。その中村という人が中心になって、僕のじいさんや地元の人を集めて、女学校を作ったんですよ。「園田学園」です。僕の姉なんかは、戦後にそこに行っていました。

                                                「奇妙な」子ども時代 左翼だった父が無言で託したものと繰り返し読んだ本:私の謎 柄谷行人回想録②|じんぶん堂
                                              • 高校までは夢のなかにいた:私の謎 柄谷行人回想録③|じんぶん堂

                                                記事:じんぶん堂企画室 高校時代の柄谷行人さん(本人提供) 書籍情報はこちら ――1954年4月、関西有数の進学校として知られる私立甲陽学院中学(兵庫県西宮市)に入学します。中学受験をされたきっかけは何だったんでしょうか。 柄谷 当時は、甲陽も「関西有数の進学校」ではなかったと思いますよ。灘もそうでしょう。少なくとも僕は、その存在も知らなかった。ところが、小学校のクラス担任の先生に、「灘より甲陽のほうがいいよ」と勧められたんです。どっちも知らないし、別に行きたいと思わなかった。その先生は、旧制の甲陽中学の野球部出身で、以来ずっと少年野球の指導をやっていたから、それで甲陽の野球部に行くことを勧めたんだろうな、くらいに思っていました。だから別に進学校だとも思わず、言われるがままに、何となく受験することになった。 ――ご自分の意志とは別のところにきっかけがあったんですね。妻の凜さんからは、柄谷さ

                                                  高校までは夢のなかにいた:私の謎 柄谷行人回想録③|じんぶん堂
                                                • 多次元性新生児──古谷利裕の作品がゴミまたは糞であることの可能性|永瀬恭一 | 週末批評

                                                  文:永瀬恭一 ゴミの居場所 わけのわからないものがある。少し見て、とりあえず異質であることは感じるのだが、それは、異質ではあるけれども美しい、のではない。とにかく異質なのであってその異質さはどこにも結びついていない。 素材はうすっぺらい紙で、切り口はまったく不器用に見え、技術的にとくに洗練されているとも思えない。しかしやけに入り組んでいて、一目では骨格をつかめない。折り紙のように、現実にある鶴や兜を模していたりもしない。言ってみれば抽象なのだけれども、では純粋に形式的な論理の展開だけでできているとも思えない。ここにはなにか、生理的で、感覚をざわつかせる、滑らかでないものがある。 わからない。なんどか見直してみて、繰り返し言うしかない。だけれども、僕はこの「わからなさ」に、たぶん、取り憑かれてしまっている。 わけのわからないもの、異質なものは、どこでどのように居場所を見つけられるのだろうか。

                                                    多次元性新生児──古谷利裕の作品がゴミまたは糞であることの可能性|永瀬恭一 | 週末批評
                                                  • 【批評の座標 第6回】東浩紀の批評的アクティヴィズムについて(森脇透青)|人文書院

                                                    批評のみならず書籍出版や人文系のイベントスペースの運営等を通じて、ゼロ年代以降の批評界を牽引し続けている東浩紀。東が「再発明」した「ポスト・モダン」「誤配」等の概念を文脈に即して読解し直し、その活動全体から東の批評的視座を見いだします。執筆者は気鋭のデリダ研究者であり、批評誌『近代体操』を主宰・運営する森脇透青です。 批評の座標 ――批評の地勢図を引き直す 東浩紀の批評的アクティヴィズムについて森脇透青 1. 終わってくれないポスト・モダン 東浩紀(1971-)は批評家にして活動家である。このテーゼは揶揄でもアイロニーでもない。私たちは本稿を通じて、東の「批評活動」の系譜を記し、このテーゼを証明することになるだろう。 東浩紀は一般に「ポスト・モダン」の擁護者として理解されている。それも相対主義者の左翼嫌い、運動嫌いとして理解されている。しかし、東の活動について記述するうえでまず次の点を確認

                                                      【批評の座標 第6回】東浩紀の批評的アクティヴィズムについて(森脇透青)|人文書院
                                                    • 文学は永遠だと思っていた新人批評家時代:私の謎 柄谷行人回想録⑨|じんぶん堂

                                                      記事:じんぶん堂企画室 批評家として活動を始めた頃の柄谷さん=本人提供 書籍情報はこちら ――1969年6月号の「群像」(講談社)に「〈意識〉と〈自然〉――漱石試論」が群像新人賞受賞作として掲載され、本格的に文芸批評家としての活動に入りますよね。ここからの数年間はいわゆる文芸批評をたくさん書かれています。1972年の第1評論集『畏怖する人間』には、「漱石試論」をはじめ1969年から1972年に発表された評論が収録されていますが、年譜によると受賞後最初に発表したのは、「群像」69年11月号の「江藤淳論」でした。江藤さんはどんな存在でしたか? 柄谷 やはり、批評家としていい仕事をしている先行者、という感じですね。僕はそれ以前に五月祭賞に応募した「思想はいかに可能か」で、吉本隆明、三島由紀夫、江藤淳の3人を、思想の基本的なあり方として示したんだけど、それくらい大きな存在として捉えていたのは確かで

                                                        文学は永遠だと思っていた新人批評家時代:私の謎 柄谷行人回想録⑨|じんぶん堂
                                                      • 次に読みたい100冊

                                                        II. <次に読みたい図書> 1)全学生向きの図書 著作名 著者・編者名 *シリーズ名な ど 出版社 西暦発行 年 現在書店で 入手が可能 か(○または ×) 筑波大学図書 館での所蔵の 有無、ある場合 は配架番号 *その他の情報 紹介コメント(80字以内) 日本近代短篇小説選(全6 巻) 紅野敏郎ほか(編) 岩波文庫 岩波書店 2012 ○ 081-I95- G191-1〜6 明治編1〜昭和編3までの全6巻。さまざまな作家の短篇を所収。時代の変化と 文学の関係を味わってみてください。 万葉集の発明:国民国家と 文化装置としての古典(新 装版) 品田悦一 新曜社 2019 〇 911.12-Sh57 古典がもつ権威性はいかに生まれるのか。文学に限らず、伝統がいかに創られ るかという問題を考えるのにも好適な一冊。図書館には旧版があるが、買うなら 新装版がおすすめ。 葬式仏教 圭室諦成 大法輪

                                                        • 9割の人が知らない「学び続けられる人」と「挫折する人」を分ける1%の決定的な差

                                                          ダイヤモンド社書籍編集局が、話題の1冊を取り上げ、書き手・作り手の思いや、本のメッセージなどを深掘りして紹介する。 だから、この本。 ダイヤモンド社の話題の1冊を取り上げ、書き手・作り手の思いや執筆動機、読んでほしい理由を深掘りするインタビュー連載。著者・訳者・デザイナー・編集者など、本に関わるさまざまな人たちの「だから、この本を書きました」「作りました」をお届けします。連載の詳細・記事一覧はこちら。 バックナンバー一覧 『独学大全――絶対に「学ぶこと」をあきらめたくない人のための55の技法』。この税込3000円超、788ページの分厚い1冊が、今爆発的に売れている。発売わずか1ヵ月半で7万部を突破し、書店店頭やネット書店でも売り切れが続出。ただ読むだけでなく、多くの人がSNSで「こんな風に学んでいます」「実践しています」と報告する、稀有な本だ。 興味深いのは、本書の著者が学者でも、ビジネス

                                                            9割の人が知らない「学び続けられる人」と「挫折する人」を分ける1%の決定的な差
                                                          • 今年1年間の『労働新聞』書評たち - hamachanブログ(EU労働法政策雑記帳)

                                                            今年も最後の月になりました。この1年間、『労働新聞』に月1回連載してきた書評も12回分溜まりましたので、例によってまとめておきます。 グレゴワール・シャマユー『統治不能社会』 『労働新聞』に月イチで連載している書評コラムですが、今年からまたタイトルが変わり、「書方箋 この本、効キマス」となりました。 その第1回目に私が取り上げたのは、グレゴワール・シャマユー『統治不能社会』(明石書店 )です。 https://www.rodo.co.jp/column/143561/ 半世紀前の1975年に、日米欧三極委員会は『民主主義の統治能力』(サイマル出版会)という報告書を刊行した。ガバナビリティとは統治のしやすさ、裏返せばしにくさ(アンガバナビリティ)が問題だった。何しろ、企業の中では労働者たちがまるでいうことを聞かないし、企業の外からは環境や人権問題の市民運動家たちがこれでもかと責め立ててくる。

                                                              今年1年間の『労働新聞』書評たち - hamachanブログ(EU労働法政策雑記帳)
                                                            • 山形浩生×井上智洋 書籍を通しての資本主義入門!? 日本の経済社会を考えるためのヒント|政治・経済|中央公論.jp

                                                              経済学についての解説や翻訳でも活躍する山形浩生氏と、人工知能からベーシック・インカムまで幅広く論じる井上智洋氏による対談。経済書を足がかりとし、現代の資本主義について議論が展開されています。 (『中央公論』2022年4月号より抜粋) 経済学への入り口 ――お二人とも元々は経済学専攻ではなかったそうですね。 井上 大学では理系寄りの専攻で、卒業してシステムエンジニアになりましたが、技術者としてのレベルはきわめて低かったと思います。転職しようにも、デフレ不況が厳しい時期でいい仕事が見つからない。しだいに、デフレの解消すらできない経済学者たちに憤りを感じるようになりまして(笑)、経済学の教科書を読み返したら、記述と現実とに齟齬もあるような気がしました。これは経済のためにできることがあるのではないかと考えて、仕事をパッと辞め、大学院の経済学研究科に入っちゃったんですね。友人たちに「頭がおかしくなっ

                                                                山形浩生×井上智洋 書籍を通しての資本主義入門!? 日本の経済社会を考えるためのヒント|政治・経済|中央公論.jp
                                                              • 【批評の座標 第3回】最底人を生きる――80年代の浅田彰について(西村紗知)|人文書院

                                                                第3回で取り上げるのは、『構造と力』『逃走論』等をはじめ、フランス現代思想の輸入とともにポップな批評でかつての若者たちのアイドルとなった浅田彰。「椎名林檎における母性の問題」で2021年にすばるクリティーク賞を受賞、その後も音楽やポップカルチャーをはじめ、幅広い分野で精緻な批評活動を続ける西村紗知が、80年代を風靡した浅田を論じます。 批評の座標 ――批評の地勢図を引き直す 最底人を生きる(80年代の浅田彰について)西村紗知 1. 日本における批判理論研究の先駆的存在である清水多吉がその昔、「ニュー・アカデミズムの人びと」[1]というタイトルで、浅田彰、栗本慎一郎、中沢新一の三人の存在に触れて、その当時の新しい知識人のモードについて考えるため、といっても社会科学のプレゼンス低下を嘆く論調が大半を占めるかたちで記事を書いていた。浅田などが責任編集を務めていた人文系雑誌『G・S』の売れ行きが好

                                                                  【批評の座標 第3回】最底人を生きる――80年代の浅田彰について(西村紗知)|人文書院
                                                                • 試験勉強でつかんだマルクスの「本領」:私の謎 柄谷行人回想録⑤|じんぶん堂

                                                                  記事:じんぶん堂企画室 マルクス『資本論』の初版本(1867年) 書籍情報はこちら ――前回は東大駒場寮時代のお話を伺いました。午前10時まで寝ていたということは、寮では先輩たちと夜中まで議論するような生活ですか? 柄谷 いや、本を読んでいた。誰かと一緒ではない。ひとりですよ。一番よく読んでいたのは、マルクス経済学者の宇野弘蔵です。ブント系は宇野を読むものだと聞いてたからだと思うけど、『経済原論』など、入学して早速買いましたね。マルクス主義について通俗的には知っていたけど、初めてマルクスについて考えた。マルクスの本領は『資本論』なんだと、宇野を通じて知った。 経済学者の宇野弘蔵 ――62年、経済学部に進みます。宇野弘蔵は58年に東大を退官していますが、当時は弟子の鈴木鴻一郎が教えていますね。宇野派の経済学を学ぶのが目的ですか? 柄谷 勉強しないでいいからです(笑)。当時、文科一類からは基本

                                                                    試験勉強でつかんだマルクスの「本領」:私の謎 柄谷行人回想録⑤|じんぶん堂
                                                                  • 初めての論考、読み直して再発見した自分:私の謎 柄谷行人回想録⑥|じんぶん堂

                                                                    記事:じんぶん堂企画室 柄谷行人さん 撮影:篠田英美 書籍情報はこちら ――1965年、東京大学経済学部を卒業し、東京大学大学院人文科学研究科英文学専攻課程へ。フォークナーの研究や翻訳で知られる大橋健三郎さんのゼミに入ります。 柄谷 学部のときに大橋さんの授業を聴講していて、フォークナーも好きだったからね。文学部に入り直すのは面倒だったから、1年留年してから、大学院に進むことにしました。英文科に入ったとはいえ、僕の専攻は実はアメリカ文学なんですよ。当時、アメリカ文学を専攻する人はまだ少なかった。大学院生では、僕1人だけだったんだから。 アメリカ文学者の大橋健三郎 ――原真佐子さん(1939~1995)と結婚したのもこの頃ですね。翻訳家としても活動し、後に「冥王まさ子」の名で文芸賞を受賞する作家でもあります。 柄谷 大学院で知り合ってすぐに結婚しました。彼女は、年が二つ上、学年で言うと一つ上

                                                                      初めての論考、読み直して再発見した自分:私の謎 柄谷行人回想録⑥|じんぶん堂
                                                                    • 「小説トリッパー」編集長・池谷真吾が語る、文芸誌の領域 「境界線はなくなり〈すべて〉が小説になった」

                                                                      小説雑誌は一般的に純文学系とエンタテインメント系に大別できるが、季刊「小説トリッパー」は、両方を扱っている点に独自色がある。また、朝日新聞出版という大手新聞社系の版元からの発行なのも特徴だ。昨年は今村夏子『むらさきのスカートの女』が同誌掲載作で初の芥川賞を受賞し、2020年夏季号で創刊25周年を迎えた。 池谷真吾編集長に「小説トリッパー」の歩みとともに、前歴である角川書店(現KADOKAWAグループ)での経験、吉田修一『悪人』、角田光代『坂の途中の家』など担当した書籍についても語ってもらい、1990年代からの文芸の流れをふり返った。(10月21日取材/円堂都司昭) 「野性時代」のアルバイトからキャリアがスタート ――この世界にどういう風に足を踏み入れたんですか。 池谷:就職活動に失敗しまして、どこからも採用されませんでした。1992年のことです。年が明けて、もう大学も卒業という時に、友人が

                                                                        「小説トリッパー」編集長・池谷真吾が語る、文芸誌の領域 「境界線はなくなり〈すべて〉が小説になった」
                                                                      • 文芸誌「群像」のオリジナル仮名書体について山田和寛さんにインタビュー|良太郎

                                                                        シリーズ「CSS Nite Shift13 補遺」#1 昨年2019年12月に開催されたセミナーイベント「CSS Nite Shift13」の「フォント」セッション(*1)にコンテンツで協力しました。 このnote「補遺」は連動企画として、セッションでは時間の兼ね合いで割愛したものの、ぜひ紹介したい2019年のタイポグラフィの題材を掘り下げ、フォローアップとして紹介していきます。 第1回は、2019年12月7日発売の1月号でリニューアルした文芸誌「群像」(*2)のための本文用オリジナル仮名書体「NPMぐんぞう」を制作された、装丁家で書体デザイナーの山田和寛さんにお話を伺いました。 ――――――――――――――――――― —— 一般に雑誌や出版物のための和文オリジナル書体は過去にも事例(*3)がありましたが、「文芸誌のためのオリジナル書体」という稀有なフォントを制作された経緯を教えてください

                                                                          文芸誌「群像」のオリジナル仮名書体について山田和寛さんにインタビュー|良太郎
                                                                        • 学生運動と年上の友人たち:私の謎 柄谷行人回想録④|じんぶん堂

                                                                          記事:じんぶん堂企画室 1960年6月、国会前を埋め尽くすデモ隊 書籍情報はこちら ――1960年、私立甲陽学院高校を卒業し、東京大学文科一類に入学します。岸信介内閣による日米安全保障条約改定に反対の波が広がっていた60年安保闘争のさなかですね。 柄谷 受験前の59年秋、国会へのデモに参加した学生運動の幹部に逮捕状が出て、彼らが東大駒場に籠城するという事件がありました。それが連日大々的に報道された。その後、デモが広がり、入試期間中も続いていました。僕は入学式よりもそのことが気になっていたから、入学式より前に、東大生のデモに参加した。国会前です。4月7日くらいだったかな。そこで、西部邁の演説を聞いた。結局、入学式には行かなかった。 《5月19日に政府が強行採決すると、26日のデモには17万人が参加。6月15日には全学連が国会に入り、機動隊の強制排除で多数の重軽傷者、逮捕者が出た。このときに東

                                                                            学生運動と年上の友人たち:私の謎 柄谷行人回想録④|じんぶん堂
                                                                          • 読んだ後に、世界の見え方が変わる。ミステリーに通じる人文書の醍醐味:紀伊國屋書店新宿本店|じんぶん堂

                                                                            記事:じんぶん堂企画室 紀伊國屋書店新宿本店の人文書フロア担当、東二町順也さん 書籍情報はこちら 一日の乗降客数約359万人(2018年)、ギネス記録にも認定された東京・新宿駅。東口から徒歩3分のところに新宿本店はある。地下1階から7階までの本館と別館を擁する大型書店は、1927年の創業以来、街の発展とともに情報と文化の発信地として幅広い世代に親しまれてきた。 その人文書フロアで2010年、新宿本店の書店員が立ち上げた「紀伊國屋じんぶん大賞」は、10年の月日をかけて、出版社や著者のほか一般読者を巻き込む一大プロジェクトに成長している。今回は人文書フロアを担当する東二町(ひがしにちょう)順也さんに、人生を変えた読書の原体験や、人文書を読む意義、そしていまこそ読みたい人文書について聞いた。 ミステリーに魅せられた中学時代 紀伊國屋書店新宿本店の人文書フロア担当、東二町順也さん 東二町さんに、小

                                                                              読んだ後に、世界の見え方が変わる。ミステリーに通じる人文書の醍醐味:紀伊國屋書店新宿本店|じんぶん堂
                                                                            • 暇空は気づかなかったけど堀口英利ロジックなら今残っている堀口のツィートは殺害予告だよ

                                                                              殺害予告ですね、堀口ロジックだと 堀口 英利 | Horiguchi Hidetoshi @Hidetoshi_H_ 今夜は友人と赤坂で飲んでいます。 1軒目は赤坂7丁目にあるイタリアン。満足できるメニューの数々。 ちょうどカプレーゼとマルゲリータを食べたい気分でした。 この文章は完全におかしい。 満足できるメニューなどと言わない。 堀口に友達がいるはずがない。 次に気分でしたというのも一切文章が繋がらない。 この文章、日本語を全く知らないかAIが書いてないか?というくらいありえない。 なので暇空を殺害する計画を練ったということを匂わせているとしか言いようがない堀口英利ロジックならそうでしょ。失当でも何でもないし、説明も挙証責任も全て堀口英利にある。銃刀法違反になるレベルのナイフを所持していたけど、正当理由ないよね? 堀口 英利 | Horiguchi Hidetoshi @Hidetos

                                                                                暇空は気づかなかったけど堀口英利ロジックなら今残っている堀口のツィートは殺害予告だよ
                                                                              • 並行世界への招待:現代日本文学の一断面|第1章 柄谷行人『探究Ⅱ』──この・・現実世界への疑念|加藤夢三 | 未草

                                                                                本連載が書籍になりました。連載の内容に大幅な加筆をしての書籍化です。ぜひご覧ください。 並行世界の存在論 現代日本文学への招待 加藤夢三著 ISBN 978-4-8234-1181-6 2022年12月刊行 https://www.hituzi.co.jp/hituzibooks/ISBN978-4-8234-1181-6.htm ただ端的にある並行世界 冒頭から奇妙なことを言うようですが、僕は中学生か高校生くらいの頃から、並行世界というものが実際に存在するということを強く確信していました。別に、たとえば僕に瓜ふたつの人間がそこで生活しているというような、ある特定の具体的なドラマが仕立て上げられた時空間のことを想像していたわけではないのですが、とにかく世界がこのひとつだけであるとは単純にどうしても信じられなかったのです。僕にとって、それは科学的な証明とも哲学的な思弁とも一切関係なく、ただ端

                                                                                  並行世界への招待:現代日本文学の一断面|第1章 柄谷行人『探究Ⅱ』──この・・現実世界への疑念|加藤夢三 | 未草
                                                                                • 【批評の座標 第2回】青春と悪罵――吉本隆明入門(小峰ひずみ)|人文書院

                                                                                  『共同幻想論』『言語にとって美とはなにか』等で知られ、戦後最大の思想家と呼ばれる吉本隆明。日本の大衆社会を思考した吉本の著作は、いまどう読むことができるのか。政治を語る言葉に切り込んだ著書『平成転向論』をはじめ、ポレミックな批評で話題の小峰ひずみが、その意義をあらためて問います。 批評の座標 ――批評の地勢図を引き直す 青春と悪罵――吉本隆明入門小峰ひずみ ある世代の青春そのものであった人間がいる[1]。吉本隆明(1924-2012)だ。ある詩人は吉本を論じるにあたって、次のように述べている。 「吉本、すなわち私たちの世代の青春」 吉本に凝縮された青春とは、誰の青春なのか。戦中派だ。戦中派? いつの人? と思われる方も多いだろう。ちょうどいいアニメ映画がある。大ヒットアニメ映画・『この世界の片隅に』だ。この映画の主人公・すずさんこそ、戦中派を生きた人間だ。設定的には、ちょうど吉本隆明と一歳

                                                                                    【批評の座標 第2回】青春と悪罵――吉本隆明入門(小峰ひずみ)|人文書院