今の日本経済は消費する力が弱い。つまり消費しようにも可処分所得が不足しているからだ。政府や日本銀行が国民生活を第一に考えるならば、所得を増やし、消費を強める政策をとるべきだ。だが、植田和男総裁になってからの日銀は、国民生活を優先するよりも、金融業界への配慮が勝っている。 最近ではイールドカーブ・コントロール(YCC、長短金利操作)を形骸化した。それまで低く抑制していた長期金利の上限を1%と従来の倍まで引き上げたからだ。これによって10年物の国債金利は一時、0・7%台半ばまで上昇した。住宅ローンや銀行からの借り入れがきつくなるだろう。 他方で銀行は預金金利が低いままなので、貸出金利との利ザヤで儲けが増える。植田日銀になってから銀行株が上昇しているのは市場の素直な反応だ。対して、国民の消費はさえないままだ。 YCCが「形骸化」しているのでこれからも長期金利は上昇していき、アベノミクスが始まる前