現在の経済学は、「利益を最大化するよう合理的に行動すること」を理論の大前提としているために、「金融緩和さえしておけば、それに従って設備投資がなされるから、消費増税で需要を抜いても構わない」という見解になっている。むしろ、増税で財政赤字を減らそうとすることが金利を安定させ、成長を助けるくらいの感覚である。 しかし、実際には、需要リスクがあると、設備投資が控えられ、不合理にも機会利益は捨てられてしまう。利益を最大化するより、大きな損失を被る事態を避け、生き残ることを優先するためである。したがって、金融緩和に消費増税を組み合わせるに至ったアベノミクスは、失敗する可能性が高い。その時、どんな思想に拠って失敗したかを看過してはなるまい。そうでなければ、我々は、失敗で多大の犠牲を出しながら、何の教訓も得られないことになる。 ……… 前回は、需要リスク下の経済学ということで、「需要リスク>0」の場合、す