昔、東京に住んでいたころのこと。諸事情あって、頻繁に実家がある岐阜に帰っていた。そのときお世話になったのが、深夜バスだ。 東京から名古屋、便によっては岐阜駅まで、寝ている間に運んでくれる。しかも、新幹線よりもはるかにリーズナブル。あのころはうら若き独身女子だったので、最安値である4列シートは避け、隣と離れている3列タイプのものしか利用したことがないが、じつにいろいろな乗客のドラマがあり、なかなか味わい深い経験だった。 そんな深夜バスに100回も乗ったというツワモノが描いた本があるというので、どんなユニークな経験が読めるのかと手にとってみた。『深夜高速バスに100回ぐらい乗ってわかったこと』(スズキナオ・著/スタンド・ブックス・刊)だ。 内容を見て期待外れ…? いやいや、かなり味わい深い!著者のスズキナオ氏は、大阪在住のフリーライター。酒場めぐりと平日昼間の散歩が趣味で、テクノバンドのリーダ