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ブックマーク / www.tachibana-akira.com (147)

  • 北朝鮮が「水爆」実験をする合理的な理由 週刊プレイボーイ連載(227) – 橘玲 公式BLOG

    北朝鮮が水爆実験に成功したと発表したことで、朝鮮半島がいまだ緊張状態にあり、日もこの奇怪な国とつき合っていくほかない現実を思い知らされました。しかしなぜ、金正恩第1書記はこんな危険なゲームをつづけるのでしょうか。 もっともわかりやすい説明は、長年の鎖国政策と独裁によって政治指導者がもはや正常な判断を下せなくなっている、というものです。日の報道をみても、軍事パレードやマスゲームの異様な映像を背景に、「あたまのおかしい権力者」「洗脳されたかわいそうな国民」という図式がほとんどです。 しかしこうした(暗黙の)常識とは逆に、北朝鮮がきわめて合理的に行動しているとしたらどうでしょう。 北朝鮮がもっとも大きな利害関係を持つのは、アメリカでも韓国でもなく、中国です。たびかさなる核実験によってきびしい経済制裁の対象となっている北朝鮮は、中国に完全に依存するようになり、中朝間の金融・貿易の流れを止められ

    北朝鮮が「水爆」実験をする合理的な理由 週刊プレイボーイ連載(227) – 橘玲 公式BLOG
  • 慰安婦問題を「最終的で不可逆的」に解決するために 週刊プレイボーイ連載(226) – 橘玲 公式BLOG

    昨年末の「慰安婦」日韓合意は戦後史に画期をなす出来事ですが、その意義がじゅうぶんに理解されているとはいえません。 従軍慰安婦問題についてはさまざまな立場があるでしょうが、国際的には、日韓のナショナリズムの衝突ではなく、女性の人権問題と見なされていることを押さえておく必要があります。 旧ユーゴスラビアの解体とボスニア内戦は、その凄惨さによって西欧諸国に大きな衝撃を与えました。とりわけ戦場における虐殺と性暴力は、「人権の擁護は国家の主権を超える」という新しい流れを生み出しました。従軍慰安婦問題も、こうした「普遍的人権」の枠組みのなかで国際社会で取り上げられるようになったのです。そこで重視されたのは、日韓の歴史認識のいずれが正しいかではなく、戦争の被害者である女性をいかに救済するか、ということでした。 しかし残念なことに、こうした冷戦後の新しいパラダイムは、日でも韓国でもほとんど理解されません

    慰安婦問題を「最終的で不可逆的」に解決するために 週刊プレイボーイ連載(226) – 橘玲 公式BLOG
  • 誰もが逃れられない「心理的偏向」のリスト – 橘玲 公式BLOG

    今週は『週刊プレイボーイ』の連載が正月進行で休みなので、代わりにアメリカの心理学者、生物学者デイヴィッド・リヴィングストン・スミスの『うそつきの進化論』から、人類に普遍的(ヒューマン・ユニヴァーサルズ)な心理的偏向のリストを紹介したい。こうした偏向はすべてのひとが(もちろん私も)持っていて、世の中で起きるさまざまな不愉快な出来事の多くを説明するだろう。自戒したい。 自己奉仕的偏向 成功したことを自分の功績と考えようとし、失敗した場合は外部に原因を求めて非難する傾向。 自己過大視的偏向 集団で力を合わせて得た結果に対して、自分の貢献度を不相応なほど大きく考える傾向。 自己中心的傾向 過去の出来事について、自分の果たした役割を過大に評価する傾向。 総意の誤認 大多数の人が自分と同じ意見や価値観を持っていると信じ込む傾向。 独自性の思い込み 自分は他人と違う特殊な存在だと思い込む傾向。 支配力へ

    誰もが逃れられない「心理的偏向」のリスト – 橘玲 公式BLOG
  • 新年なので、最近考えていることなど – 橘玲 公式BLOG

    昨年末に『「読まなくてもいい」の読書案内』を出版して、「これまでとテーマが変わったんですか?」との質問が寄せられたので、新年ということもあり、私のなかでどのようにつながっているのかをちょっと説明したいと思います。 これまで何度か述べてきたことですが、「私たちがこの世界に生まれ、いまを生きているということがひとつの奇跡であり、限られたその時間をできるだけ有効に使うには人生を正しく(合理的に)設計しなければならない」というのがすべての前提です。 私たちは金融資、人的資、社会資という3つの資から富(ゆたかさ)を得ています。 これらの資をすべて失ってしまった状態が「貧困」です。 これら3つの資のなかで、金融資は、金融市場から富を獲得するための投資理論としてモデル化されています。 金融市場についての理論には、経済学の効率的市場仮説と、それを批判したベノワ・マンデルブロのフラクタル理論

    新年なので、最近考えていることなど – 橘玲 公式BLOG
  • 第55回 保険は「夢」を追うものにあらず(橘玲の世界は損得勘定) – 橘玲 公式BLOG

    2006年の保険業法改正で少額短期保険会社の参入が可能になり、ミニ保険市場が拡大しているという。保険金1000万円まで、保険期間1年(損害保険分野は2年)の制約があるが、持病があっても加入できる医療保険とか、遺産分割や離婚調停で弁護士費用を補償する保険とか、さまざまなニッチを開拓しているようだ。 保険というのは、自分では対処できない出来事に備えるための金融商品だ。日人は保険に入りすぎだとよくいわれるが、リスク管理が必要な分野はまだまだ残されている。そういうニーズを上手に見つければ、面白いビジネスができるだろう。 でも、日の保険商品には大事なものが欠けているんじゃないだろうか。 医療保険は入院1日目から保険金が支払われるタイプが人気だが、保険の原則からしてこれはまったく意味がない。1週間程度の入院なら貯金を取り崩せばいいのだから、そのぶん保険料を割り引いてもらった方がずっと得だ。 保険と

    第55回 保険は「夢」を追うものにあらず(橘玲の世界は損得勘定) – 橘玲 公式BLOG
  • 「フィンランドがベーシックインカム導入?」の結末 週刊プレイボーイ連載(224) – 橘玲 公式BLOG

    北欧のフィンランドでベーシックインカムの導入が決定し、国民全員に毎月800ユーロ(約11万円)を支給するとのニュースがインターネットに流れました。その後、フィンランド大使館がツイートで「あくまでも予備調査が始まっただけ」と訂正し、誤報と判明しましたが……。 人口550万人のフィンランドで格的なベーシックインカムを導入するには国家予算の半分に匹敵する500億ユーロ(約7兆円)もの財源が必要で、年金を含む他の社会保障はすべて廃止されるのですから、国会での審議もなしにいきなり決定できるはずはありません。しかし今回の騒動は、ヨーロッパの一部でベーシックインカムが現実的な選択肢のひとつと考えられていることを示しました。 国民全員に無条件で生活最低保障を給付するベーシックインカムはバラマキの典型と思われていますが、実は自由主義の経済学者ミルトン・フリードマンが提唱した「負の所得税」を拡張したリバタリ

    「フィンランドがベーシックインカム導入?」の結末 週刊プレイボーイ連載(224) – 橘玲 公式BLOG
  • マクロ経済学のどこがヤバいのか – 橘玲 公式BLOG

    新刊『「読まなくてもいい」の読書案内』の第一稿から、紙幅の都合で未使用の原稿を順次公開していきます。これは第3章「ゲーム理論」で使う予定だった「複雑系経済学」の紹介です。 ************************************************************************ 経済学が抱える最大の問題が「合理的経済人」の前提にあることは間違いない。行動経済学がこの前提が成立しないことを証明した以上、経済学も、ゲーム理論も、理論の正当性に深刻な疑問を突きつけられている。 この矛盾は、じつは経済学の内部でも気づかれていた。 大学で勉強する経済学は、ミクロとマクロに分かれている。ミクロ経済学は家計(消費者)の需要と企業(生産者)の供給から市場の構造を一般化しようする「帰納型」で、マクロ経済学は国民所得や失業率、インフレ率などのデータから一国経済を分析しよ

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  • 障がいを持つ胎児の中絶をどう考えるか? 週刊プレイボーイ連載(223) – 橘玲 公式BLOG

    茨城県の教育委員が、「妊娠初期にもっと(障がいの有無が)わかるようにできないのか」「茨城県では(障がい児を)減らしていける方向になったらいい」などと発言したことで辞職に追い込まれました。これが差別的な発言であることは明らかですが、しかしそれを封殺すればすむ問題でしょうか。 傷がいを持つ胎児の中絶はもちろん、出産直後に障がいがあることがわかった場合も安楽死を認めるべきだ――こんな主張を聞いたらほとんどのひとは仰天するでしょう。しかしこれは、倫理学の分野で1970年代後半に提起され、数々の論争を経て(批判も含め)いまでは一定の評価が定まっています。 重度の障がいを持つ乳児の安楽死を議論の俎上に載せたのはオーストラリアの哲学者ピーター・シンガーですが、彼はネオナチやファシストの類ではなく、「動物の権利」を提唱して動物保護運動に画期をもたらしたリベラルの“過激派”です。 なぜ動物に権利があって胎児

    障がいを持つ胎児の中絶をどう考えるか? 週刊プレイボーイ連載(223) – 橘玲 公式BLOG
  • 「中絶によって犯罪が減る」ってホント? – 橘玲 公式BLOG

    新刊『「読まなくてもいい」の読書案内』の第一稿から、紙幅の都合で未使用の原稿を順次公開していきます。これは第3章「ゲーム理論」9「統計学とビッグデータ」の「大相撲で八百長を見破る」のあとに入る予定だった原稿です。 ************************************************************************ 統計学は真実に辿りつく超強力な理論で、ビジネスを中心にぼくたちの人生に大きな影響力を持つようになった。だから最後に、「絶対計算」も絶対とはいえないという話をしておこう。 スティーヴン・レヴィットの『ヤバい経済学』が世界じゅうでベストセラーになったのは、「犯罪者はみんなどこへ消えた?」で、1990年代になってアメリカの犯罪件数が劇的に下がりはじめた謎を解明したからだ。 それまでの15年間に凶悪犯罪は80%も増えており、専門家たちは今後も

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  • 『「読まなくてもいい本」の読書案内』あとがき – 橘玲 公式BLOG

    近刊『「読まなくてもいい」の読書案内』の「はじめに」を、出版社の許可を得て掲載します。 ********************************************************************** 知が物理的な衝撃だということをはじめて知ったのは19歳の夏だった。 フランスの哲学者ミシェル・フーコーの2度目の来日が1978年4月で、東京大学での講演を中心に雑誌『現代思想』6月号でフーコー特集が組まれた。ぼくは発売日に大学の生協でそれを手に入れて、西荻窪のアパートに帰る電車の中で読み出した。 阿佐ヶ谷あたりだと思うけど、いきなりうしろから誰かにどつかれて、思わず振り返った。でも、そこには誰もいなかった。その衝撃は、頭の中からやってきたのだ。 フーコーはそこで「牧人=司祭体制」の話をしていた。牧人というのは羊飼いのことだ。 羊飼いは羊を管理しているけど、彼の仕

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  • 『「読まなくてもいい本」の読書案内』はじめに – 橘玲 公式BLOG

    近刊『「読まなくてもいい」の読書案内』の「はじめに」を、出版社の許可を得て掲載します。 ********************************************************************** なぜこんなヘンなことを思いついたのか? このは、高校生や大学生、若いビジネスパーソンのための「読まなくてもいい」の読書案内だ。 なぜこんなヘンなことを思いついたかというと、「何を読めばいいんですか?」ってしょっちゅう訊かれるからだ。でも話を聞いてみると、こういう質問をする真面目な若者はすでに「読むべき」の膨大なリストを持っていて、そのリストにさらに追加するを探している。その結果、「読まなくちゃいけないがこんなにたくさんある!」→「まだぜんぜん読んでない!」→「自分はなんてダメなだ!」というネガティブ・スパイラルにはまりこんでしまう。 こんなことになるい

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  • 中国の”デタラメ”にも理由がある 週刊プレイボーイ連載(219) – 橘玲 公式BLOG

    が提案した国連での「核全廃をめざす被爆地訪問決議」は156カ国の圧倒的多数で採択されましたが、核保有国である米英仏は棄権、中国ロシア北朝鮮が反対しました。なかでも中国は突出していて、傅聡軍縮大使は日がヒロシマ・ナガサキの悲劇を「歴史をゆがめる道具」として利用し、「日の侵略で中国だけで3500万人が犠牲になった。その大半は日軍の国際法に反する化学・生物兵器の大規模使用の犠牲者だ」と批判しました。中国はほかでも同様の主張を行なっていますから、「南京大虐殺」の犠牲者30万人説に加え、これが今後、中国共産党の「正史」になっていくことは間違いないでしょう。 日陸軍が「731部隊」のような研究機関を使って細菌兵器を開発したり、中国戦線でその効果を検証していたことは戦史に記載がありますが、(幸いなことに)試験段階で敗戦を迎えたため、日国内ではリベラル歴史家ですら化学・生物兵器の大量使

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  • 第54回 住宅ローンは信用取引(橘玲の世界は損得勘定) – 橘玲 公式BLOG

    横浜市内の大型マンションが傾いた事件では杭が強固な地盤に届いておらず、基礎工事を施工した下請業者がデータを改ざんしていた。同じ業者が過去10年間に手がけた物件が約3000棟に及ぶことがわかって不安が広がっている。 この欠陥マンションを購入した住民は、「何千万円もの資産が無価値になるかと思うと夜も眠れない」と語っていた。マンションを販売した大手デベロッパーが買取りを申し出ているが、他の工事でも同様の改ざんが発覚した場合、損害がすべて補償されるとはかぎらないだろう。 今回の事件資産運用理論で説明すると、「タマゴをひとつのカゴに盛るな」ということになる。ひとつの株に全財産を投資して、その会社が倒産してしまえば一文なしだ。それを避けるには、異なるタイプの株式を保有すればいい。これが分散投資理論で、寿司屋がダメでもラーメン屋が儲かればなんとかなるのだ。 借金をして株式を買うのが信用取引で、素人が手

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  • 福祉国家は「差別国家」の別の名前 週刊プレイボーイ連載(218) – 橘玲 公式BLOG

    「現代の民族大移動」ともいうべき難民の大量流入でヨーロッパが動揺しています。ハンガリーの右派政権は移民の流入を防ぐために国境を封鎖して批判を浴びましたが、批判の急先鋒に立ったクロアチアやオーストリアといった国々も、難民が国内に滞留しはじめると態度を翻しました。難民を満載した列車を市民が歓迎したドイツでもメルケル首相の支持率が急落しています。 「反移民」は東欧だけの現象ではありません。世界でもっともリベラルな社会を実現したスウェーデンでは、2010年と14年の総選挙で「税金を納めない移民のただ乗りを認めるな」と主張する“極右”の民主党が第三党に躍進して衝撃を与えました。大麻も安楽死も合法で、「自由と自己決定権」を重視する世界でもっとも進歩的な国オランダでも、「イスラーム諸国からの移民受け入れ停止」を掲げる自由党が第三党となり、閣外協力ですが政権の一翼を担っていました。国連の調査で「世界で一番

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  • 安保法制もTPPも予定調和で決まっていた 週刊プレイボーイ連載(215) – 橘玲 公式BLOG

    紆余曲折の末にTPP(環太平洋経済連携協定)が大筋合意に達しました。これを受けてオバマ大統領が、「中国のような国に世界経済のルールを書かせることはできない」との声明を出しましたが、このことからも明らかなように、TPPはたんなる自由貿易協定ではなく、アメリカを中心とする環太平洋圏の民主国家による対中国戦略です。 中国と同じ共産党独裁の国家資主義であるベトナムがTPPへの参加を決断したのは、経済的な利益が目的ではなく、これが国家の安全保障に直結することを理解したからでしょう。だとすれば、同じく中国台頭の脅威を受けている日にとって安保法制とTPPは最初からセットで、交渉から離脱する選択肢などなかったのです。 TPP参加を最初にいい出したのは民主党政権時代の菅元首相で、集団的自衛権の行使容認は野田前首相の持論です。自民党は当初、TPPに反対していましたが、政権の座に着いたとたん態度を豹変させて

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  • 番長がいなくなって監視社会が到来した 週刊プレイボーイ連載(213) – 橘玲 公式BLOG

    大阪・寝屋川市で中学1年生の男女が殺害された事件では、現場付近に設置されていた監視カメラが犯人逮捕の決め手になりました。それ以外でも渋谷駅の地下鉄駅構内の殺傷事件や、長崎県で幼稚園児が誘拐され、立体駐車場から投げ落とされて殺された事件など、監視カメラが犯人の特定につながったケースは枚挙にいとまがありません。いまでは、まずカメラの映像を調べるのが犯罪捜査の常道になっているようです。 統計的な事実を確認しておくと、多くのひとの実感とは逆に、日の犯罪被害は減少の一途をたどっています。少年犯罪の減少も顕著で、世間でいわれる「低年齢化」とは逆に、犯罪のピークは18~20歳に「高齢化」しています。さらに、世代別でもっとも犯罪者が増えているのは高齢者です。 とはいえ、「治安の悪化」をたんなる錯覚だと決めつけることもできません。「治安感覚」は、たしかにむかしとは変わってきているからです。 公立高校の教師

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  • ヨーロッパの難民は「理想」が生み出した 週刊プレイボーイ連載(212) – 橘玲 公式BLOG

    ヨーロッパにシリア、イラクなど紛争地帯からの難民が大量に押し寄せ、各地で混乱を引き起こしています。EU(欧州連合)は今後2年間で難民16万人を各国に割り当てる案を発表しましたが、中・東欧諸国を中心に反対論が根強く、議論は紛糾しそうです。 これまでの経緯を振り返れば、難民の発生は、シリアで反政府運動が高まりを見せた2011年1月にまで遡ります。シリアは少数派のアラウィー派が、独裁と秘密警察によって人口の4分の3を占めるスンニ派を支配する特異な政治体制で、ハーフィズ・アル=アサド前大統領は1982年、敵対するムスリム同胞団(スンニ派)の拠点ハマーの街を攻撃し、1万人から4万人とされる多数の市民を虐殺しました。現在のバッシャール・アル=アサドはその息子で、政権の中枢はアサド家をはじめアラウィー派で固められています。 シリア内戦はスンニ派対シーア派の中東諸国の代理戦争でもあり、イランが同じシーア派

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  • 「強い大統領制」じゃなくてよかった、かも 週刊プレイボーイ連載(211) – 橘玲 公式BLOG

    来年の米大統領選に向けた共和党候補指名争いで、“不動産王”ドナルド・トランプの勢いが止まりません。世論調査でも30%前後の支持率を維持し、命とされるジェフ・ブッシュ前フロリダ州知事らを大きく引き離しています。このままでは民主党のヒラリーとの一騎打ちになりそうですが、政治評論家のなかには懐疑的な論者も少なくありません。 トランプが支持されるのは、人気テレビ番組で「お前はクビだ!(You’re fired!)」の決め台詞を連発した圧倒的な知名度や、女優やモデルとの派手な交際もありますが、そのカゲキな発言が、共和党の中核的な支持層である保守的な白人中産階級にアピールしたからなのは間違いありません。 トランプは移民の流入を防ぐためにメキシコとの国境に「万里の長城」を築くと公約し、中国を為替操作による貿易赤字の元凶、日米安保条約を「米国が攻撃されても日は助ける必要がない不平等条約」と批判します。

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  • 国民のエゴイズムによって平和な時代はつづく 週刊プレイボーイ連載(210) – 橘玲 公式BLOG

    戦後70周年の夏も大過なく終わり、その一方で安保法制をめぐる議論が熱を帯びてきました。私の住んでいる街でも、週末には「平和を守れ!」「戦争反対!」のデモが行なわれています。 特定秘密保護法の審議でも反対派が国会を取り囲みましたが、国民はほとんど関心を示さず、いまではそんな法律があることすら忘れています。それに対して安保法制が政権を揺さぶるのは、もともと憲法違反のものを諸事情によって合憲と強弁する筋の悪さとともに、「戦争法案」への危機感が主婦を中心とする女性層を動かしたからでしょう。ふだんは政治に興味を示さない女性誌も、「読者の強い関心」から安保法制を特集するようになりました。 政治ゲームでは、敵に負のレッテルを貼るのは強力な武器になります。民主党政権は「売国」のレッテルに苦しみましたが、こんどは自民党政権が「戦争」のレッテルで同じことをされているだけで、権力闘争とはそういうものです。無益な

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  • “加害者”が責任を追及する不思議な歴史観  週刊プレイボーイ連載(209) – 橘玲 公式BLOG

    注目されていた安倍談話が8月14日に発表されましたが、穏当かつ常識的なもので、首相に「歴史修正主義者」のレッテルを貼ろうと手ぐすねひいていたひとたちは肩透かしをったようです。中国韓国の反応も、事前に内容を知らされていたのか、抑制的なものでした。歴史問題は加害国の謝罪と被害国の寛容によって解決するほかないのですから、日中韓の為政者が「いつまでも罵り合っていても仕方がない」という当たり前のことに気づいたのは歓迎すべきことでしょう。 歴史問題の発端が、「東京裁判は勝者の判断による断罪」「侵略の定義は定まっていない」などの安倍首相の発言にあることは明らかです。個人の意見なら許容範囲でも、一国の宰相が保守派の偏狭な歴史観に執着すると政治的資源を失うばかりで、安保法制の議論すらままなくなる現実にようやく気づいたのでしょう。最初から談話の立場なら、「戦争法案」とか「徴兵制」とかの無意味な混乱は起きな

    “加害者”が責任を追及する不思議な歴史観  週刊プレイボーイ連載(209) – 橘玲 公式BLOG