「退社」という言葉は大変紛らわしい。「退職した」という意味なのか「帰った」という意味なのか分からないのだ。これは文脈によっても判然としないことが多い。 その最も困る場面が、ある社員が帰った後に電話が鳴り、その彼に取り次いで欲しいと言われたときだろう。「退社した」は正しい言い方である。しかし、久しぶりに電話をしてきた人だったら、「退社」は「退職」の意味に取られるかもしれない。また、夕方に鳴った電話で、すでに辞めてしまった社員を指名され、「退社しました」と答えても、「今日は帰った」という意味に取られるかもしれない。どちらも正しい意味なのである。 ではどう言い換えればよいのか。会社を出てしまったからと行って家に帰ったかどうかは分からないので、「帰宅した」というのはどうもしっくりこない。飲みに行ったり買い物に行っているかもしれないからだ。これらは帰宅の途上での出来事であって、大枠では「帰宅した」と