(私の)家に「幕末の素顔」という写真集がある。それは米国国会図書館が保管していた、幕末の日本の庶民の写真集である。初めて、その写真を見たとき、少なからずがっかりした。どの女の人のきもの姿も美しくないのだ。ほとんど無地の黒っぽい着物を、だらしなく着くずした着付けで、時代劇に出てくるような華やかさはまるでない。思わず(私の)兄に文句を言ったら、「私たちがジーパンやTシャツを着るのと同じように、生活着なのだから仕方がない」と言われた。 なるほど、それはそうであるが、毎日どこかでやっている時代劇の中のきもの姿に慣れているので、なにか納得できない。きものの歴史を調べる機会があっても、(それは)小袖の形自体の変化か、模様や色彩の移り変わりであって、着付けについては、あまり知らなかったからだ。 それからは、自分なりに気をつけて、(下に掲載した)画像と同じような風俗を探してみた。浮世絵である。歌舞伎役者や