沙村広明氏の連作短編「ブラッドハーレーの馬車」を読んだ。いやあたまらない。サディズムの塊のような妖しさ満点の作品だ。 19世紀のヨーロッパの某国。富豪である貴族ブラッドハーレー家は、その国で知らぬもののいない有名な少女歌劇団を抱え、毎年のように孤児を養女として引き取っているという。恵まれない女の子の誰もが夢を見るブラッドハーレーの馬車。自分たちを迎えにきてくれることを願わないものはいない。ただ歌劇団の舞台に上がれるのはごくわずか。ずいぶんたくさんの孤児を引き取っているらしいが、舞台に上がれない多くの彼女たちは一体どこに消えたのだろう……。 酷薄とも思える冷ややか描写。展開するのはありとあらゆる性的拷問と監禁とリンチの悪夢的光景である。彼女らが連れていかれるのはブラッドハーレー家の豪奢な邸宅ではなく、華やかな舞台でもない。頻発する暴動を抑えるため、凶暴な囚人らの欲望のはけ口となるために監獄へ