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ブックマーク / acocoro.nihirugyubook.but.jp (9)

  • まほうの10・Five Years(下) | 今生日記

    今生日記konjyo nikki  ーまほうの10・Five Years(下) あれはたしか大震災の前。地面がガクリガクリと、突然信じられないおおきさで揺れ動いた、そこにつながっていた日々のことを覚えていますか? まるで世界の終わりみたいな青空の日が続いていた。雲ひとつないオソロシイような晴れの日が、来る日も来る日も繰り返されていた。乾いた強い風が吹いて、土や樹木のうるおいを奪い取っていた。二階の仕事部屋の窓から、青い空を毎日ぼうっと眺めていて。静かな町にきーんと、かすかな音を立てて虚無が降り注ぐのを聴きながら、デッドエンドまで来てしまったな、と思った。デッドエンド、さいはてまで、わたしたちは来てしまっている。なにか屈しがたい力が働きつつある。こわれていくための。終わりを迎えるための絨毯が、草むらに、海に、ひかれつつあるーー。でも、それでもまだその時点では絶望ではなかった(絶望が襲ってきた

    まほうの10・Five Years(下) | 今生日記
    sphynx
    sphynx 2012/09/12
  • 想 | 今生日記

    今生日記konjyo nikki  ー想 いつの間にか、あれから一年が過ぎていました。 この一年の間に、「近く」に感じたり、実際近づいたり、 遠くに感じたり、実際去っていってしまったり。 たましいの移動が激しかったように思う。 最近、毎日のように聴き、毎日のように想っている すきすきスウィッチの佐藤幸雄さんは、 かつて〈絶望の友〉というバンドをやっていた。 残念ながら、わたしは聴いたことがない。だからなおさら気になって、 〈絶望の友〉という名前だけを内ポケットに入れて暮らしている。 〈絶望の友〉とは、なんと言い得ていることか(と勝手に)。 この一年、誰かのたましいを「近く」に感じたり、 誰かのたましいが去っていくのを感じているときにも、 いつも〈絶望の友〉がそばにいたから(と、もう自分のものにしてる)。 その佐藤さんがDAVID BOWIEの『FIVE YEARS』を訳詞した 『五年』とい

    想 | 今生日記
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    sphynx 2012/08/29
  • 予告 | 今生日記

    今生日記konjyo nikki  ー予告 ああ、今週は時間はあるのに、まとまった文章が書けそうにない。まとまった文章、っていうのはわたしにとっては、短文にしろ散文にしろ何にしろ、ある種の物語のこと。物語を書くのが好きなんです。でも今週は、普通に説明するような文章しか書けそうにない(きもちがね、そーゆうときもある)。 いつも言っていることですが。音とか映像とか踊りとか絵とか味とか香りとか、せっかく言葉以外のものでなにかをあらわそうとしているのに、言葉を持ち出されると、わたしはうんざりするんだよなぁ。言葉でわからされることが、なにしろ好きじゃない。鈴木清順の『ツィゴイネルワイゼン』だったか、次の作品の『陽炎座』だったか忘れたんだけど、夢か現かわからぬ不思議なできごとに翻弄される主人公の男に向かって、映画の最後の最後におかっぱ頭の童女が「死んでいるのはもしかして、おじさんのほうかもしれなくてよ

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    sphynx 2012/08/12
  • 日記 | 今生日記

    今生日記konjyo nikki  ー日記 この話、酔っぱらったときに見境なく話している気がするから、もしかしたら聞いたことがあるかも、ですが。その昔に『シティロード』という月刊の情報誌があって、それは情報誌であると同時に面白い読み物雑誌だったんだけど、と書くときに。たぶん“サブカル系の”とかっていう形容詞が付きがちなんだと思うけど。“サブカルチャー”とかっていうのが言葉としてピンと来なくて、何がカウンターで何がサブなんだか、50年生きてきてまだわからないので、ましてやそれを略されてもちょっと困るんだよな、わたしは。ともあれ『シティロード』という雑誌があって、そこに日記のページがあったのです。 見開き(2ページ)を横長に5段ぐらいに区切って、5人の執筆者がそれぞれの日記を一週間分だったかな、書くわけです。1日分の文字量が200字程度だった気がする。つまり、ツイッターとブログの中間みたいな日

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    sphynx 2012/07/23
  • わたしてきまほう | 今生日記

    今生日記konjyo nikki  ーわたしてきまほう どーおんなーに、はーや〜いー、しーん〜ご〜でも 1…………………2………………3………………… ほら、3センテンス。たった3センテンスでしょ。ごつごつ、かつかつとしたエレキギターと生の声だけで、どんなに速い信号でも、とうたわれる出だしの3センテンス、「それだけでいい」と今のわたしは思ってしまう。いつも胸の奧で、その調べが鳴っている。声高らかに。当にふしぎ。ふしぎなことだ。それこそ、まほう。どーおんなーに、とうたわれる1センテンスの中だけでも、ぐんっと何かが立ちのぼる。ぐんっぐんっぐんっと上がっていく。夏休みの前の日の入道雲みたいに。ぐんっと胸が誇らしくひらいて、ひろがる。なんでも入って来られるひろさにひろがる。目の前にいつかの遠い夏の青い海原がひろがる。つまり、自由になれる。言葉の意味、なんかじゃない。意味は関係ない。なんだろう、こ

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    sphynx 2012/07/23
  • Playground | 今生日記

    今生日記konjyo nikki  ーplayground 夏の宵。すいかを買ってきてくれたともだちに「すいか、嫌い」と言い。 メロンを買ってきてくれたともだちに「メロンなんて、ちっとも興味ない」と言った。 あれれれれ、そうだった? とか、またそんなこと言って、とか、 知ってるよ亜古ちゃんそうだよね、とか 聞き流してくれる、ともだちとはまこと希有ないきもの。 と書いているのは日曜の早朝で、7時7分発の電車に乗らなきゃいけない。 電車→モノレール→飛行機で福岡へ仕事で行くのです。 仕事の進み具合いによっては、今夜は向こうに泊まりになるかも。 なので急いでこれを……。ってだけでもなくて。 実は今あんまり、個人的な文章が書き進められない感じ。 なんだろうなぁ。ひととの距離感、のことを思っているのかな。 一時的な遊び「場」で擬似的に盛り上がったり、 みんなが遊び「場」だと勝手に思っていた「場」所が

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    sphynx 2012/07/23
  • 光りの手 | 今生日記

    今生日記konjyo nikki  ー光りの手 いつものようにヘッドフォンで音楽を聴いていて、“手は頭に直結している”という言葉をふいに思い出した。〈男〉の右手がギターの弦をツカッツカッツカッと無骨にかきならす。それはまさに頭の中にあるものがストレートに右手に降りてきている、そんな気がしたから。“手は頭に直結している”という言葉は、世界各地の染織物の収集家である岩立広子さんが言っていたのだ。かつて彼女にインタビューした記事を、久しぶりに取り出して読んでみた。 みずからが織物作家だったとき、岩立さんは個展で毎回、新しいものを出し続けなければならない、それが現代芸術のさだめである、という強迫観念にとらわれていたという。でも、毎日同じことをしている日常の中から、そうそう新しい表現方法なんて出てこない。自分に才能がないのが悪いというよりも、昨日よかったものが、今日はもうダメになってしまう社会のほう

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    sphynx 2012/07/23
  • 地面 | 今生日記

    今生日記konjyo nikki  ー地面 サクラの花咲く頃がいちばんさぶい。ふとんを深くかぶると、 ずしんといつもよりも重たく感じた。 ごくたまにそういう夜がある。なにものかが覆い被さってくる気配のする。 外や、部屋の中の暗闇の立てる小さな金属音が、 意味ありげなものとしてからだに響きはじめる。 ずしんと覆い被さってくるものの正体のことを、 なるべく考えないようにしようと、わたしは務める。 考えはじめれば、そいつの思うつぼなのだ。 そのうちに、嫌な痺れでからだががんじがらめになるに決まっている。 意識がしだいに沈んでいく。 このまま深く沈みこめれば……と願う心を揶揄するように、いろんな声が聞こえ出す。 「で、どうしたって?」「あんたさ……」「亜古のところは……」 「結局、昨日言ってたのはね」「だから、そうなると……」 「で? おまえはどうなのよ?」「亜古ちゃん!」「聞いた?」 妙に生き生

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    sphynx 2012/04/09
  • OUT*01の01 | 今生日記

    いつ、とは書けない。誰にも告げず、また仕事をほっぽらかして西荻を出たからだ。 西荻イン&アウト OUT*01の01 「大阪なんば・味園」 金曜だった。〆切り迫る原稿をぎりぎりまで西荻の自宅で書いて、午後遅い便で羽田を発ち、夕暮れせまる大阪伊丹に着いた。羽田=伊丹間のこの往復チケットで、とうとうマイレージ特典航空券も終わりである。使い果たしたのだ。たまっていたマイレージを。きれいさっぱりと。 2008年の秋から、私の人生は狂い始めた。まず、Yという人物の音楽に出会い、彼のおっかけをするハメになった。時を同じくして、稼業とする出版メディアがぼろぼろと崩壊しはじめ、収入が激減した。ぶっちゃけ、それはオソロシイことだった。お金の問題だけじゃない。大げさに言えばアイデンティティの震撼ってゆうの? 自分でもそうなって初めて気がついたのだけれど、「アングラなあたしのいる場所じゃないんだけどね、ほんとは」

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    sphynx 2011/11/21
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