研修医の頃、勤めている病院に「怪しい治療」をしている医師がいた。 すべての診療がそうではないのだが、診療の一部で何やら指で輪を作って引っ張ったり、漢方薬の袋の上から「念」のようなものを送り込んだり、ホメオパシー的なこともしているらしい。 端的に言って怪しかった。 僕はその頃、EBMや最新のエビデンスを学んで患者さんに適切な医療を提供しようと日々奮闘していたわけで、そんな僕にとって、怪しい治療など論外中の論外、エビデンスのない治療はすなわち悪だったのだ。 もちろん僕からその医師とお近づきになりたいとは思わなかった。同じ病院にいるにも関わらず、かなり距離を置いていた。医療という科学的根拠が求められる神聖な場に、オカルト的な要素を持ち込んでくることに対し、大きく違和感を感じていたのである。 いや、もっと言えば…「闇落ち」などと言っていたような気もする。若干バカにしていたかもしれない。 ただ、僕は