(1) はじめに 本節では,まず意思決定支援システムを考察するにあたり認知心理の立場から意思決定支援とはなにかを定義する。そして道具(エイド)としての意思決定支援システムの実例をいくつか紹介する。次に意思決定の前段ともいえる発想支援について触れる。そしてこれらを具現するプラットフォームとしてグループウェアが存在する。日本的なグループウェアは通常難しいといわれているが,その背景にある日本的社会風土,人間性の表現を研究者はどのようにとらえているか,簡単に触れたい。 (2) 意思決定問題 認知心理学的観点からの意思決定とは,選択を正当化する理由付けを探すことにほかならない(Slovic 75) 。意思決定過程を誘導し,支援する道具は一般にdecision aidsとよばれる。18世紀にベンジャミン=フランクリンが「精神的代数」と呼んだ技法(功罪表:図3.10-1)がその原型といえる。意思