タイトルは正確ではない。なぜなら、「張学良と宋美齢、66年目の告白」と副題にあるが、本書はこの2人のことを主として書いた本ではないからだ。また率直に述べれば、本としての完成度が特に高い訳でもないと思う。それにもかかわらず、この本は一挙に読ませてしまう強さを持っている。1992年、ふとした偶然から還暦を超えた著者は92才の張学良に取材する。初対面の著者に示した張学良の含羞。「あなたには私と女性のことを話しましょう」と語りかけた張学良の発言内容の真贋を、戦争をはさんで多感な少女時代を中国東北部で送った著者は、以後20年余にわたって追い続けた。その20年余が圧縮されて眼前にある。 本書は、張学良一族の伝記であり、彼をめぐる6人の女性たちの物語である。父、張作霖を日本軍に爆殺された中国東北部(旧満洲)の指導者、張学良は、教養あふれる貴公子に育つ。最初の年上の妻は張作霖が決めた。賢くてあらゆる才にも
![『国と世紀を変えた愛』by 出口 治明 - HONZ](https://cdn-ak-scissors.b.st-hatena.com/image/square/32df0f7c3a715c644d00c9be0fc42be05e8dd08c/height=288;version=1;width=512/https%3A%2F%2Fimages-fe.ssl-images-amazon.com%2Fimages%2FI%2F51MF82d3yYL.jpg)