歴史研究に、史料は不可欠です。ですが史料というものは、本質的に勝者による記録です。敗者の記録は、廃棄されてしまうことも多く、そうなると人の目に触れることはありません。 したがって、実は史料にあまり信用が置けない場合もあるのです。 今回取り上げるフェニキア人は、おそらく一般に知られている以上に歴史上重要な役割を果たした民族です。しかし彼らは、古代ローマとの戦いに負けてしまい、その史料はほとんど燃やされてしまいました。 そのため、勝者であるローマの偉大さばかりが強調され過ぎ、フェニキア人の重要性が軽んじられてきました。 そこで今回は、フェニキア人が歴史上どれほど重要であったのかを見ていきたいと思います。 フェニキア人とはどういう民族だったのか 一般に、「フェニキア人」は、エーゲ文明に属するクレタ文明(前2000〜前1400年頃)とミケーネ文明(前1600〜前1200年頃)が後退した後に、地中海