医療・医学の最前線を取材して「人体」の全貌に迫り、米メディアで大絶賛されているエンタメ・ノンフィクション。医療・医学の話なのに、医師であり研究経験のある私が全く知らなかったことのオンパレードで、引き込まれるように読んだ。 23章で構成され目次だけで8ページもあるが、各章とも20ページ前後で読みやすい。膨大な調査や取材で得た素材を正確さを失わずに十分に咀嚼(そしゃく)し、ユーモアも交えて分かりやすく表現しているのが素晴らしい。例えば心臓について、著者は「一生のあいだに一トンの物体を空中に二百四十キロメートルの高さまで持ち上げるだけの仕事量をこなしている」と記す。日頃の診療で心臓は鼓動し命をつないでくれている単なる臓器としてしか認識していなかっただけに、改めて心臓のすごさを実感した。 また、イングランドの解剖学者、ウィリアム・ハーヴェイは血液が体の中を循環していることを発見したことで知られるが