「腸呼吸」という言葉を聞いたことがあるだろうか。たとえばドジョウは水中ではエラ呼吸だが、泥などの低酸素環境下に置かれると腸を介して酸素を取り込む。驚くことに、私たち人間にもこのような腸呼吸の能力が備わっているらしい。東京医科歯科大学統合研究機構先端医歯工学創成研究部門の武部貴則教授は、呼吸不全に対する新たな呼吸管理法を模索する中で、この腸呼吸に注目。マウスやブタなどの哺乳類でも、腸呼吸によって呼吸不全が改善することを突き止めた。 そうして全く新しい呼吸管理法として開発されたのが、「腸換気(EVA)法」。浣腸の要領で肛門に器具を入れ、腸から全身に酸素を送り込む。最初は「そんなバカな!?」「肺以外で呼吸できるはずがない!」などと、まともに取り合ってもらえないことが多かったそうだが、試験結果がすべてを覆した。今年にはヒトを対象にした臨床試験も開始予定。5年以内の実用化を目指す。新型コロナウイルス