夏真っ盛り。全国津々浦々の商店街や公園、学校の校庭などでは「やぐら」が組まれ、浴衣姿の老若男女が音頭に合わせて踊る「盆踊り大会」も最盛期を迎えている。実に和やかで健康的なこのイベントの“秘された歴史”を、歴史作家の島崎晋氏が解説する。 * * * 明治以前の盆踊りの会場は現在で言うクラブ(ディスコ)、それもかなりいかがわしいクラブであった。そう言うと違和感を覚える人も多いかもしれないが、それは明治以降の政策や教育の影響であろう。本来の盆踊り会場はいわば「ナンパの場」で、その周囲の茂みでは男女の営みが無数に繰り広げられていた。 このあたりの事情は風俗史家である下川耿史氏の著作『盆踊り 乱交の民俗学』(作品社)にも詳しいが、明治維新を迎えるまで、武士の家庭を除けば貞操観念は極めて薄く、江戸市中においては職人の妻の浮気、農村部では婚前交渉や後家への夜這い、旅人への一夜妻の提供などが日常的な光景だ