茨城県の海岸沿いを中心とする地域はあんこうの水揚げが多く、「常磐路のあんこう」として知られていました。年々水揚げ量が減り、今でこそ高級魚と呼ばれるあんこうですが、30年ほど前までは、浜にあんこうがずらりと並べられる光景が茨城の港町の冬の風物詩でした。そんな時代、船の上で調理する際に水を節約するために考え出された漁師料理が「どぶ汁」の起源と言われています。ぶつ切りにしたあんこうの部位と野菜からでた水分だけで調理され、肝の風味と味噌だけで味付けされるため、とにかく濃厚なのが特徴です。しかし、食べ慣れない人にとってはクセが強すぎて食べづらい部分もあり、お店で提供されるものは、食べやすいように若干のスープや調味料を加えて作る場合が多いです。ただ、たっぷりの肝を乾煎りしてから具材と味噌を入れるという調理法が「どぶ汁」の基本であることは変わらず、一般的な「あんこう鍋」よりも強烈なコクや旨味が楽しめます