第6戦でも見事な強肩を披露し、MVPを獲得――。プロ野球の2018SMBC日本シリーズで、ソフトバンクの正捕手・甲斐拓也が持ち味を存分に発揮した。第5戦までに4盗塁を阻止。3日の第6戦でも、一回に俊足の田中を素早い送球で刺してシリーズ単独最多記録の5連続とすると、二回にも二盗を阻んで6連続に伸ばした。広島の機動力を完全に封じて、最高殊勲選手(MVP)に輝いた。二塁への矢のような送球は「甲斐キャノン」とも呼ばれ、火砲にも例えられている。 大分市出身。強肩の基礎を作ったのが、投手だった三つ年上の兄への憧れだった。「あんなふうに、速い球が投げたい」。そう思い立った甲斐は、自宅近くの公園のブロック塀に、日が暮れるまでボールを当て続けた。母の手一つで育てた小百合さん(51)は「兄弟でスピードを競い合っていました」と、思い出す。 その強烈な肩がホークスのスカウトの目にとまり、2010年の育成ドラフト6