「闇に葬られた日本最初の冷凍事業」 イントロダクション 大正十一年。ニューヨーク。 世界の発明王と呼ばれたエジソンと、天才医学博士野口英世とともに談笑する一人の日本人がいた。 星 一。 当時、新興企業として脚光を浴びていた「星薬品」の若き社長である。 初老のエジソンは、彼に言った。 「利益よりも、まず公共のことを考えなければ物事はうまく運ばない。私は、人類のために新しい富、新しい道具、新しい産業を創造しようと働いているのだ。」 この言葉は、星の心を揺さぶった。 その波動は、やがて星の頭に一つのプロジェクトとなって結実して行った。 冷凍事業。 アメリカでは、すでに冷蔵庫が普及し始めていた。 日本では、冷蔵庫を利用できる企業はほとんど無かった。 この事業はきっと、日本の産業を、いや、我々の生活をより快適なものに変える原動力になる。 星は、確信していた。 だが、この事業が日の目を見ることは無かっ