細川貂々『ツレがうつになりまして。』 藤臣柊子『みんな元気に病んでいる。』 「○○さんはウツだそうです」と人生において初めて身近にその種の情報を聞いたのは、思い出してみると、東京で仕事をしていたとき、約10年前だったなあ。そのときはハレモノに触るような心境だった。 職場として対策をとるために、医者に話を聞きにいった人が「ウツは『がんばれ』と言っちゃいけないそうだ」と話していたのを聞いて、ぼくは「カゼになったらショウガ湯を飲む」みたいな、一定の合理性のある民間療法みたいだなあ、などと思ったものだったが、あとで紹介する細川貂々の本にも出てくるように、それはわりとポイントをついたアドバイスなのだった。 それから、親しい友人にそれに近い症状が出た。これが8年くらい前だろうか。これには自分自身もまきこまれて、ものすごくアタフタしてしまった。「死にたい」と電話してくるので、四方八方に電話をかけまくった