福島県ではこれまで、県北部の川俣町で、1740(元文5)年に完成した春日神社(同町宮前)の社殿に存在する2体の白沢像が知られていた。こま犬のように片方が口を開き片方が口を閉じた「阿吽(あうん)」一対の木像で、昨年9月には金沢学院大の佐々木聡准教授(宗教文化史)が現地調査を実施。その後、有志のさらなる調査によって、白沢のさまざまな寺社彫刻が県内に存在することが明らかになってきた。 春日神社から南へ1・5キロほどに位置する東福沢薬師堂(同町東福沢)には、素朴でどこかユーモラスな印象さえ受ける白沢像が1体あった。参道から向かって左側の柱に彫刻された獅子と阿吽の対になっているようにも見える。修繕記録「棟札」の写しによれば、1816(文化13)年に造られたとみられる。 また、会津美里町にある国重要文化財・福生寺観音堂(会津美里町冨川冨岡)の正面でも、レリーフ状の眼光鋭い白沢がいた。裏面の背中部分にも