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ブックマーク / blog.livedoor.jp/yamasitayu (59)

  • 小泉悠『オホーツク核要塞』(朝日新書) 8点 : 山下ゆの新書ランキング Blogスタイル第2期

    4月26 小泉悠『オホーツク核要塞』(朝日新書) 8点 カテゴリ:政治・経済8点 世の中には知っておいたほうが良い知識と、知らなくてもおそらく大きな問題はない知識があると思いますが、書が扱っているのは後者だと思います。 もちろん、日の安全保障を考える上でSLBMを搭載したロシアの原子力潜水艦の存在は外せないことではありますが、一般の人にとって書に書かれているほどの知識は必要ないでしょう。 ただ、それにもかかわらず書は面白いです。 これは著者のオタク的な知識とわかりやすい語り口のなせる技だと思いますが、海の中で繰り広げ荒れていた米ソの軍拡競争、ソ連崩壊後のロシア海軍の凋落、凋落後の核戦略の練り直し、そしてウクライナ戦争が極東の海に与える影響など、非常に面白く読めます。 テーマ的には新書で出すようなものではないかもしれませんが、それが1冊の面白い新書に仕上がっています。 目次は以下の通

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    u_wot_m8 2024/04/28
  • 田原史起『中国農村の現在』(中公新書) 9点 : 山下ゆの新書ランキング Blogスタイル第2期

    4月10 田原史起『中国農村の現在』(中公新書) 9点 カテゴリ:社会9点 中国農村へのフィールドワークによって中国農村の姿を明らかにしようとした。非常に貴重な記録で抜群に面白いです。 中国の農村と都市の格差については、NHKスペシャルなどで熱心に農民工の問題をとり上げていたので知っている人も多いと思います。彼らが村に帰ると、そこは都市部に比べて圧倒的に貧しく、お金を稼げそうな仕事もないわけですが、そうした中で農民たちの不満は爆発しないのか? と思った人もいるのではないでしょうか。 また、中国の農村は日の農村のような地縁による強固な共同体ではなく非常に流動性が高いといった説明がなされますが、「農村」という言葉を日の農村でイメージする私たちにとって、なかなか流動性の高い農村というイメージはつかみにくいと思います。 こうしたさまざまな疑問に答えてくれるのが書です。詳しくはこのあと書いて

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    u_wot_m8 2024/04/11
  • 飯田泰之『財政・金融政策の転換点』(中公新書) 7点 : 山下ゆの新書ランキング Blogスタイル第2期

    1月23 飯田泰之『財政・金融政策の転換点』(中公新書) 7点 カテゴリ:政治・経済7点 先進国では1980年代に退治したと思われていたインフレが復活し、景気対策は金融政策中心で財政政策は最低限度で良いとされていたスタンスがゆるぎ財政出動が叫ばれるなど、近年のマクロ経済政策は大きく揺れました。 書のはしがきに「常識はそれが「常識」になった時点から崩壊が始まる」(ii p)とありますが、まさにここ最近のマクロ経済学ではさまざまな常識が書き換えられてきたのです(例えば、ブランシャール『21世紀の財政政策』における、かなりの規模の財政赤字を問題なしとする立場など)。 書は、まずは財政政策と金融政策の標準的な理解を押さえながら、財政政策と金融政策の融合、「高圧経済論」といった新しい潮流を探っています。 メディアなどで見かける著者のイメージからすると、中公新書ということもあって「やや硬め」かもし

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    u_wot_m8 2024/01/30
  • 野矢茂樹『言語哲学が始まる』(岩波新書) 8点 : 山下ゆの新書ランキング Blogスタイル第2期

    11月23 野矢茂樹『言語哲学が始まる』(岩波新書) 8点 カテゴリ:思想・心理8点 「なぜ、私たちは無限に文を生み出せるのか?」 書の出発点になっているのはこの問いです。例えば、「ウォンバットが「原宿イヤホイ」にあわせて踊ってる」という文章は、これを書きながら僕が思いついた文章で、おそらく世界で初めて書かれた文章ではないかと思いますが、このような初めて書かれた文も、「ウォンバット」や「原宿イヤホイ」が何かわかっていれば了解できます(「原宿イヤホイ」はきゃりーぱみゅぱみゅが歌っている曲です)。 こう説明すると、ここの単語の意味がわかれば、それを無限に組み合わせることができる、だから無限に運を生み出すことができる、と説明できそうですが、書によればこの考えは間違ってます。 書は、フレーゲ、ラッセル、ウィトゲンシュタインの3人の考えをたどりながら、言語の謎に迫っていきます。 この3人の考え

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    u_wot_m8 2023/11/28
  • 間永次郎『ガンディーの真実』(ちくま新書) 9点 : 山下ゆの新書ランキング Blogスタイル第2期

    10月18 間永次郎『ガンディーの真実』(ちくま新書) 9点 カテゴリ:歴史・宗教9点 今までのガンディーのイメージを書き換える非常に刺激的なです。ガンディーの生涯について書かれていますが、以下の目次を見ると、このが普通の評伝ではないこともわかると思います。 はじめに――非暴力思想とは何か第1章 集団的不服従――日常実践の意義第2章 の真実――味覚の脱植民地化第3章 衣服の真実――当の美しさを求めて第4章 性の真実――カリスマ性の根源第5章 宗教の真実――善意が悪になる時第6章 家族の真実――偉大なる魂と病める魂終章 真実と非暴力 第1章の「集団的不服従」はわかりますし、第3章の「衣服の真実」もガンディーがイギリス製品のボイコットを呼びかけ、チャルカーと呼ばれる糸車が運動の象徴になったことを考えれば理解できます。 一方、「の真実」、「性の真実」と言われても、それはガンディーにとっ

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    u_wot_m8 2023/10/26
  • 八鍬友広『読み書きの日本史』(岩波新書) 9点 : 山下ゆの新書ランキング Blogスタイル第2期

    7月31 八鍬友広『読み書きの日史』(岩波新書) 9点 カテゴリ:歴史・宗教9点 江戸時代にやってきた外国人、例えばゴローヴニン事件で捕らえられたゴローヴニンや、漂流民を装って日にやってきて森山栄之助に英語を教えることになったラナルド・マクドナルド、あるいはイギリスの初代駐日公使のオールコックは、日人の読み書きの能力に驚いています。 こうしたことから、当時の日は世界一の識字率だったというような主張もあります。 ただし、ここでいう「識字率」とは一体どのようなものなのでしょうか? 活字に囲まれた現代に生きる私たちは、漢字を除き、一定の訓練を受ければ提示された文章をどんどん読めるし、自分の思ったことを書けるようになると考えがちです。 ところが、近世までの日において、話し言葉と書き言葉は分離しており、ひらがなを覚えたからといって自分の思ったことが「書ける」ようになるわけではありませんし、

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    u_wot_m8 2023/08/01
  • 今井むつみ・秋田喜美『言語の本質』(中公新書) 9点 : 山下ゆの新書ランキング Blogスタイル第2期

    7月18 今井むつみ・秋田喜美『言語の質』(中公新書) 9点 カテゴリ:思想・心理9点 もしも「日質」というタイトルの新書があったら、「ずいぶん大げさなタイトルだな」とも思いますが、「言語の質」というのもそれに匹敵する、あるいは上回るような大げさなタイトルだと思います。言語は人間のコミュニケーションだけではなく、認識にとっても鍵になるものだからです。 ところが、書はその大げさなタイトルに十分に応える内容になっています。 書はオノマトペと言語がいかに現実とつながっているかという「記号接地問題」を軸にして、まさに言語の質に迫っていくのです。 前半のオノマトペの役割や、世界のオノマトペとその共通点といった話題でも十分に1冊の新書として成り立つ面白さがありますが、さらにそこから子どもがいかにして言語を学ぶのかという問題、そして言語の質へと肉薄していきます。 言語哲学をかじった人に

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    u_wot_m8 2023/07/20
  • 渡辺努『世界インフレの謎』(講談社現代新書) 8点 : 山下ゆの新書ランキング Blogスタイル第2期

    12月1 渡辺努『世界インフレの謎』(講談社現代新書) 8点 カテゴリ:政治・経済8点 今年の1月に講談社選書メチエから出た『物価とは何か』は、今年の経済書の中でもトップクラスの面白さだったと思いますが、書は同じ著者による新書になります。 最初は、「このくらいのスパンだと焼き直しにしかならないのでは?」と思ったのですが、読んでみたら面白いですね。ここ最近、世界的に起きているインフレの謎を中心に、欧米各国と日の違い、どのような処方箋があり得るのか? など、『物価とは何か』よりもアクチュアルな問題が論じられていて、新たな発見があります。 『物価とは何か』を読んだ人でも十分に楽しめるであり、ここ最近のインフレの問題を考える上で必読のと言えます。 目次は以下の通り。第1章 なぜ世界はインフレになったのか――大きな誤解と2つの謎第2章 ウイルスはいかにして世界経済と経済学者を翻弄したか第3章

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    u_wot_m8 2022/12/03
  • 國分功一郎『スピノザ』(岩波新書) 7点 : 山下ゆの新書ランキング Blogスタイル第2期

    11月24 國分功一郎『スピノザ』(岩波新書) 7点 カテゴリ:思想・心理7点 副題は「読む人の肖像」。「肖像」という副題からはスピノザという哲学者についてのスケッチのようなものかな? と一瞬思いますが。書は400ページを超えるボリュームで、スピノザの主要な著作を「読んで」いきます。 スピノザはデカルトを徹底的に「読む」ことから哲学を始めたわけですが、書はそれを追体験しながら、スピノザの主要著作である『エチカ』を「読む」という構成になっています。 スピノザの全体像をラフに描く前にいきなりテキストの読解に入っていくので、スピノザやこの時代について知らない人にとっては最初はややハードかもしれませんが、読み進めていくと徐々にスピノザという哲学者の特徴が見えてくると思います。  実は自分はスピノザの著作を読んでいないので、書のスピノザの読解がどれくらい妥当性のあるものなのかということは判断で

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    u_wot_m8 2022/11/25
    あれ?と思ったけどちょっと前のは講談社現代新書か
  • 秦正樹『陰謀論』(中公新書) 9点 : 山下ゆの新書ランキング Blogスタイル第2期

    11月9 秦正樹『陰謀論』(中公新書) 9点 カテゴリ:政治・経済9点 ネットが普及して、あるいはSNSが普及して可視化されたことの1つが書のテーマにもなっている「陰謀論」ではないでしょうか。 昔から「NASAは実はUFOと接触している」とか「M資金」とか陰謀論めいたことは語られてきたわけですが、SNSによって「ちゃんとしているはずの人」、例えば、大学の先生とか政治家が、陰謀論めいたことを発信したり紹介していることが可視化されました。 さらにトランプの扇動と「Qアノン」と呼ばれる陰謀論に乗せられる形で起こった2021年1月のアメリカ連邦議会襲撃事件は、陰謀論に人々を動かす力があることを見せつけました。 書は、そうした陰謀論について、その内容を紹介するのではなく、「誰がどんな陰謀論を受け入れるのか?」ということを中心に実証的に論じています。 ただ、陰謀論について調べるには難しさもあります

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    u_wot_m8 2022/11/10
  • 濱本真輔『日本の国会議員』(中公新書) 9点 : 山下ゆの新書ランキング Blogスタイル第2期

    5月10 濱真輔『日の国会議員』(中公新書) 9点 カテゴリ:政治・経済9点 国民の代表でありながら、多くの人がその姿に納得しているとは思えない日の国会議員。そんな日の国会議員の姿にデータを使って多角的に迫ったのが書になります。 中公新書には林芳正・津村啓介『国会議員の仕事』という現職の国会議員がその活動について綴ったもありますが、書はあくまでも外側から、どのような人物が国会議員になり、どんな選挙活動を行い、国会ではどのような仕事をし、政党の中でどのようにはたらき、カネをどのように集め、使っているかということを分析したになります。 過去と現在、日海外、与党と野党といった具合に、さまざまな比較がなされているのが書の特徴で、この比較によって、問題のポイントや解決していくべき課題といったものも見えてきます。 国会議員ついて知るだけではなく、日の現在の政治を考える上でも非常

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    u_wot_m8 2022/05/11
  • 青木健太『タリバン台頭』(岩波新書) 8点 : 山下ゆの新書ランキング Blogスタイル第2期

    4月19 青木健太『タリバン台頭』(岩波新書) 8点 カテゴリ:社会8点 2021年8月、アフガニスタンの首都・カーブルがターリバーンによってあっという間に陥落させられた出来事は、そこから逃げ出そうとする人々の映像と相まって衝撃的なものでした。 2001年の9.11テロ後にアメリカの攻撃によって政権を追われたターリバーンが、まさか20年後にこのような形で政権に復帰しようとは、当時からは想像できなかったことです。 書は、90年代半ばに「世直し運動」として活動を始めたターリバーンが政権を掌握し、その後アメリカの攻撃によって政権を失ってからいかにして復活してきたかを追っていますが、そこで明らかになるのはターリバーンの「すごさ」というよりも、それまでのアフガニスタンの状況の「ひどさ」です。 そして、「イスラーム原理主義」の組織として扱われがちなターリバーンの内実について、アフガニスタンの風土に根

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    u_wot_m8 2022/04/20
  • 菅原琢『データ分析読解の技術』(中公新書ラクレ) 8点 : 山下ゆの新書ランキング Blogスタイル第2期

    3月28 菅原琢『データ分析読解の技術』(中公新書ラクレ) 8点 カテゴリ:社会8点 『世論の曲解』(光文社新書)で政治をめぐる世論調査や分析に鋭い批判を行なった著者によるデータ分析の入門書。 ただし、例えば伊藤公一朗『データ分析の力』(光文社新書)が因果推論のさまざまな手法を紹介し、データ分析のツールを教えるだったのに対して、書は世に出回っているデータ分析の問題点を指摘し、その読み解き方を教えるものとなります。 その点では、書はメディア・リテラシーのでもあり、少し古いになりますが谷岡一郎『「社会調査」のウソ』(文春新書)と同じ系譜にあるとも言えます。 近年ではデータが重視される中で、マスメディアやネットにもさまざまなデータ分析が溢れていますが、これらの中には明らかにおかしいものもあれば、一見すると鋭いようでいて実は何かがおかしいものもあります。 書はそうした玉石混交のデータ

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    u_wot_m8 2022/03/29
  • 木村幹『誤解しないための日韓関係講義』(PHP新書) 7点 : 山下ゆの新書ランキング Blogスタイル第2期

    2月28 木村幹『誤解しないための日韓関係講義』(PHP新書) 7点 カテゴリ:政治・経済7点 韓国といえば、K-POPをはじめとして韓国文化がTVなどで好意的に紹介される一方で、一部の論壇誌やネット記事では「韓国経済崩壊!」みたいな見出しが踊るという、日のメディア上ではよくわからない状況になっています。 そんな状況に対して、さまざまなデータを用いて、韓国の現在の姿と、そこから生じる日韓関係の変質を丁寧に論じたになります。 韓国人の「民族性」を明らかにするような書き方ではなく、韓国の経済発展や韓国を取り巻く国際情勢の変化を示すことで、韓国政治の変質を説明しています。 また、「日韓国を植民地支配していない」という言説に対しても、丁寧にその問題点を指摘しており、歴史認識問題を考える上でも参考になるではないかと思います。 目次は以下の通り。第1章 ステレオタイプな日韓国認識第2章

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    u_wot_m8 2022/03/01
  • 齋藤純一、田中将人『ジョン・ロールズ』(中公新書) 8点 : 山下ゆの新書ランキング Blogスタイル第2期

    1月24 齋藤純一、田中将人『ジョン・ロールズ』(中公新書) 8点 カテゴリ:思想・心理8点 20世紀において政治哲学を復興させたと言ってもいいジョン・ロールズの評伝。 1971年に出版された『正義論』は大きなインパクトを与え、リベラリズム、リバタリアニズム、コミュタリアニズムといった政治思想の区分が生まれるきっかけを与えました。『正義論』そのものは読んでいなくても、その議論や『正義論』に対する批判のロジックを知っている人は多いはずです(自分もそう)。  しかし、時系列に沿いながらロールズの思想を解説する書を読んで、実は意外と知らなかったことが多かったことにも気付かされました。 若い頃にウィトゲンシュタインの影響を色濃く受けていたこと、『正義論』へ寄せられた批判の中では、ノージックでもサンデルでもなく、H・L・A・ハートからの批判がもっとも重要だったこと、晩年に京都賞を辞退していたことと

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    u_wot_m8 2022/01/25
  • 武井彩佳『歴史修正主義』(中公新書) 9点 : 山下ゆの新書ランキング Blogスタイル第2期

    11月23 武井彩佳『歴史修正主義』(中公新書) 9点 カテゴリ:歴史・宗教9点 既存の歴史の書き換えを図る「歴史修正主義」(revisionism)、近年この言葉を聞く機会が増えましたし、それが良くないことであるとの認識も広がっています。 ただし、「何が歴史修正主義なのか?」という難しい問題でもあります。ここ最近、織田信長について今までの「革命児」的なイメージが否定され、「意外と保守的で常識的な人物であった」との見方が研究者の間で強まっていますが、今までの歴史の見方を修正するものであってもこれを「歴史修正主義」とは言わないでしょう。 書はこの捉えにくい概念である「歴史修正主義」と、さらにそれを一歩進めた「否定論」(denial)をとり上げ、その問題点と、歴史修正主義と歴史学を分かつもの、ヨーロッパで歴史修正主義の代表である「ホロコースト否定論」がいかに法的に禁止されるに至ったかを紹介し

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    u_wot_m8 2021/11/24
  • 濱口桂一郎『ジョブ型雇用社会とは何か』(岩波新書) 9点 : 山下ゆの新書ランキング Blogスタイル第2期

    10月19 濱口桂一郎『ジョブ型雇用社会とは何か』(岩波新書) 9点 カテゴリ:社会9点 著者が2009年に同じ岩波新書から出した『新しい労働社会』は、ここ20年程度の中でも非常に大きな影響力をもった1冊で、ここで提示されたメンバーシップ型とジョブ型という雇用のあり方を示す言葉は広く流通するようになりましたし、話題になった筒井淳也『仕事と家族』(中公新書)や小熊英二『日社会のしくみ』(講談社現代新書)も『新しい労働社会』で示された日的雇用の問題を下敷きにしています(ただし、『日社会のしくみ』では著者の『日の雇用と労働法』(日経文庫)や『若者と労働』(中公新書ラクレ)があげられている一方で、『新しい労働社会』は参考文献にあげられていない)。 しかし、一方で著者の考え、特に「ジョブ型」は誤解され続けており、一部(特に日経新聞)では成果型の変形としてこの言葉が使われています。 そんな状況

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    u_wot_m8 2021/10/20
  • 安田峰俊『八九六四 完全版』(角川新書) 8点 : 山下ゆの新書ランキング Blogスタイル第2期

    6月29 安田峰俊『八九六四 完全版』(角川新書) 8点 カテゴリ:社会8点 単行で出た時に「読みたいな」と思いつつ読めずにいたですが、今回、香港デモついての新章を加えて新書化されたの機に読んでみました。単行がすでに、第50回大宅壮一ノンフィクション賞と第5回城山三郎賞を受賞しているだけあって面白さは折り紙付きなわけですが、やはり面白いだと思います。 中心となるのは天安門事件の関係者へのインタビューですが、事件について聞くだけではなく、現在(取材は2015年前後に行われている)の状況と照らし合わせるような形で質問を重ねており、事件から四半世紀の関係者と中国の変化を浮き彫りにしています。 さらに、天安門事件に参加しながら中国の現状を肯定する人、現在でも、中国に民主化が必要だと考える市井の人、香港のデモに参加する人の声なども聞くことで、「天安門事件とは結局なんだったのか?」「今後、中国

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    u_wot_m8 2021/06/30
  • 尾脇秀和『氏名の誕生』(ちくま新書) 9点 : 山下ゆの新書ランキング Blogスタイル第2期

    6月7 尾脇秀和『氏名の誕生』(ちくま新書) 9点 カテゴリ:歴史・宗教9点 時代劇に出てくる「大岡越前」や「水戸黄門」、私たちは「大岡越前の名は大岡忠相であり、水戸黄門の名は徳川光圀である」と言いたくなります。越前は越前守、黄門は中納言の唐名で、いずれも官名を表すものだからです。 ただ、「織田上総介信長の「上総介」も官名で名ではないのか?」と言われると、迷いが生じてくるでしょう。戦国時代から江戸時代にかけて〜右衛門や〜左衛門といった官名風の名前が溢れているからです。 一方、明治期の政治家を見ると、「大久保利通」と「後藤象二郎」のような2つの系統の名前が見受けられます。なぜこのようなことが起こったのでしょうか? 書は、まず江戸時代の名前の常識を解説した上で、融通無碍だった江戸時代の名前が、いかにして基的に生涯変わらない(もちろん結婚すれば苗字が変わることはありますが)「氏名」とい

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    u_wot_m8 2021/06/08
  • 小島庸平『サラ金の歴史』(中公新書) 9点 : 山下ゆの新書ランキング Blogスタイル第2期

    4月14 小島庸平『サラ金の歴史』(中公新書) 9点 カテゴリ:歴史・宗教9点 アコムのラララむじんくん、アイフルのチワワのくぅ~ちゃん、武富士ダンサーズ。一定以上の年齢の人であればテレビCMがサラ金(消費者金融)のCMによって埋め尽くされていた光景を覚えていることと思います。 しかし、このサラ金の隆盛は2006年に制定され10年から完全施行された貸金業法改正によって終わりを迎えます。 サラ金を扱った新書というと、日弁連の会長も務め都知事選にも出馬した宇都宮健児がその問題を告発した『消費者金融』(岩波新書、2002年)という優れたがありました。しかし、書はそうした告発のためのではなく、あくまでもサラ金を歴史の対象として扱い、「なぜ拡大できたのか?」「どのような人が利用したのか?」「なぜ厳しく規制されるに至ったのか?」ということを読み解いています。 このサラ金の歴史からは、サラ金業者の

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    u_wot_m8 2021/04/15