医学の地平線 第89号 分子生物学と疫学統計学の戦争 実はわたしは8年前に編集者に依頼され、次の論文を化学の雑誌に発表して物議をかもしたことがあります。 「分子生物学と疫学統計学の戦争が始まる。現代化学、2006年2月」 当時、日本で医学生物学の分野で最も隆盛を誇っていた「分子生物学」とは異なる分野「疫学統計学」が今後隆盛となり、その二つの分野で「抗争」が起きるであろうという内容です。 私の最初の論文に対し、匿名の読者の怒りに満ちた反論が次の号に掲載されました。「分子生物学は戦争しない」というタイトルです。それに対する私の反論も同時に掲載していただきました。「戦争」と表現した理由は、その二つの分野の考え方があまりに相反するからです。相反するとわかった理由は、私はもともと分子遺伝学が専門であり、しかも臨床統計学も専門としていたため、両方の考え方が理解できたからです。私に対し分子生物学のかたが