練りに寝られた構成を組む中で、彼自身がいくつもの仕掛けを周到に用意している。フーコーがつねに心がけたのは、世の中で当たり前だと思われていることを、自分の著述に接した後ではとても当たり前と思えなくさせることだった。フーコーは見えないものを見えるようにする(つまりは蒙を啓く)ことよりも、見えているものを違ったしかたで見せることを望んだ。それこそが、彼にとっての哲学という実践なのだ。(p.20) フーコーへの敬愛の念があふれた熱い一冊。フーコーが好きなんだなということが強く伝わってくる。人名を題名にしているが、内容は『監獄の誕生』(1975)の解説に絞られている。これが主著かというと異論もあろうが、ともかく著者が一番好きな著作のようだ。その背景には、規律化のための規律化に終始していた教師たちへの中学校時代の反感や違和感があるようだ(p.120f)。 ともあれ、一冊を中心にして書くという戦略は成功