スラム街は日が暮れる前に去る 取材に限らずスラム街に踏み込む際に絶対に守っている原則がある。それは「夜禁止」である。日本でも子どもが夜出歩くのはよくないこととして教育されているように、スラム街でも夜に出歩くのはリスクしかない。 日中、どんなにヘヴィに取材を重ねていても日が暮れ始めたら帰り支度をする。夜はスラム街を確実に後にするようにしているのだ。これだけは、どんなにタイトな取材スケジュールであっても守るようにしている。 フィリピンのトンド地区を取材していた時のことだ。路地裏の細い道で角材を担いで歩いている中年男性に出会った。話しかけてみると「家の増築用の資材を運んでいる。せっかくだから見に来れば」と気さくに応えてくれた。人の良さそうな顔をしているし、増築するということは家族と住んでいるはず。それならば悪い展開にはならないだろうと、彼の家におじゃますることにしたのだ。 家に行ってみると、3階