トップ > Chunichi/Tokyo Bookweb > 書評 > 記事一覧 > 記事 【書評】 Black Box 伊藤詩織 著 Tweet 2017年11月26日 ◆性暴力に沈黙せぬ社会を [評者]森まゆみ=作家 国際的なジャーナリストになりたかった。TBSのワシントン支局長に米国でのポストを得たいと相談した。前向きの返事があり、ビザを取る打ち合わせで居酒屋と寿司(すし)屋に行った。泥酔して気がついたらホテルで事に及ばれていた-二〇一五年四月三日、著者の経験したことである。 私はレイプされた事はない。しかしセクハラはある。同じように感じた。まず混乱する。なかったことにしたい。人前では取り繕う。何か言えば仕事を失うのではないかと怖い。そうした混乱の中で著者は病院に行き、警察へ行き、泥酔者をレイプする「準強姦(ごうかん)」を立証する孤独な戦いを始める。実名で本を書いた勇気を讃(たた)え