前回の続きです。お読みいただければ、とっても嬉しいです。 掘っ建て小屋よりましな家 いきなり板戸を開けて入ってきた小柄な女、マサの母親だった。 「あれ、母ちゃん、どうした。怖い顔をして!」 前に入れ替わったとき、怒鳴り込んできた目つきのするどい女だ。 うっそ、オババなしで、このおばさんと渡りあうんかい。 初日からの面倒、泣きたいわ! 「母ちゃん」 母ちゃんはマサを無視して私を見た。しばらく、凝視して片方の唇をぐっと引き上げニヤリと笑った。 いや、この笑い、馴染みがありすぎた。 オババのアメリカ俳優を真似た笑い方にそっくりで、人生には三つの坂がある、登り坂、下り坂、そして、まさかの坂。 「まさか」 「そう、まさかだ」 「まさか、あなたは」 「プルトップといえば!」 腹から出る声で母ちゃんと呼ばれた女は問うた。思わず私は額に手をあてた。すごく嬉しいような、すごく苦しいような、いわく言いがたい感