とりあえずなんか書くわ。2003年。石崎等編。クレス出版。 もともとは、波潟剛という人が『越境のアヴァンギャルド』という本で、安部公房は共産党員だったのだけれど、56年頃から共産党批判を始めて除名されていたために、1962年に『砂の女』が発表されたときにも、この作品は作品それ自体としての質の高さを評価する議論は少なく、戦中派・戦後派に対抗しようとしてた新日本文学会だとか安部公房を叩きたい共産党だとかの政治的な文脈で議論されることが多かったという話を書いていて、そこからこの本に手が伸びたという感じ。 この評論集は62年から02年までの『砂の女』の作品論が集められていて、当然すべての作品論を収録できているわけではないのだろうけれど、「テクスト」と「テクストの読み」の関係がおもしろい。例えば、『砂の女』という作品が最初に評価されたのは、この作品が発表されたのと同年の佐々木基一による論文「脱出と超