最近、労働系の学者への苛立ちは募るばかりなのだが、この本も読んでいて何度か投げ捨てたい衝動に駆られた。 何が問題か。まず、景気に関する言及がほとんどない。もしこの本が高度成長期に出された本であるならば、たとえそうであっても問題はない。しかしながら、今現在の日本は未曾有の不景気にされされている。日々、失業者が増え社会保障の財源となる税収が少なくなっていく中、議論すべきなのは景気が回復してもなお貧困者が存在し続けることなのだろうか。 そのような批判はさておくとして、本書の主題である社会保障改革か、ベーシックインカムか、という議論であるが、どうも橘木氏の発言が怪しい。橘木氏の議論はいつもそうだが調査や分析はまともなのに主張だけがリベラルに歪む。 例えば、大竹文雄氏の単身者・高齢者の増加による見せかけの経済格差であるという分析に対し、橘木氏は「一つのグループ内部における所得分配の不平等が進んでいる