文化庁が認定する日本遺産という制度がある。2015年に始まり、件数は全国で80を超えたが、認知度はいまひとつ。そこで関心を高めるため、今年から「日本遺産の日」を設けることになった。 ユネスコの世界遺産の主眼は「保存」にある。一方、日本版の目的は「活用」。16年には、安倍晋三首相が議長を務めた観光ビジョン構想会議が文化財の観光活用を打ち出した。続いて、文化財保護法が改正され、自治体による活用が円滑になった。文化財行政を教育委員会から首長部局に移し、観光振興と連動させる自治体も現れている。 観光利用を急ぐあまり、活用に慎重な学芸員を「がん」と表現した地方創生担当相が批判される一幕はあったものの、文化財行政は活用重視へと変わりつつある。 この変化の起点はおそらく、大きな経済効果をもたらした世界遺産の登場だ。「文化財で稼げることを、世界遺産が教えてくれた」とある博物館学芸員は語る。もちろん皮肉だが