以前、『海賊とよばれた男』を読んだときの感想は、「いまどき企業PRでもここまでの提灯はやらないな」というものでした。だって、企業を扱った小説は他にもあるけど、ここまで「光と影」の光の部分ばっかり誇らしく書いてしまっては、なんの深みもないでしょう。で、そんな人の発言だから、無理もないとは思いつつ、やっぱりひどい。中村歌右衛門が三島由紀夫の死後語ったという「なぜ、筆で闘おうとなさらなかったのか」という言葉を思い出しましたね。 でも、三島なんかはドン・キホーテ的でまだ可愛げがあった気もしますが、百田直樹の場合は権力にすり寄って、経済界にすり寄って、圧力をかけろと言っているわけで、維新の会松井一郎の発言「百田氏にも言論の自由がある」というのはまったくの的外れ。 わたしにいわせれば、「何を言ったって言論の自由だし、本音を吐いたという意味ではむしろ貴重だが、作家が言論機関に向かって言論で対抗せよと言わ