→紀伊國屋書店で購入 ある女性俳人の遺したふたつの句集が一冊となった。 「春雷」より 畦(くろ)ゆくやマスクのほほに夜のあめ 霜の葉やふところに秘む熱の指 うすら日の字がほつてある冬の幹 冬雨やうらなふことを好むさが 昃(かげ)る梅まろき手鏡ふところに 春雷はあめにかはれり冬の対坐 あめ去れば月の端居となりにけり かたかげや警報とかるる坂の下 防諜と貼られ氷室へつづく廊 銹あらき鋳物の肌と夏草と いちじくに指の繃帯まいにち替ふ あきのあめ衿の黒子をいはれけり 湯の中に乳房いとしく秋の夜 菊活けし指もて消しぬ閨の燈を さかりゆくひとは追はずよ烏瓜 窓をうつしぐれとほのきくづす膝 冬の月樹肌はをしみなく光らふ 「指輪」より にひとしのつよ風も好し希ふこと 秋燈火こまかくつづるわが履歴 寒の夜を壺砕け散る散らしけり(きづつく玻璃) ひらく寒木瓜浮気な自分におどろく 春雪の不貞の面て擲ち給へ 肉感
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