『できそこないの男たち』は、オスという生き物の生い立ちと性(サガ)を解説した本です。 著者の福岡伸一氏は『生物と無生物のあいだ』で著名な生物学者さんで、サイエンス本ではあまり見られない小説のような文体が特徴です。そんな彼の文体は好みが分かれると思いますが、ぼくはちょっとくすぐったく感じます。事実だけを理路整然と書かれるより読みやすい文体であることは間違いありませんが、自己陶酔感が漂っている個所が時折見受けられ、読みやすさも程度問題だなと思うことがあります。しかし書かれている内容の質としては素人のところまで降りて来てくれていて、大変おもしろく読み進められる本が多いです。『生物と...』でもテーマになった生命の「動的平衡論」ネタが複数の著書でかなり重複して書かれているところや、特有の陶酔文体をあわせて差し引いても、ぼくを含めた専門外の一般人が読む価値のある本をたくさん書かれていると言えるでしょ