子供という生物は適応が早いもので、幼児の1カ月はおっさんやおばはんの1年にも相当するに違いない。すっかり底辺託児所に慣れたムスタファは、「I’m fine」「See you later」などの簡単な英語を喋るようになり、他の子供たちと喧嘩さえするようになった。あの無言ですすり泣いていた哀しい男児が、である。 それ自体はとてもヘルシーなことなので喜んでおけばよいのだが、困ったことに、彼のファイティング・メソッドは非常にヴァイオレントなのである。 彼の場合、棒状のもので執拗に相手を打ち叩くのが好みで、やたらと先の尖った物体(鋏、ナイフの玩具)を手に取り、にやにやしながら相手の胸に押しつけて行くこともある。 底辺託児所の名物である凶暴児ジェイクと極道児リアーナの2人が素手で相手を殴り倒す、がんがん蹴りを入れる、などの肉体派であるのに比べ、ムスタファは凶器使用派だ。3人の幼児たちに共通しているのは