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ブックマーク / dirk-diggler.hatenablog.com (67)

  • 糖蜜が垂れるように探れ「ヘイトフル・エイト」 - スキルズ・トゥ・ペイ・ザ・¥

    クエンティン・タランティーノ8作目の映画である(今回はタイトルロールでご丁寧に「the 8th film by quentin tarantino」と大写しになる)。あと2での監督引退を仄めかしているからか、なにやらジョン・カーペンター作品における「's」と同じような、ただならぬ気合いを感じてしまう。 今回は西部劇+密室殺人という体裁をとっているが、蓋を開けてみればいつものタランティーノ作品であり、でもそれでいて今までのどの作品にも似ていない気がするし、「レザボア・ドッグス」「パルプ・フィクション」といった初期作のテイストを感じ取ることもできる。個人的に感じたのは「パルプ・フィクション」における2点の類似点があるような気がする。 (※以下、内容の詳細に触れているので未見の方はご注意を) ■その1 与太話 「パルプ・フィション」を観たことがある人なら、誰もが憶えているであろう「金時計」のエ

    糖蜜が垂れるように探れ「ヘイトフル・エイト」 - スキルズ・トゥ・ペイ・ザ・¥
    zenibuta
    zenibuta 2016/04/08
  • その愛は郊外から都市へ「エデンより彼方に」と「キャロル」 - スキルズ・トゥ・ペイ・ザ・¥

    トッド・ヘインズの2002年の監督作「エデンより彼方に」で、プロダクションデザインを担当したマーク・フリードバーグは、撮影時を振り返り以下のように語っている。 「(ヘインズから)舞台装置っぽくセットを作ってくれ、と言われて驚いた。普段、他の監督からオーダーされるのはその逆だからね」 「エデンより彼方に」は、夫の同性愛と、アフリカ系の庭師の間で心が揺れ動く、郊外に暮らす主婦が主人公の作品であるが、メロドラマの名手として知られるダグラス・サークの諸作品をヘインズなりに再構築した作品であり、一言で例えるなら「(サークの作品に代表されるような)50年代メロドラマ“そのもの”になってしまいたい」という願望が炸裂した「異形の偏愛映画」である。 「エデンより彼方に」は、作品で描かれた1950年代には現行作品としてタブーとされていた要素(ゲイ・イシューとレイシャル・イシュー)を、サブテキストではなく直接描

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    zenibuta 2016/02/19
  • おうちへかえろう「GODZILLA ゴジラ」 - スキルズ・トゥ・ペイ・ザ・¥

    映画における残酷な描写の一つに「子供が死ぬ」という状況がある。主要なストーリーと関係なく、台詞もろくにないような子供が、例えば交通事故などで死んだとして、それはある種、三番手ぐらいの大人のキャラクターの死より鮮烈であったりする。 怪獣映画というのは、日が世界に誇るジャンルの一つであり、昨年で言えば「パシフィック・リム」のような作品が逆輸入的に製作〜公開され、日でも大きな話題となった。監督のギレルモ・デル・トロ自身も「子供のために作った」というだけに、「パシフィック・リム」での芦田愛菜は死なない。KAIJUに襲われ相当に危ない目に遭うが、生き残って後に菊池凜子となり、でかいロボに搭乗してKAIJUと戦うのである。 低予算の作品を一撮っただけのギャレス・エドワーズが監督として大抜擢された「GODZILLA」でも、子供は死なない。原発事故を間近で目撃したり、親とはぐれて大怪獣と接近遭遇して

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    zenibuta 2014/08/08
  • もう一人のベイトマン「ウルフ・オブ・ウォールストリート」 - スキルズ・トゥ・ペイ・ザ・¥

    昨年の暮れに、映画批評としては実に20年ぶりの単著となる「映画のウトピア」を発表した粉川哲夫氏が、その中で『アメリカン・サイコ』について以下のような指摘をしていた。 情報化への産業構造の格的な変化のなかで、彼ら(ヤッピー)は、弁護士、医者、証券マン、メディア関係者として急速に地歩を築き、マンハッタンに進出してきた。その結果、それまでアーティストや活動家や"不逞の輩"もたむろできた場所が、ヤッピーのテイストに合わせて"優美"になっていった。都市論でジェントリフィケーションと呼ばれる現象である。ちなみに、90年代のバブル経済によって華麗化し、"安全"になったニューヨークは、まさに『アメリカン・サイコ』の世界から始まったのである。 (中略) 映画を見ながら気づいたことがある。ヤッピーは、基的に、最後の"メール・ショーヴィニスト"(男性至上主義者)なのだなということだ。"ヤッピー"は、女性にも

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    zenibuta 2014/02/06
  • 僕らの未来は鉛色 「エリジウム」 - スキルズ・トゥ・ペイ・ザ・¥

    (展開に触れているので未見の方はご注意を) 例えば地球に不時着して難民キャンプでの暮らしを強いられるエイリアンの造形がエビのようなデザインではなく、人間の耳が少し尖がっただけでピタピタの衣装に身を包んだエイリアンだったら、と想像してみてほしい。「第9地区」は恐らくあそこまでの大ヒットには至らなかったはずだ。問題に晒されている者を異化するということは、現実としての酷い問題を「ひとまず置いておける」ということであり、監督のニール・ブロムカンプは、かつてのケープタウンの「第6地区」を異化して、新たな物語を構築することに成功した。 ブロムカンプの新作「エリジウム」は、地球の環境汚染が進み、経済的に余裕がある人々は地球は見捨ててスペースコロニー「エリジウム」に移住し、それが不可能な貧しい人々は地球にとどまって暮らしている、という設定の物語だ。この設定自体はなんら目新しいモノではなく、それこそ「ブレー

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    zenibuta 2013/10/07
  • パーレイ・ウィズ・ユー「ジャンゴ 繋がれざる者」 - スキルズ・トゥ・ペイ・ザ・¥

    クエンティン・タランティーノの映画では、よく「演じる」ということが重要なテーマとなる。デビュー作「レザボア・ドッグス」の囮捜査官しかり、「パルプ・フィクション」のギャングに八百長試合を持ちかけられて裏切るボクサーしかり、「ジャッキー・ブラウン」の主要な登場人物間で展開されるコンゲームしかり、「イングロリアス・バスターズ」のナチの饗宴に潜入するためにドイツ人のふりをするユダヤ人しかり。それぞれのキャラクターは、その「演技」の嘘がバレることが生死の問題に繋がりかねない、文字通り「一世一代の名演」を求められる。 このテーマは、タランティーノの新作「ジャンゴ 繋がれざる者」にも共通している。 時は南北戦争勃発の二年前。奴隷の身から救われ、ふとしたことから賞金稼ぎの手助けをすることになった黒人の男:ジャンゴ(ジェイミー・フォックス)。ジャンゴはドイツ人にして賞金稼ぎの元歯医者:シュルツ(クリストフ・

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  • 手負いのネコと喋るクマ 〜「ザ・フューチャー」と「テッド」の35歳問題〜 - スキルズ・トゥ・ペイ・ザ・¥

    ※両作品の内容に触れているので未見の人は注意 まず、偶然ではあろうけど、共に「35歳、付き合って4年になるカップル」をメインのキャラクターに据えているという点が共通していることに驚いた。そして「カップルの将来を改めて考えるきっかけとなるのが動物」という点も同じである(まぁ片方はぬいぐるみだけど)。 ■米映画に見る35歳問題 「ザ・フューチャー」は怪我をした迷い:パウパウをシェルターに運び込んだカップルが、そのを引き取りに行くまでの30日間に、お互いの関係を見つめ直してみようと模索する物語。その30日間には、転職など様々な環境の変化、それぞれに新たな人間関係を築く変化などもあり、最終的にカップルは破局を迎えてしまう。当然、30日間の猶予の後、の余生を責任を持って引き受けることをきめていた当初の計画も、二人が別れてしまうことにより宙に浮いてしまう(このパウパウの顛末の切なさ、というか諸行

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    zenibuta 2013/02/12
  • カベイラ! 「エリート・スクワッド」二部作 - スキルズ・トゥ・ペイ・ザ・¥

    ■『エリート・スクワッド』 リオ・デ・ジャネイロにローマ法王が来訪することになった。警察のエリート特殊部隊BOPEの隊長ナシメントは、法王が宿泊を希望した場所の近くにある、危険なスラム地帯にはびこる麻薬ディーラーを一掃せよとの命令を受ける。妊娠し、過酷な部隊を引退しようとしていた彼だったが、この最後の仕事だけは、断ることができなかった。一方、正義心に燃える新人警官のネトとマチアスは、高い志を持って警官の任務を始めるが、腐敗し、堕落しきった警察の実態にショックを受ける。彼らはやがて、最も過酷で、最も死に近い任務をこなす超エリート部隊、BOPEへの入隊を希望するが…。 (公式サイトSTORYより) 信頼筋からの評価が軒並み高かったため、レンタルで鑑賞。これが劇場公開されずにソフトスルーされてしまうぐらい、マイナーな外国映画に対する風当たりが強いというか、配給会社の冒険が許されないぐらい現状

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  • 歴史は後ほど作られる「ミッドナイト・イン・パリ」 - スキルズ・トゥ・ペイ・ザ・¥

    ウディ・アレンの新作。当は作家として生計を立てたいハリウッド映画の脚家がフィアンセと共に婚前旅行でパリを訪れ、そこで憧れの1920年代にタイムスリップしてしまう、という荒唐無稽なお話。しかしそこには、こうした荒唐無稽なタイムスリップ物でしか語ることが出来ない、誠実なアレンの訴えが綴られていた。 ラヴレス(紙ジャケット仕様)posted with amazlet at 12.06.06マイ・ブラッディ・ヴァレンタイン SMJ (2012-05-30) 売り上げランキング: 1109 Amazon.co.jp で詳細を見るイズント・エニシング(紙ジャケット仕様)posted with amazlet at 12.06.06マイ・ブラッディ・ヴァレンタイン SMJ (2012-05-30) 売り上げランキング: 1345 Amazon.co.jp で詳細を見る 先月の末に日でも発売され、自

    歴史は後ほど作られる「ミッドナイト・イン・パリ」 - スキルズ・トゥ・ペイ・ザ・¥
    zenibuta
    zenibuta 2012/06/07
    オーウェン・ウィルソンの顔芸随所で炸裂してましたねw
  • 負け続ける若者たち〜「サイタマノラッパー」三部作〜 - スキルズ・トゥ・ペイ・ザ・¥

    三作目の公開に合わせて過去作を鑑賞して、色々と思うところがあったので以下に記したいと思います。なお、三作鑑賞済みという前提で話を進めますので、未見の方はどうぞご注意を(あんまりネタバレがどうこう、っていう映画でもないと思うけど)。 ■SR サイタマノラッパー まず、今まで何故話題になっていたこの映画を避けていたかというと、単純に機を逃していたっていうのもあるけどそれ以上に「おそらく自分にとっての理想的なヒップホップ映画ではないであろう」というのがまずあったから。案の定、映画が始まってそこに展開されていたのは、高校生ぐらいからヒップホップを聴いてきた自分にとっての理想的な「ヒップホップ映画」とは、お世辞にも言えなかった。悪気がないのはよくわかるけど、低予算であることをエクスキューズにするかのように映画の作りは安いし、何より劇中に流れるトラック/ラップ・出演者のファッション・言動・等々、非常に

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  • 2011年公開作品&その他 ベスト10 - スキルズ・トゥ・ペイ・ザ・¥

    1. 『灼熱の魂』 (感想) 2. 『4デイズ』 (感想) 3. 『愛の勝利を ムッソリーニを愛した女』 4. 『アレクサンドリア』 (短い感想) 5. 『サラエボ、希望の街角』 (短い感想) 6. 『ミッション:8ミニッツ』 7. 『ラブ・アゲイン』 (感想) 8. 『ヒア アフター』 (感想) 9. 『ソーシャル・ネットワーク』 (感想) 10. 『復讐捜査線』 一言雑感などを。 ・「灼熱の魂」圧巻。上映後にボーっとしてしまった。 ・「4デイズ」これも観終えた後はかなりボーゼンとしたけど、まさか「灼熱の魂」がそれを越えるとは思ってもみなかった。 ・「愛の勝利を ムッソリーニを愛した女」「あなたは正しいかもしれないが今は声をあげるのに正しい時ではない」という精神科医の言葉がズシリと胸に刺さる。 ・「アレクサンドリア」出発点から「こんなに遠くへ来てしまった!」というのが大河ドラマの醍醐味で

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  • ダディ・アイム・レディ「ハンナ」 - スキルズ・トゥ・ペイ・ザ・¥

    プロジェクトマネージャの美倉マリ子は悩んでいた。上層部の許しを得て、作業を迅速化する「画凛歌」というプロジェクトを立ち上げたが、他のプロジェクトの遅延による工数削減の影響で、やむなく画凛歌プログラムは白紙に戻されてしまう。機密事項の関係上、作業に関わっていた派遣社員の栄陸ヘラ夫の契約更新を取りやめ、事実上解雇とする。 時は流れて16年後。マリ子は現在進行中のプロジェクトに、「hanna.exe」というファイルが紛れ込んでいる、という報告を受ける。それは、16年前の画凛歌プロジェクトに関わった者でないと知り得ない情報が書き込まれていた…… 「プライドと偏見」「つぐない」「路上のソリスト」の監督、ジョー・ライトの新作。「アサシンとしてフィンランドの山奥で父親に育てられた少女が、母親への復讐を果たすために立ち上がる」というと、昨年の「キック・アス」のヒットガールのサブプロットを連想させるが、あの

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  • ハイパーメリトクラシー・バレエ「ブラック・スワン」 - スキルズ・トゥ・ペイ・ザ・¥

    「くだらん呟きばかりだとフォロワーさんに言われたばかりでなんだが。ちょっと暴言吐きます。ナタリー・ポートマンちゃんは早く彼氏を作るべき。エッチしなきゃミラ・クニスやクセニア・ソロには勝てないよ。棒っ切れが踊ってるみたい。女になって表現力を身に付けて欲しい。撮影前までにガッツリとことん!これは大事。」 当のナタ子はエッチどころか、作で知り合ったフランス人振り付け師と交際→婚約→妊娠→産休に突入する前の「もう一年ぐらい映画出られなくなるから出まくったる!」というオーバーワークモード(今年公開作が作を含めて2、公開予定作が更に2、「Your Highness」を含めれば3)なので、上記のようなことをアロノフスキーが言ったかどうかは知らないが*1、そういう映画になっていた。 個人的に、今までナタリー・ポートマンという人にあまり色気を感じたことがなくて、それはダコタ・ファニングせよ、ちっち

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  • キッズはオールライトじゃない「八日目の蟬」 - スキルズ・トゥ・ペイ・ザ・¥

    愛人の子供を誘拐し、逃亡を続けた末に捕まった女。その女のことを実の母親だと信じて着いてきた子供。実の父と母の前には、他人の元で育てられた四歳の女の子が返された。 原作未読。 「優しかったお母さんは、私を誘拐した人でした」など、これでもかとセンセーショナルな売り方をしていた予告編と、映画編では印象がまるで違っていて驚いた。予告を観たときの「いくらなんでも愛人の子供なんて欲しいか?」という単純な問いを「……そういうこともあるかもね」と犯人:希和子(永作博美)の心理に沿い、丁寧に外堀を埋めていく監督の手腕は中々のもの。事件の発端/顛末を提示する冒頭から、ある秘密を抱いた他者が割って入ってくる序盤までを、実に手際よく裁いて見せてくれる。 この映画は、主に二つの時間軸で構成されている。逃亡を続ける希和子と誘拐した娘(逃亡を始めた際は乳児)の過去のパートと、両親の元に戻され大学生となったその娘:恵理

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  • 小さな石鹸カタカタ鳴った。「ブルーバレンタイン」 - スキルズ・トゥ・ペイ・ザ・¥

    一組の夫婦の関係が崩壊するまでの一日を描いた物語。終わりへと緩やかに進行する現行パートと、二人が交際を始めたばかりの幸せだった時期がフラッシュバックで交互に描かれる。 男女の関係において、決別へと向かう何かのきっかけというのは、おそらくどんなカップルにでもある。そしてそれは、往々にして別れを切り出した方が強く認識したことで崩壊へと向かい、切り出された方は豆鉄砲でも喰らった鳩のような顔でキョトンとしたりするだろう。 「ブルーバレンタイン」では、:シンディ(ミシェル・ウィリアムズ)が夫:ディーン(ライアン・ゴズリング)に抱く感情が、傍観者たる観客にとってはかなり明確な形で描写され、どんどん気持ちが離れていくとは対照的にちっとも気付かない夫、というの主観で進行する。 この「最後の一日」におけるシンディは、熱湯風呂の縁に四肢をかけて「押すなよ!押すなよ!」と繰り返す上島竜平と同じである。彼女

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  • とんでもねえ、アタシャ神様だよ - スキルズ・トゥ・ペイ・ザ・¥

    3月7日「アレクサンドリア」を観る。 詳しくは暗黒皇帝さんのココでどうぞ。宗教の不寛容さ、信仰を広めようとする信徒達が使うレトリック、それに翻弄される人々を描いた傑作大河ドラマ。今のところ、2011年のベストはこれで良いかな?という気もしてる。 3月11日 地震。 職場が高層階なため、縦揺れの後にグルングルンとフロアが回る様が物凄かった。今ではそれが耐震構造による「揺れ」だったとわかるけど、起きた当時には当然そんなことに気付くわけもなく「ビル折れる、死ぬ」と思った。 3月21日「神々と男たち」を観る。 1996年アルジェリアで起きた武装イスラム集団によるフランス人修道士誘拐・殺害事件を元に、その修道士達の「最後の数日間」を描いた映画当に命の危険を感じるような危機的状況に陥った際の、信徒達の信仰に対する信心を問う映画当に危機的な状況は、かなり終盤に突然訪れる。そこで信心を捨てて生き延

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  • 素晴らしき哉、父さんギツネ「ファンタスティック Mr.Fox」 - スキルズ・トゥ・ペイ・ザ・¥

    ロアルド・ダールの児童文学をウェス・アンダーソンがストップモーションアニメとして映画化。原作未読。 ウェス・アンダーソンの映画って「子供が妙にませていたり冷めたことを言う」「大人が妙に馬鹿げたことを言ったり子供じみた行動に出る」この二つのギャップを楽しめるか否かで、結構好みが分かれるのではないだろうか。個人的には「ロイヤル・テネンバウムス」「ライフ・アクアティック」あたりまでは楽しめたけど、前作「ダージリン急行」では、インドの人たちの描き方があんまりにもアレだったので(その土地の人々に死に際してキンクスかなんかを流して感傷にひたるガキっぽさ)、「もういいかな」と思っていたのだけど、この「ファンタスティック Mr.Fox」に関して言えば、そうしたアンダーソン作品の特有の「幼さ・未成熟さ」的な味付けがプラスに作用していたように思う。 つまりはいつもアンダーソン作品のトーン(音楽もストーンズにビ

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  • 呪いじゃなくて贈り物 「ヒア アフター」 - スキルズ・トゥ・ペイ・ザ・¥

    今回は「ヒア アフター」という映画が、いかに優れた脚構造をしているかを少々(核心には触れないようにしますが、なるべく鑑賞後のご一読が望ましいかと)。 ■主な登場人物(以下、wikipediaあらすじより抜粋) フランスの女性ジャーナリストのマリー(セシル・ドゥ・フランス)。彼女は、津波にのまれた時に臨死体験を経験。その時に見た不思議な光景を忘れることができない。 イギリスの少年マーカスは愛する双子の兄を亡くしてしまった悲しみから立ち直れず、兄と再会することを望んでいる。 アメリカ人ジョージ(マット・デイモン)は、かつて霊能者として知られた人物だが、次第に自らの才能を嫌悪、その才能は用いずに生きている。「いったいどうしてこの自分にだけ死者の声が聞こえるのだ?」 この三人は「霊界とのコネクションを求める者」「霊界とのコネクションを断ちきりたい者」の二種類に分類される。 求める者は言うまでもな

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  • もう一歩前へ!「冷たい熱帯魚」 - スキルズ・トゥ・ペイ・ザ・¥

    マーティン・スコセッシが自伝「スコセッシ・オン・スコセッシ」で、自作「グッドフェローズ」について、こんな風に語っていたことがある(以下うろ覚え)。 「この映画で私が描いたイタリア系のマフィア、彼らに、所謂“モラル”というものが完全に欠如している点に非常に興味を覚えた。彼らはパスタソースを作るのと同じ感覚で人を殺すんだ」 「冷たい熱帯魚」は埼玉愛犬家連続殺人事件に着想を得て、犬を熱帯魚に変換して、フィクショナルなアレンジを加えた作品。映画では、連続殺人に行き掛かり上でたずさわり、そのまま死体解体を手伝う羽目になる熱帯魚店を経営する男:社(吹越満)に主眼を据え、ライズ&フォールならぬフォール&フォール&フォールを描いた物語。 上記の「グッドフェローズ」では、ジョー・ペシ演じるマフィアの男が口にする印象的な台詞があった。彼は、かつて因縁のあったマフィアを殺して仲間と共に始末。そしてその後、つま

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  • 窓に書かれたアルゴリズム「ソーシャル・ネットワーク」 - スキルズ・トゥ・ペイ・ザ・¥

    2人ではじめて1つのピースとなるような、完璧に思えたペアが生み出すプロダクツ。それが「1+1=∞」となり肥大化していく中で、一方の意見で引き入れた外部の人間により決定的な「溝」が生じ、そして決別を余儀なくされる。 ロックバンドの伝記でいえば、ジョンとポールとヨーコの物語がそうであるように、「ソーシャル・ネットワーク」におけるマーク・ザッカーバーグ、エデュアルド・サベリン、ショーン・パーカーの物語も、この定型に見事にはまるように思う。 発端は、ガレージで繰り返されるジャムからではなく、学生寮の窓にマジックで書いたアルゴリズムからだった。書かれるのはコードはコードでもギターのコードではなく、リリースされるのはアルバムではなくSNSで、そしてそれは無料である。 ザッカーバーグ&サベリンに群がるグルーピー的なとりまき、融資を申し出る企業、そして、往年のロックスターのような振る舞いのパーカー。「CD

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