「あのパワー半導体、やっぱり製品に使うから返してくれないか」――。ある大学教授は、付き合いのある企業からの申し出に驚いた。もう使わないからといって譲り受けたパワー半導体だった。二つ返事で同意すると、担当者はすぐさま回収していった。背景にあるのは、深刻なパワー半導体不足だ。 プロセッサーやメモリーなどロジック半導体の不足が叫ばれているが、実はパワー半導体も品不足に陥っている。中でも産業用などBtoB向けのパワー半導体製品が足りないという。その納期は「10カ月から1年」(複数の技術者や研究者)。かつてパワー半導体業界が好景気だったときも、「最長で6カ月ほど」(同)だったことを考えると、この状況がいかに異常か分かる。 あまりにパワー半導体製品が手に入らないために、調達の現場は争奪戦の様相を見せている。あるパワー半導体メーカーの技術者によると、通常ならSi(シリコン)製の安価なパワー半導体製品を購