ブックマーク / flipoutcircuits.blogspot.com (12)

  • かざりだけの言語相対論

    『シノドス』に,「現代思想・政治思想史」研究者の重田園江という人のインタビューが掲載されている. 「「ボキャブラリー」の変化が、人間の思考を変化させている――思想を歴史的に研究する意味とは 現代思想・政治思想史 重田園江氏インタビュー」(2017年3月8日) 記事のタイトルにもあるように,インタビューのなかで,次のような発言がでてくる 人間の思考は言葉でできていますよね。そのため、言葉遣いが変わると思考も変わるわけです。 語彙(ボキャブラリー)が変わると人間の思考が変わるというと,いかにも言語によって思考が変わる/影響されるという言語相対論あるいはサピア=ウォーフ説の一種のように聞こえる.おそらく,重田氏じしんもそのつもりで発言しているのだろう. 少なくともぼくにとって,2017年の時点で,重田氏がこうしてなんら限定もつけずに(そして関連研究をとりたてて考慮することもなく)気楽に言語相対論

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    Baatarism 2017/03/09
  • 「アメリカ式絶望:国際比較で白人中年アメリカ人の死亡率が突出してる」(クルーグマン)

    クルーグマンがブログとコラムで立て続けに,下記の研究を紹介して議論を展開している: Angus Deaton and Anne Case, "Rising morbidity and mortality in midlife among white non-Hispanic Americans in the 21st century," PNAS,2015. ブログで引用しているグラフがわかりやすい: 中年(45~54才)のあらゆる死因を含む 100,000 あたりの死亡数の推移を示している.他のフランス・ドイツ・イギリス・カナダ・オーストラリ・スウェーデンが同じように低下傾向を続けているのに対して,アメリカの白人(ヒスパニックを除く)を示す赤線が上昇を続けている.また,これには労働参加率の低下など,社会的葛藤を示す傾向もともなっているんだそうだ. これにいちばん近い事例は,共産主義崩壊後

    「アメリカ式絶望:国際比較で白人中年アメリカ人の死亡率が突出してる」(クルーグマン)
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    Baatarism 2015/11/09
  • クルーグマン「1932年の金利引き上げ要求論」

    Paul Krugman, "Rate Rage in 1932," The Conscience of a Liberal, September 22, 2015. 大恐慌時代の金融政策の転換について,こんな文献を紹介されたとクルーグマンがブログに記している: Gerald Epstein & Thomas Ferguson, "Monetary Policy, Loan Liquidation, and Industrial Conflict: The Federal Reserve and the Open Market Operations of 1932," Journal of Economic History, vol.XLIV, No.4, 1984. 彼のコメント: They look carefully at the archival evidence, and fin

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    Baatarism 2015/09/24
  • クルーグマン「エーゲ海のワイマール」(2015年2月16日付コラム)

    クルーグマンが『ニューヨーク・タイムズ』のコラムで,ギリシャに過大な債務返済を強制するのは第一次大戦後に敗戦国ドイツに巨額の補償金を払わせようとしたのと同様の愚行だと論じている. Paul Krugman, "Weimar on the Aegean," New York Times, February 16, 2015. 以下,コラムをざっとなぞってみよう.引用部以外は翻訳ではないのでご注意を. 不況のいまは,財政刺激と金融緩和政策を打つべきだと主張すると,きまってワイマール時代のドイツを持ち出して反論する人たちがでてくる.「財政赤字と金融拡大をするとハイパーインフレになるぞ,ワイマールが実物の教訓じゃないか」と彼らは言う.

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    Baatarism 2015/07/08
  • 誤解を誘う記事の作り方を学ぶ:NewSphereさまの事例

    やや長文になったので,最初に要点を: ここで取り上げるのは,経済政策の話じゃなくって,ニュース記事の書き方の話. NewSphere は,クルーグマンのブログ記事を参照したと言いつつ,実際にはそこで論じられていない現日銀の政策批判が論じられているかのように誤解させる記事を書いている. この書き方は単純な英文誤読ではありえない. また,参照記事の明示が不適切だ. もっとフェアで誠実な書き方をしてください. 追記:その後,NewSphere の当該記事は取り下げられた.ぼくは,この対応は立派だと思う. イントロ ツイッターの TL で少し話題になっていたのでのぞいてみたところ,《「海外視点」で日を報道》を謳う NewSphere という媒体が,次のような記事を載せていた: 「クルーグマン教授、日銀のQEにインフレ達成効果ないと断言 米誌などは反論」(NewSphere, 2015年3月18日

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    Baatarism 2015/03/20
    「これはひどい」としか言いようがないなあ。
  • クルーグマン「ウォルマート:見えざる手にあらず」(2015年3月2日コラム)

    3月2日付のコラムで,労働市場の改善に押されて あのウォルマートが小幅ながらも賃上げを公表したのを受けて,中流社会(やその崩壊)は市場の必然じゃなくてぼくらの選択だと論じている: クルーグマンがウェブ版コラムでリンクしてる New York Times の記事はこちら.日語ニュースでは,次のような記事がでている: 「米ウォルマート、最低賃金38%上げ 国内50万人対象」(日経済新聞,2015年2月20日) 米ウォルマート・ストアーズは19日、米国内で働く時給制従業員の最低賃金を時給7.25ドルから38%増の10ドルに引き上げると発表した。賃上げの原資として10億ドル(約1200億円)を投じる。 以下,コラムの論述をざっとなぞってみよう. 最低賃金引き上げについては,とくに保守派からの反対意見が強い. 保守派たちは――残念ながら多くの経済学者たちの支持を受けつつ――きまってこう論じる.「

    クルーグマン「ウォルマート:見えざる手にあらず」(2015年3月2日コラム)
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    Baatarism 2015/03/05
  • クルーグマン「実業 vs 経済学」(2014年11月2日)

    この月曜のコラムは,日銀の新たな緩和に言及して,これを歓迎する一方,この対策が 5対4 の僅差で承認されたことを指摘し,反対した審議員が実業界寄りの人たちであることに注目している. Paul Krugman, "Business vs. Economics," The Conscience of a Liberal, November 2, 2014. ▼ 冒頭2パラグラフを対訳で見てみよう: 東京にて――アメリカの連銀に相当する日銀行が,このところデフレ終焉に向けて大いに対策を進めている.デフレは,20年近くにわたって日経済を苦しめてきた.日銀の対策には,たくさんお金を刷ったり,もっと大事なこととして,2パーセント目標に達するまでずっとお金を刷り続けると投資家たちに確信させる試みがふくまれる.当初,こうした対策はうまく行っているように見えた.ところが,もっと最近になって,日経済は勢

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    Baatarism 2014/11/04
    クルーグマンも経済学者が追加緩和賛成派、民間企業出身者が反対派という状況を、きちんと分かっていたんですね。アメリカでもそういう傾向があるようですね。
  • 岩田日銀副総裁の発言書き起こし(財政金融委員会;10月28日)

    2014年10月28日に行われた財政金融委員会での岩田規久男日銀副総裁の発言を,一部のみ書き起こした.ソースは「参議院インターネット審議中継」の録画. ▼ 就任前の「2パーセント目標ができなければ辞任」発言について(34分47秒あたりから,36分17秒あたりまで.) えー,昨年春の,あのー,副総裁の任命に関わる国会での承認の,所信声明では,2年経って,まあ2年,2パーセントの物価目標安定を,できなかった場合には,なにか自動的に辞めるというような,そのような説明に,理解されるようなことになってしまったことを,深くいま反省しております.で,[ヤジ] で,もうその当時もすでに反省して,それが,当の責任の取り方ではないということで,えー,その,昨年の春の,副総裁就任の記者会見においてはですね,私の責任の取り方の説明を,次のようにいたしました. [読み上げる]仮に――それは,昨年の春の就任のときの

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    Baatarism 2014/10/29
  • IMFの世界経済見通し:「次の消費増税」に言及した箇所

    新たに公表されたIMFの世界経済見通しについて解説したロイターの記事に,次のような箇所がある: 「一方、2015年10月に予定される10%への消費税率引き上げについては、予定通り実施するべきとの見解を示した。」 (「IMF、日の14年経済成長率見通しを0.9%に大幅引き下げ」;ロイター,2014年10月7日) ためしに,実際のレポート (pdf) を見てみよう (pp. 20-21): ▼原文: In Japan, aggressive monetary policy easing - the first arrow of Abenomics - has helped lift inflation and inflation expectations, and actual and expected inflation are progressing toward the 2 perce

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    Baatarism 2014/10/08
    ロイターの記事「10%への消費税率引き上げについては、予定通り実施するべきとの見解を示した」のソースの内容が記事と違うという話です。
  • クルーグマン『そして日本経済が世界の希望になる』(PHP新書,2013年)

    出たので読んだ:クルーグマン『そして日経済が世界の希望になる』(PHP新書,2013年).「アベノミクスの金融政策・財政政策は正しい,いいぞもっとやれ」という話を中心に,日の各種制度についての提言や,今後の世界経済の展望なども語った一冊.日オリジナル版. [1] のなりたち:訳者でもある大野氏によるロングインタビューとメールでの質疑応答をもとに,語りおろしによる全5章の論述に構成されている. [2] 骨子はきわめて明快だ――安倍政権が掲げる経済政策のうち,(1) そもそもクルーグマン自身が推奨していたインフレ目標政策は有効だしできればインフレ率4%くらいが望ましい;(2) 財政政策は「その積極的な拡大を行う必要がある」(p.39);しかし (3) 構造改革は重要でない:「為政者は誰もが構造改革を約束するが,そうした態度自体を私は疑っている」(p.48).(それぞれの論拠と,よくある

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    Baatarism 2013/09/14
  • 今日のクルーグマン:「救われざる世界」(2013年8月29日)

    昨日のクルーグマンのコラムは,「インドネシアとインドの通貨安は次のアジア危機につながるのか」という懸念について,そこはおそらく心配ないけど,金融危機からちっとも学んでないのはいいかげんどうにかせーよ,とのお話: Paul Krugman, "The Unsaved World," New York Times, August 29, 2013 以下,コラムの概要をみておきましょう. まず,90年代のアジア危機についておさらいしてる:当初,通貨安はドル立ての債務が資産に対して膨らみ,経済の深刻な収縮につながったけど,その後,まさにその通貨安が輸出主導の景気回復をもたらした.いちばん打撃を受けたインドネシアも,6年後の2003年には危機以前のピークを越えている. ただ,このアジア危機は金融規制緩和の不安定性について実物教育になってしかるべきだったのに,そうはならなかった.グリーンスパンやらサマ

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    Baatarism 2013/09/02
  • クルーグマンのブログから:日本のおはなし

    クルーグマンがブログで(また)日について取り上げている.やや長文だし,論点のなかには注意深く読む必要がありそうなものがある.(※言わずもがなのコメントを挟んでいますが,なんというか,お察しください.クルーグマンの文章はあくまで「引用」でございます.はい.) Paul Krugman, "Japan Story," The Conscience of a Liberal, February 5, 2013 まず,冒頭部分では話のきっかけに言及している.財政刺激が悪影響をもたらすのではないかという説が紹介される: Dean Baker is annoyed at Robert Samuelson , not for the first time, and with reason. The idea of invoking Japan, of all places, to justify fe

    クルーグマンのブログから:日本のおはなし
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    Baatarism 2013/02/06
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