東日本大震災から11日で5年。あの日、岩手、宮城、福島の3県で、100人を超える新しい命が生まれた。子どもたちの成長は家族の、被災地の、それぞれの未来に向けた歩みでもある。 母の分まで「母親」全うしたい 食べられなかったブロッコリーが、食べられるようになった。一昨年は悔し涙を流した運動会で、去年は1等賞をとった。 岩手県宮古市の下沢悦子さん(37)は、長女のさくらちゃんの成長に日々気づかされる。2011年3月11日。地震の30分前に生まれたさくらちゃんの誕生日を心から祝える気持ちになったのは、最近のことだ。悦子さんにとってこの日は、母たえ子さんの命日でもあるから。 悦子さんは母親を知らずに育った。生まれてすぐに両親が離婚。「悦子」の名をつけてくれた父方の祖母を幼い頃亡くし、父も小学3年の時に病死した。ずっと親類の家で育てられた。 学校の授業参観日。化粧した母親が来てくれる同級生がうらやまし