加齢や抱える病状の進行により、複数の薬の服用を続けている人は少なくない。症状が強かったり、発病直後の急性期であったりすれば、治療効果を優先して多くの薬が処方されるのは、ある意味で当然だろう。しかし、症状が安定した後も、漫然と多種類の薬の服用を続けていると、過剰な投与や重複作用による健康への悪影響も予想される。専門医らはこのような問題を「健康被害を生じさせる多剤服用(ポリファーマシー)」と位置付け、特に複数疾患を抱えることが多く、問題が出やすい高齢者を中心に警鐘を鳴らしている。 「東京大学医学部付属病院の入院患者約2500人を対象にした調査では、6剤以上の服用で薬物による有害事象の発生頻度が大きく増加している。また、東京都内の診療所に通う165人を2年間追跡した調査でも、5剤以上の服用者で転倒事故の発生頻度が大きく増える。特に高齢者ではふらつきや転倒、記憶障害のような深刻な症状から食欲低下や