熊代 実際、読んで良い顔をされない同業者もいらっしゃるかもしれません。しかし、私たち精神科医こそ、自分たちが取り組んでいることが何を社会にもたらしているのか、再確認すべき時が来ているのではないかとも感じているのです。ですから、この本は同業者に一番読んでいただきたいと思いながら書きました。 現在の医療や福祉の支援が目指しているのは、マジョリティと同じように働けるようにするとか、経済的に自立した生活を送れるようにするということであって、結局、この能力主義的な世の中の仕組みにうまく組み入れられる人を送り出すことが目的になってしまっていませんか。そうした流れは年々強まりこそすれ、なかなか省みられてはいません。 御田寺 私が最近知って危機感を持ったのが、適性検査の逆バージョンである「不適性検査」が企業のあいだで好評を博しているということです。普通の適性検査の質問項目に、精神障害や双極性障害の可能性が