最近、自分を追い詰めている人が多い。「もっと頑張らないといけない」「もっと成長しなくては」、と。だが、精神科医で立教大学教授の香山リカさんは、頑張り過ぎずにほどほどに生きる「ほどほど論」を提唱する。(インタビューアー=ノンフィクションライター・神田憲行)* * * ――香山さんが「ほどほど論」を考えるに至った経緯をお聞かせください。香山:精神科医としてビジネスマンの診察をしていて、「もっと頑張らないといけない」「もっと成長しなくては」と成長幻想に取り憑かれて、鬱病を発症させる人がここ10年ぐらいの間に増えてきたと感じたからです。それは行き過ぎた成果主義で会社から「成長」を強制されるパターンもあれば、外部から強制されていないのに「もっと頑張らないと」と、自分で自分を追い詰める人もいます。なんで今の自分を簡単に否定して成長しなくてはいけないのか、とても疑問に感じたんですね。――そうなった社会的